ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ガリーボーイ

2019-10-19 15:49:11 | か行

いや〜インド映画はマジで

次ステージへとスパークしてます!

 

「ガリーボーイ」75点★★★★

 

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インド、ムンバイのスラム地区に暮らす

青年ムラド(ランヴィール・シン)。

 

父と母は貧しい暮らしから彼を大学に通わせてくれているが

生まれで人を判断するインド社会での未来は見えず

ムラドは閉塞を感じていた。

 

そんなある日、ムラドは大学で観た

MCシェール(シッダーント・チャトゥルヴェーディー)のラップに魅了され、

日々感じている社会の格差や怒り、鬱屈した気持ちを詞に書き始める。

 

そして、シェールに後押しされて

初めてラップを歌うことに。

「ガリーボーイ(路地裏の少年)」と名乗ったムラドは

YouTubeで人気になっていくが――?!

 

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スラムから這い上がった実在ラッパーの物語。

154分とやや長尺ではありますが

歌い出す、踊り出す、といったボリウッド系ではなく

がっつりのドラマ。

 

笑いと友情、主人公の成長、挫折、悲劇・・・・・・

物語をエンタメに仕立てる完璧なセオリーに、

生き生きとしたキャラクター。

音楽の力と、高揚。

 

とにかくうまくできてます!

 

インド映画は実にハリウッドを研究し、学習し、

超えてきているなあ・・・・・・と感嘆しました。

 

彼らの強みは

欧米では現実味がなくなってきている

古典的な(いってみればベタな)「悲劇」の要素を

リアルにドラマとして盛り込めるところでしょうね。

 

やはりインドの良作

「あなたの名前を呼べたなら」(19年)もそうでしたが

(どちらも女性監督、というのは偶然ではないだろうな)

 

近代化とのはざまで

まだまだ残るドメスティックな因習や慣習、

 

例えば

親の決めた相手と結婚しなければならないとか

夢を見ようにも見られない圧倒的な貧富の差とか

 

そうした負の要素に真実味があり

かつ、それをドラマに盛り込んでくるから

やられた!となるわけです。

 

しかも題材が「ラップ」ですから!しかも実話ですから!

うまいなあ。

 

ムラド役のランヴィール・シン氏もいいんですが

恋人サフィナ(アーリア・バット)がまた最高なんです。

キュートなんだけど、いつもどこか「上から」で

カッとなると手が着けられない。

まさに「猟奇的な彼女」(笑)。

 

身分格差などいろいろあって、

彼女はムラドの友人とお見合いすることになるんだけど

その友人がムラドに

「あいつと結婚するのはイヤだ!

頼むからお前、なんとか結婚してくれ!」と泣きつくほどで(笑)

 

 

スラムに暮らす階層も大学に行く時代なんだなあとか

インドのいまを知りながら

うねるような変化に直面している国のオーラを体感いたしました。

 

★10/18(金)から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「ガリーボーイ」公式サイト


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