ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる

2019-03-22 23:13:31 | や行

手塚治虫、宮崎駿、高畑勲氏ら

日本の大巨匠たちにもリスペクトされるアニメーション作家の、いま。

 

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「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」71点★★★★

 

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「霧の中のハリネズミ」(75年)などで知られる

ロシアを代表するアニメーションの巨匠

ユーリー・ノルシュテイン氏。

 

彼が30年以上作り続けている

ロシアの文豪ゴーゴリの名作「外套」のアニメーションは

いまだ完成していない。

 

本作は

「ラピュタ阿佐ヶ谷」の主宰で

ノルシュテイン氏とも懇意である才谷遼氏が

自らカメラを携え、「なぜ、外套は完成しないのか?」

ロシアに飛んで直撃取材したドキュメンタリーです。

 

完成途中の《外套》の映像をはさみながら(これが、またすごい!)

77歳のノルシュテインの頭の中をのぞく

貴重な記録です。

 

なぜ、完成しないのか?の理由は

長年信頼していた撮影監督の死、自身の病気、

製作パートナーである妻の病気、資金の問題――そしてなにより、自身の気力の問題だ、と話す

ノルシュテイン氏。

 

しかし、ドキュメンタリーが捉える本人は

いかにもロシア叔父さん、的にお酒を飲みながら、意外に饒舌で、朗らか。

文豪たちの著作をひもとき、語られるその言葉は

哲学者との会話のように深淵。

 

「世の中は悪意に満ちており、おとなしい聖人にはいじわるなのだ」――

まさに「幸福なラザロ」(4/19公開)に通じるような、

巨匠の言葉に感じ入ります。

 

そして、なんとそのアニメーション制作の秘密も

公開してくれるんです!

 

まるで着せ替え人形のような、

細かいパーツを組み合わせる技にびっくり!

 

 

「みんなが、あなたを待っているんだ!」――酔っ払った才谷監督の切なる言葉に、

この探訪が、何かのきっかけになれば、という願いをヒシヒシと感じました。

 

★3/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくる」公式サイト


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