ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

告白小説、その結末

2018-06-19 23:56:47 | か行

 

ロマン・ポランスキー監督。その技、冴えまくり!

 

「告白小説、その結末」75点★★★★

 

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自ら命を絶った母親との生活を綴った私小説で

人気作家となったデルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)。

しかし、周囲の期待とうらはらに新作の構想は進まず、

憂鬱な日々を送っていた。

 

ある日、デルフィーヌはパーティー会場で

自分のファンだという美しい女性エル(エヴァ・グリーン)と出会う。

 

自然な口調で話しかけてくるエルに

思わず心を開き、楽しい会話を交わすデルフィーヌ。

 

さらに数日後、偶然なのか、エルが向いのアパートに引っ越してくる。

 

実はエルは、セレブの伝記を代筆するゴーストライターだった。

 

自分を気遣い、励ましてくれる

エルの優しさに

次第に心を開いていくデルフィーヌだったが――?!

 

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売れっ子女性作家に近づく美人ゴーストライター。彼女の目的は――⁈というストーリー。

ずばり「ゴーストライター」(10年)という

傑作を持つポランスキー監督。

 

このテーマにかなり思い入れがあるようです。

 

 

そして、鑑賞後感はというと

ああ、怖い怖い。

結局のところ、謎が残りまくりなのが、

この女VS女の構造では、逆に効果を発揮してます。

 

 

ゴーストライターであるエルは、なぜ売れっ子作家の前に現れたのか。

1)作家に成り変わりたかったのか?

2)自分の力量では書くことができない、自分自身の私小説を

彼女に書いて欲しかったのか?

 

3)いや、本気で、デルフィーヌの才能に惹かれ、

その能力をもっと引き出したかったのか?

 

4)ファンが高じた単なるストーカー?!

 

凡人は1)を思ってしまうんですが、いやいやそーんな単純なものではもちろんなく

結局、エルの目的は何だったのか、はっきりと描かれないんです。

 

エルはまさにゴーストの如く、

スランプに陥った作家の人生に現れ、消えていく。

ラスト、しっかり「仕事」も果たして、ね(笑)

 

全編がずっと不穏で不快なサスペンスだっただけに、

ラストのこの収まりの悪い、奇妙な愉快さが

たまらなく可笑しいのですよ。

 

 

ライターと作家の間には、近そうにみえて

マリアナ海溝のような深~い深~い谷がある。

それは自立か依存か、仕事か恋愛か、自己実現第一か、私生活重視かetc…

「種族の違う」女と女のあいだにも、然りなんだけど

 

まあ、この二人はそういう意味で

かなり近似値にいるからこそ

その緊張の構造が強まるんですよね。

 

主演のエマニュエル・セニエは言わずと知れたポランスキー夫人ですしねえ。

常にいろいろ問題になってるポランスキー監督ですが

ホント、わかってるよなアと思わずにいられないです、ハイ。

 

★6/23(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「告白小説、その結末」公式サイト


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