ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

コリーニ事件

2020-06-09 23:14:20 | か行

原作が指摘した法律の落とし穴に

ドイツ政府も動いた!らしい。

えらいこっちゃ。

 

「コリーニ事件」72点★★★★

 

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ドイツ、ベルリンの高級ホテル。

そのスイートルームに入ってきた男が、

部屋に滞在していた初老の富豪ハンス(マンフレート・ザパトカ)を

いきなり殺害する。

 

が、男は逃げも隠れもせず

血まみれのまま、ロビーの椅子に座り

その後、おとなしく、警察に捕まった――――。

 

男の名はコリーニ(フランコ・ネロ)、67歳。

ドイツで暮らす模範市民だった彼が、なぜ富豪を殺害したのか?

コリーニは何も語らず、静かに収容されていた。

 

そんなコリーニの弁護人となったのは

若き新米弁護士カスパー(エリアス・ムバレク)。

 

だが、実は殺された富豪ハンスは

カスパーの恩人だったのだ。

 

悩みながらもコリーニの弁護を引き受けたカスパーは

次第に、事件の裏に潜む、恐ろしい真実に迫っていく――――。

 

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「このミステリーがすごい!」でも上位に食い込む

ドイツの刑事事件弁護士にして、世界的ベストセラー作家

フェルディナント・フォン・シーラッハ原作の映画化です。

 

原作小説で指摘された

ドイツのある法律の落とし穴がきっかけとなり

政府が正式に「調査委員会」を立ち上げた、という

強力パワーのリーガル・サスペンス。

まあ、動くドイツ政府もすごいよな、というのが

やっぱりちょっと羨望なのですが(笑)

 

 

ミステリーでネタバレはつまらないので、さらっといきますが

この事件は

たぶん、みなさまのご想像どおり

ナチスドイツ時代に端を発している。

 

で、ドイツには当時の「罪」をうまく回避すべく

ずるこい人々が作った「法律」がある。

 

それに気づいた若き弁護士と

「いやいや、そこは含み置けよ、そしたらキミの将来は安泰だぞ」的な

前の世代の人々とのバトル、ともいえる話なんですね。

 

保身や利己心に従うか、

いや、自らの高潔な良心に従うか。

なんだか、あ~いろんな意味で

いまっぽい!(苦笑)

 

コリーニ演じるフランコ・ネロの

寡黙にしてすごい存在感もいいし、

その彼の背景にある、信じられない「過去」といい

 

トルコ系の血を持つ主人公の弁護士カスパーの

ドイツ社会での地位、差別にさらされてきた現状――なども盛り込まれ

 

全体に魅せるミステリーなことは間違いないです。

 

 

ただ、それゆえに、気になった点もあった。

 

まずコリーニの弁護士カスパーの、

被害者との個人的な関わりゆえの、葛藤やら回想が過剰すぎる。

 

戦時下での行いと、その後の「その人」は違う――――という

複雑さの現れなのかもしれないけど

少々、エクスキューズ(弁明)に見えなくもない。

 

それにね。

弁護には詳しくないけど、依頼人が黙秘してるなら、

まずその人の過去を探るのって、イロハのイ、じゃないの?

てか、絶対に知りたくなるよね?とか、思ってしまうんですが

主人公がなかなかそれに着手せず

中盤に物語がようやく動き出すんですよね。

 

もうちょっと、はよ、やって?と(笑)

 

でも、おもしろかったですよ。

 

ちなみに。

原作者のシーラッハ氏は1964年生まれで、自身もナチ党の実力者を祖父に持つそう。

弁護士になり、過去に正面から「小説」というかたちで向き合う

その姿勢、やっぱ尊敬してしまいます。

 

 

★6/12(金)から公開。

「コリーニ事件」公式サイト


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