ケイト・ウィンスレットが圧巻です。
「アンモナイトの目覚め」73点★★★★
******************************
1840年代、イギリス南西部の海辺の町。
メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は
古生物学者として、海岸で化石を発掘していた。
しかし、大英博物館に収められるような化石を発掘しても
手柄は男性に奪われてしまい
いまは観光客用の土産用のアンモナイトを探して売りながら、
年老いた母の面倒を見る日々。
そんな彼女の店に
化石収集家の男(ジェームズ・マッカードル)が
妻のシャーロット(シアーシャ・ローナン)を伴って訪れる。
男はメアリーに
「うつ気味の妻の面倒をみてくれないか」と頼む。
はあ?なんですかそれ?困りますけど?なメアリーだったが
しぶしぶシャーロットを看病したことで
次第に、絆が生まれていく――。
******************************
19世紀イギリスに実在した
古生物学者メアリー・アニング。
その人となりを手紙などから検証し、
女性がいま以上に生きにくかった時代に、
それでも、しかと立たんとした女性の叫びとして
昇華した作品です。
「燃ゆる女の肖像」(20年)と共通する点があって、
そこもおもしろいのですが
ワシ的にはこちらのほうが、よりエモーショナルでした。
何故ならばケイト・ウィンスレット演じる女性メアリーが
同性への欲求をしっかりと持った「性」として描かれてるから。
メアリーの行動が腑に落ちるし、説得力があったんですよね。
世紀の発見をしても、手柄を男性にとられてしまい
名を残せなかった
古生物学者の悲しみ。
夫の所有物となり、子をなす務めに応じられないことで
存在を無いもの同然にされてしまう
女性の悲しみ。
そんな女性二人が、共鳴しあい、愛し合うことになるわけですが
そこで唐突に恋愛感情が生まれるのではなく
メアリーに同性愛の自認があったというところが
さりげなく描写されていて
そこが、細やかにしてフェアだなあと感じたのです。
それに序盤で
夫に置いて行かれたシャーロットが
メアリーの前でいきなり倒れて
メアリーが医者を呼ぶ、というくだりがあるんですが
往診に来た男性医師がメアリーに
「女性同士なんだから、助け合わないと
(=だからあなた、彼女の面倒みてねよろぺこ、的な)」と言うんですよ。
そこでメアリーが
「はあ??」という顔をする。
おもくそ、シスターフッドを強要されての、この返しに
思わず笑ってしまった(苦笑)
そういうことじゃないんですよ、って
作り手も、演じる彼女たちも共有している感じがいい。
もちろん、ここには
女性が虐げられてきた時代と歴史への視線がある。
でも
メアリーの母親のような「毒親」っぷりもちゃんと描かれ
女同士だからって、なんでもうまく行くわきゃないんだよ、って
視線がよりフラットなのがいい。
このラストも、そうしたズレの結果なんだなと思うんです。
そんなメアリーの思いを体現するケイト・ウィンスレットの
労苦刻まれた顔や、むっちりした広い背中をさらすことでの
説得力も素晴らしい。
ただ、
ラスト後の余韻は「燃ゆる~」に軍配かも。
――って、いやいや、そう比較する云われもないんですが、
つい・・・。すんません(苦笑)。
★4/9(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます