ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

約束の宇宙(そら)

2021-04-15 23:58:34 | や行

ワーママの想いはいずこも同じ・・・・・・かな。

 

「約束の宇宙(そら)」73点★★★★

 

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宇宙飛行士予備軍である

フランス人のサラ(エヴァ・グリーン)は

長年の夢だった宇宙行きを目指すシングルマザー。

 

物理学者の夫(ラース・アイディンガー)と別れたあと

7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)を育てながら

娘と二人三脚で、人生を歩んできた。

 

そんななか、サラはついに

宇宙行きのミッションのクルーに選ばれる。

 

喜ぶサラだが、宇宙に行けば

1年間は、娘と離れ離れになってしまう。

 

過酷な訓練に耐えながらも

サラの心には葛藤が生まれていく。

「仕事をとるか、家族をとるか。自分の夢を追うか、娘との暮らしを選ぶか」

――どんな母の心にもあるであろう葛藤がサラを引き裂く。

 

そして、サラの決意は――?

母娘の行く末は果たして――?!

 

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トルコの少女たちの現実を描いた

秀作「裸足の季節」(16年)の脚本家である

アリス・ウィンクールが監督した作品です。

 

娘を育てながら宇宙を目指す

ママ宇宙飛行士を描いていて、

何も知らずとも「リアルに基づいているのだろうな」との感ありあり。

 

で、実際、エンドロールを見ながら

「こんなにママ飛行士って多いんだ!」と知って驚きました。

あの山崎直子さんも母親だったんだ!と。

 

 

これまでも

宇宙空間で起こるスリルだけでなく

そこへ行くまでのドキドキやハラハラを描いた映画を

多く観てきたけれど

女性宇宙飛行士をこういう視点で描いた映画はなかったのでは?と思う。

 

描かれているのは、つまり

女性が、母親が仕事をするということは?――なんですよね。

その仕事が宇宙飛行士だった、というだけ。

 

たしかに特殊な職業ではあるけれど

男社会のなかでがんばる女性や

子への罪悪感や不安を背負いながら働く母親たちの想いは

どこでも一緒なのだ――と感じとりました。

 

 

ヒロインである優秀な宇宙飛行士を

しなやかな身体で、跳躍感たっぷりに演じる

エヴァ・グリーンがとてもよいのですが

 

宇宙行きのクルーに選ばれた彼女に対し

暗に威圧的な「男っぷり」を示して

じわじわとマウンティングしてくる

同僚役のマット・ディロンが失笑するほどリアルで(苦笑)

めちゃくちゃ印象に残る。

 

そのマチズモゆえに後半の展開が際立つんです。

いいとこ持ってくなあ、マット・ディロン!(笑)

 

そのほか、訓練施設でも

彼女ではなく、補欠の自国ロシア飛行士を行かせたいのであろう

訓練教官の陰なるプレッシャーの描写や

 

毎日15キロのランニング、

テレビを逆さに見る訓練など

厳しいトレーニングの様子も興味深かった。

 

すごくよい映画であることはたしかで

映画の意図も意味も、よくよく理解できて

満足!ではあるのですが

 

ただね

エンドロールでは“ママ”括りでなく

あらゆる壁を少しずつ削り、砕いてきた

女性宇宙飛行士全員を紹介してほしかったな――とも

ちょっと思いました。

 

★4/16(金)からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「約束の宇宙(そら)」公式サイト


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