ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

荒野にて

2019-04-08 23:25:25 | か行

 

「さざなみ」(16年)監督の新作。

ものすごくよかった。

 

「荒野にて」81点★★★★

 

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米オレゴン州のポートランド。

15歳のチャーリー(チャーリー・プラマー)は

父(トラヴィス・フィメル)と二人暮らし。

 

母は幼いころに家を出てしまい、

チャーリーは学校へも行かず、孤独で所在ない日々を送っていた。

 

そんなある日、彼は家の近くの競馬場で

厩舎のオーナー、デル(スティーヴ・ブシュミ)と出会う。

 

素直に仕事をこなすチャーリーを気に入ったデルは

彼に競走馬リーン・オン・ピートの世話を託した。

 

だが、ある事件が起き、チャーリーは本当に独りぼっちになってしまう。

さらに、年老いたピートが競走馬としてお役御免になると聞き

チャーリーはある行動を起こすのだが――。

 

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1973年、英国生まれのアンドリュー・ヘイ監督

この人は、なかなかすごいですぞ。

 

お役御免になった競走馬と、孤独な少年の逃避行。

特に動物好きには最初から、悲しい予感しかしないけど、

で、実際悲しいんだけど

込み上げる鑑賞後感が、絶対に観てよかったと言っている。

 

 

父亡き後、独りぼっちになった少年は

疎遠になっている叔母という、あまりにも細い糸を頼り、希望をつないで、

馬と旅に出る。

 

馬にも少年にもめでたし、めでたし、なんて起こらない。

 

ドラマチックをあおらず、

全てが淡々と残酷で、

しかし、だからこそドラマが際立つんですねえ。

 

 

そして彼の、そして物語の、たどり着く先に涙。

 

少年のか細い首を、

何度も何度も、抱きしめてあげたくなる瞬間がありました。

 

ブルーな悲しみと愁いをたたえた色調は「さざなみ」っぽく、

テーマや人物設計には

どこかダルデンヌ兄弟の「少年と自転車」(12年)

も感じる。

 

逃避行のあいだ、

決して馬に乗ることなく、馬と並んで歩き続ける少年チャーリーの

善なる心と、誠実な働きぶりが、

彼の未来がきっと正しきものになる、と感じさせてくれるのがいい。

 

そんな少年をセンシティブに演じ切ったのは

「ゲティ家の身代金」(17年)で人質にされた少年を演じた

チャーリー・プラマー。

次世代のスター誕生に、喝采!です。

 

★4/12(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「荒野にて」公式サイト


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