ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

はちどり

2020-04-22 23:40:40 | は行

韓国の、新しい風。

 

「はちどり」72点★★★★

 

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1994年、韓国ソウル。

中2のウニ(パク・ジフ)は巨大な集合団地に

父と母、高校生の姉と中3の兄と暮らしている。

 

中学にいまいちなじめないウニは

家庭でもどこか居場所がない。

 

他校に通う彼氏と下校デートしたり、

塾の親友とカラオケに行ったりしながら

無気力な日々を送っていた。

 

そんなある日。

ウニは塾に新しくやってきた女性教師(キム・セビョク)に

興味を抱く――。

 

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1981年、韓国に生まれ

米・コロンビア大で映画を学んだというキム・ボラ監督(38)の

長編デビュー作。

 

自身の少女時代の体験を基にしたそうで

世界各国の映画祭で45冠以上の受賞!という注目作です。

 

 

1994年、団地に暮らす14歳のウニ。

なんとなくすべてが物足りず、静かに反抗を繰り返す

そんな少女のもがきや、孤独を描いている。

 

思ったより話は普通、というか普遍ではあるのですが

 

なんでもない少女の心を

やさしくやわらかに、敏感に映し出し

たしかにハッ!とさせるほど

瑞々しく澄んでいる。

 

舞台となる団地の風景も、その根底にある社会の差も

日本にも、アメリカにも、フランスにも重ね合わせられるし

世界各国にもわかりやすいんだろうなあと思いました。

 

それに

ヒロインの名前がウニ、というのもあるかもしれないけど

やっぱり、最初に思い浮かべたのは

「冬の小鳥」(10年。名作!)、「めぐりあう日」(16年)の

ウニ・ルコント監督。

 

ウニ監督はその生い立ちからして、もう完全にフランス人だけど

どこか共通するのは

韓国から世界に「ぴょん」と飛び出し

母国色を内在しつつ

世界共通の言語感覚で物語を奏でているところ。

 

もちろん日本発の監督だって、たくさん海外で活躍してるんですが

絶対数として韓国はじめ、諸外国の監督には

がぜん素早い世界への「適応能力」を感じてしまう。

 

単純に言うと、それはやっぱり

英語(外国語)=言語の取得力なのか

 

さらにいえば

自分の属している国をきちんと見据えられる

社会全体の精神の成熟度のようなものかもしれない。

 

なーんてエラソーなこと言いつつ、

やっぱり言語能力が追いつかず

バリバリにドメスティックなワシとしては

 

中2のヒロイン・ウニの

まっすぐで寂しげで孤高な瞳に、

紡木たくのマンガ『ホットロード』で描かれる

細い線の和希を重ねてしまうのでしたw

 

って、これもやはり監督の感性が

グローバルゆえ、だからなのか?

 

 

★初夏公開。

「はちどり」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。


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