ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ビューティフル・ボーイ

2019-04-09 23:18:50 | は行

ティモシー・シャラメ×スティーヴ・カレル。

ラストのブコウスキーの詩も、グッと効くなあ。

 

「ビューティフル・ボーイ」72点★★★★

 

********************************

 

著名な音楽ライター、デヴィッド(スティーヴ・カレル)はいま

息子ニック(ティモシー・シャラメ)のことで

深刻な問題を抱えていた。

 

ニックは成績優秀で6つの大学に合格し、スポーツも万能。

デヴィッドと再婚相手との間に生まれた幼い弟たちの良き“兄”でもあった。

そんな“理想の息子”だったニックは

いまやドラッグ依存に陥っていたのだ。

 

ニックが何かをしでかすたび

警察に病院に迎えにいくデヴィッド。

 

そのたびに「もうやらない」と言う息子を信じてきたデヴィッドだったが――?!

 

********************************

 

深刻なドラッグ依存症に苦しみながら

のちにNetflixのあの「13の理由」脚本家となった

ニックの実体験を基にした物語。

 

「君の名前で僕を呼んで」(18年)

ティモシー・シャラメがドラッグに墜ちていく息子を演じ、

ボロボロになりつつも、その根源の“美しさ”を感じさせる様が

大きなポイントになっとります。

彼じゃなきゃこの映画、辛すぎたかもしれない。

 

 

さらに大きな特徴は映画が、息子ニックの状態に苦悩する

父親の視点で描かれていること。

 

というのも実はこの話、

ニックと、父がそれぞれに当時を振り返った回顧録がベースになっているんです。

なるほど!と納得でした。

 

あんなに美しかった息子が、なんでこうなってしまったのか?

――と、息子同様に苦しむ父親の苦悩が、あまりにリアルで

しかも、演じるスティーヴ・カレルがこれまでにないほどよかった!

 

カメレオン役者で、演技派なのは重々承知だけど

どうも「声がでかい」「人物造形法が大きい」印象があったんですが

いや~今回は心震えました。

 

 

それにしても

「もうドラッグはやめる」と言いながら

延々と立ち直れず、何度も同じ過ちを繰り返す若者を見るのは

やはり観客にとっても辛いもの。

 

でも、次第に、問題が「ドラッグ」にあるのではなく

「問題」のほうが先にあるんだ、とわかってくる。

 

ガス・ヴァン・サント監督の新作「ドント・ウォーリー」(5/3公開)では

主人公が抱えるアルコール依存の原因が

ある「問題」にあるのだ、とわかるし、

 

ルーカス・ヘッジズがやはり薬物依存の若者を演じる

「ベン・イズ・バック」(5/24公開)でも、同じ。

 

 

こうした作品が教えるのは

根源にある「問題」と本人が向き合い、周囲はそれをいかに理解し、支えるか、ということ。

 

そのプロセスこそが

重要だ、ということなんだと思います。

 

 

エンドロールに被さる

チャールズ・ブコウスキーの詩の朗読が、また沁みるんですよねえ。

 

結局、解決の術は、当人しかない。

でも「それ」が訪れるときは、必ず来る。

そう信じたくなりました。

 

そして、映画.comさんにもレビュー掲載されております。

ぜひ、映画とあわせてご一読くださいませ~

 

★4/12(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ビューティフル・ボーイ」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 荒野にて | トップ | マローボーン家の掟 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

は行」カテゴリの最新記事