「さざなみ」(16年)監督の新作。
ものすごくよかった。
「荒野にて」81点★★★★
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米オレゴン州のポートランド。
15歳のチャーリー(チャーリー・プラマー)は
父(トラヴィス・フィメル)と二人暮らし。
母は幼いころに家を出てしまい、
チャーリーは学校へも行かず、孤独で所在ない日々を送っていた。
そんなある日、彼は家の近くの競馬場で
厩舎のオーナー、デル(スティーヴ・ブシュミ)と出会う。
素直に仕事をこなすチャーリーを気に入ったデルは
彼に競走馬リーン・オン・ピートの世話を託した。
だが、ある事件が起き、チャーリーは本当に独りぼっちになってしまう。
さらに、年老いたピートが競走馬としてお役御免になると聞き
チャーリーはある行動を起こすのだが――。
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1973年、英国生まれのアンドリュー・ヘイ監督
この人は、なかなかすごいですぞ。
お役御免になった競走馬と、孤独な少年の逃避行。
特に動物好きには最初から、悲しい予感しかしないけど、
で、実際悲しいんだけど
込み上げる鑑賞後感が、絶対に観てよかったと言っている。
父亡き後、独りぼっちになった少年は
疎遠になっている叔母という、あまりにも細い糸を頼り、希望をつないで、
馬と旅に出る。
馬にも少年にもめでたし、めでたし、なんて起こらない。
ドラマチックをあおらず、
全てが淡々と残酷で、
しかし、だからこそドラマが際立つんですねえ。
そして彼の、そして物語の、たどり着く先に涙。
少年のか細い首を、
何度も何度も、抱きしめてあげたくなる瞬間がありました。
ブルーな悲しみと愁いをたたえた色調は「さざなみ」っぽく、
テーマや人物設計には
どこかダルデンヌ兄弟の「少年と自転車」(12年)
も感じる。
逃避行のあいだ、
決して馬に乗ることなく、馬と並んで歩き続ける少年チャーリーの
善なる心と、誠実な働きぶりが、
彼の未来がきっと正しきものになる、と感じさせてくれるのがいい。
そんな少年をセンシティブに演じ切ったのは
「ゲティ家の身代金」(17年)で人質にされた少年を演じた
チャーリー・プラマー。
次世代のスター誕生に、喝采!です。
★4/12(金)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
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