ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

キューティー&ボクサー

2013-12-18 23:33:42 | か行

上がいまの宣伝ビジュアル。

下が、最初の宣伝ビジュアル。


下の、ちょっと取っつきにくい印象ないですか?

中身はおもしろいんで
宣伝で、中身の印象が
かなり変わるという、わかりやすい例かもね。



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「キューティー&ボクサー」73点★★★★


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ニューヨーク在住、現在81歳のアーティスト
「ギュウチャン」こと篠原有司男氏と
21歳年下の妻・乃り子氏を

84年生まれの若いアメリカ人監督が追ったドキュメンタリー。


篠原氏は1960年代の日本で現代美術家としてメジャーになり、
けっこう日本では知られた存在だそう。
すみません、ワシまたしても不肖でよく存知あげませんでしたが

篠原氏は69年に渡米し、
しかし向こうではもうひとつメジャーにはなってない。

ダウンタウンの古いアパートで、
家賃の心配をしながら暮らし
でも、いまでもガッツ満点で創作活動を続けている。


そんながんばるアーティストのドキュメンタリーかと思いきや、

この映画のおもしろいのは
メインが妻、というところ。


もともとアーティストだった乃り子さんは
しかしギュウチャンと出会い、子を育て、
自分の創作は休止せざるを得なかった。


映画には
「凡人が天才を支えなきゃね」と
昔からやりたい放題やってきた“芸術家”の夫に長年耐えてきた妻が、
その内部にムクムクと不満を膨らませ
それを作品に昇華する過程が描かれるんですね。


監督も最初は、主にギュウチャンを狙って
撮影を始めたと思うんですが

どんどん二人の関係と、
なにより乃り子さんがおもしろくなり
成り行きでこうなっていった感じがあって、それが大成功。

奥さんが日々の暮らしのなかで
チクチクと夫に辛辣な言葉を投げ
それを黙って受けている夫=ギュウチャンの顔といったら(笑)

どこの夫婦でも、おんなじよーなものだ、と
そのおかしみと共感に、
クスクス笑うのが楽しいったらありません。

そしてなんのかんのいっても
結局はパートナーのありがたみってあるよなあ、とか

その関係と歴史が
彼らの創作の源、いや糧になってるのか、と
思わせるところが、なんかハッピーでいい。

あ、12/13(金)から
パルコミュージアムで二人の個展が開催されてるので
必見すね。ワシも行こう。

あと、思うに

最近、孫世代の若い監督が
祖父&祖母世代の暮らしや生き方に親和性を持ち、それを作品にするケースが多いなあと。
時代の輪廻なのかなあと、興味深いですねえ。

★12/21(土)からシネマライズほか全国で公開。

「キューティー&ボクサー」公式サイト


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