ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アンモナイトの目覚め

2021-04-08 21:20:55 | あ行

ケイト・ウィンスレットが圧巻です。

 

「アンモナイトの目覚め」73点★★★★

 

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1840年代、イギリス南西部の海辺の町。

メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)は

古生物学者として、海岸で化石を発掘していた。

 

しかし、大英博物館に収められるような化石を発掘しても

手柄は男性に奪われてしまい

いまは観光客用の土産用のアンモナイトを探して売りながら、

年老いた母の面倒を見る日々。

 

そんな彼女の店に

化石収集家の男(ジェームズ・マッカードル)が

妻のシャーロット(シアーシャ・ローナン)を伴って訪れる。

 

男はメアリーに

「うつ気味の妻の面倒をみてくれないか」と頼む。

 

はあ?なんですかそれ?困りますけど?なメアリーだったが

しぶしぶシャーロットを看病したことで

次第に、絆が生まれていく――。

 

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19世紀イギリスに実在した

古生物学者メアリー・アニング。

 

その人となりを手紙などから検証し、

女性がいま以上に生きにくかった時代に、

それでも、しかと立たんとした女性の叫びとして

昇華した作品です。

 

 

「燃ゆる女の肖像」(20年)と共通する点があって、

そこもおもしろいのですが

ワシ的にはこちらのほうが、よりエモーショナルでした。

 

何故ならばケイト・ウィンスレット演じる女性メアリーが

同性への欲求をしっかりと持った「性」として描かれてるから。

メアリーの行動が腑に落ちるし、説得力があったんですよね。

 

世紀の発見をしても、手柄を男性にとられてしまい

名を残せなかった

古生物学者の悲しみ。

 

夫の所有物となり、子をなす務めに応じられないことで

存在を無いもの同然にされてしまう

女性の悲しみ。

 

そんな女性二人が、共鳴しあい、愛し合うことになるわけですが

そこで唐突に恋愛感情が生まれるのではなく

メアリーに同性愛の自認があったというところが

さりげなく描写されていて

そこが、細やかにしてフェアだなあと感じたのです。

 

それに序盤で

夫に置いて行かれたシャーロットが

メアリーの前でいきなり倒れて

メアリーが医者を呼ぶ、というくだりがあるんですが

 

往診に来た男性医師がメアリーに

「女性同士なんだから、助け合わないと

(=だからあなた、彼女の面倒みてねよろぺこ、的な)」と言うんですよ。

そこでメアリーが

「はあ??」という顔をする。

おもくそ、シスターフッドを強要されての、この返しに

思わず笑ってしまった(苦笑)

 

そういうことじゃないんですよ、って

作り手も、演じる彼女たちも共有している感じがいい。

 

もちろん、ここには

女性が虐げられてきた時代と歴史への視線がある。

でも

メアリーの母親のような「毒親」っぷりもちゃんと描かれ

女同士だからって、なんでもうまく行くわきゃないんだよ、って

視線がよりフラットなのがいい。

 

このラストも、そうしたズレの結果なんだなと思うんです。

 

そんなメアリーの思いを体現するケイト・ウィンスレットの

労苦刻まれた顔や、むっちりした広い背中をさらすことでの

説得力も素晴らしい。

 

ただ、

ラスト後の余韻は「燃ゆる~」に軍配かも。

――って、いやいや、そう比較する云われもないんですが、

つい・・・。すんません(苦笑)。

 

★4/9(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。

「アンモナイトの目覚め」公式サイト


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