ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

8月の家族たち

2014-04-12 17:32:15 | は行

このチラシをみて、
「これは喜劇なのか?」と、思いません?

でも、すごいことになりました。


「8月の家族たち」74点★★★★


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オクラホマ州の片田舎で、
三人娘を巣立たせた、初老夫婦が暮らしている。

夫ベバリー(サム・シェパード)は
がんの治療中である妻バイオレット(メリル・ストリープ)の面倒を見ていた。

バイオレットは薬のせいか、性格なのか
攻撃的な態度を取るなど、かなり情緒不安定だ。

そんなある日、コロラド州に住む二人の長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)のもとに
「父が行方不明になった」と連絡が入る。

そしてオクラホマの実家に
家族たちが集まってくるのだが――。

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前半までは58点くらいかと思った。
でも、すごいことになった。

いやはや、喜怒哀楽の折り詰めで
ラストは、なんだなんだギリシャ悲劇か?という。


家長がいなくなり、バラバラだった一家が集まる。
個性豊かな姉妹やその夫たちがドタバタを繰り広げるのは
まあ、よくあるシチュエーション。

最初はまさにそんな
セオリーどおりに進むのですが

だんだん
いわゆるホームドラマにしては

家族の闇も、関係のひだも、ケンカも
生易しいものではないことになっていく。

一家の家があるオクラホマの
がらーん・・・とした平原の風景そのままに、
家族の間に吹く、埃っぽくくすんだ空っ風のような、
荒んだ空気がハンパないんですわ。

口さがない母親に加え、 娘たちも決して優良ではない。

クリス・クーパーが
「ここの女たちの口の汚さは理解し難い!」と
ブチ切れるのも、よーくわかるわあ。

それに役者もよく揃っている。

ジュリア・ロバーツの夫にユアン・マクレガー、
その娘役にアビゲイル・ブレスリン、

クリス・クーパーの息子に
ベネディクト・カンバーバッチ。

次女役のジュリアン・ニコルソンもいい。

そして、真打ちメリル・ストリープの
まさしく「ヘビのひと睨み」な凄みに
ゾクッと身をすくめるのも悪くない体験です(笑)

死ぬまでに、こういう上質な家族ドラマに、
あといくつ出会えるかなとか、ふと思うような。

ただラストは
2カット前で終わってよかったな。

さあ、どっちへ――?でね。


★4/18(金)からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「8月の家族たち」公式サイト

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