ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

わたしは金正男を殺してない

2020-10-11 17:03:03 | わ行

このお二人、憶えてますよね?

 

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「わたしは金正男を殺してない」71点★★★★

 

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2017年2月13日、マレーシア・クアラルンプール空港で

白昼堂々、顔に猛毒のVXを塗られて殺された

北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄である

金正男(キム・ジョンナム)。

 

ロビーに入ってきた彼が、医務室に行くまでの一部始終が

監視カメラに写っていたこと、

さらに実行犯として逮捕されたのが二人の女性だったことなどで

あまりの堂々たる暗殺っぷりに、衝撃が走ったものです。

 

あれから3年。

あの事件は、逮捕されたあの二人はどうなった?のその後を追う

ドキュメンタリーです。

 

あの事件は日本でも大きく報道されたし

実行させた北朝鮮の男たちがすぐに出国し、とんずらしたことも知ってた。

彼女たちだけの犯罪でないだろうとは、みんな思っていたと思う。

しかし彼女たちが何も知らなかったとは、当時は信じがたく

逮捕後、彼女たちが

「日本のやらせ(ドッキリ)番組だと聞かされていた」と供述し、

「んなバカな!」「すげえ言い訳」と、正直、思ってました。

日本の名前が出たことに、拒否反応もあったのかもと思う。

 

で、その後、どうなったかはまったく知らなかった。

本作を観る前も、「殺してない?」と、やや懐疑的でした。

 

さて、真実は?――をぜひ観ていただきたいのですが

ここでは、結論を言ってしまってもよいかなと思う。

 

事件で逮捕されたのは

インドネシア人のシティ・アイシャと

ベトナム人のドアン・ティ・フォン。

 

映画では二人の弁護団やジャーナリストたちが

監視カメラや、二人がSNSに残してきた足跡、

あらゆる証拠を集め、

さらに田舎から都会に働きにきていた彼女たちの苦境や

これまでの人生をもつまびらかにしていく。

 

さらに、金正恩(キム・ジョンウン)と金正男(キム・ジョンナム)の間になにがあったのか、

どういう関係だったのか――なども、専門家が教えてくれる。

 

そして、

彼女たちが「何も知らずにやらされていた」ことを明らかにしていくんです。

 

しかし、そのことが自明となっても

マレーシアという国と北朝鮮の関係や利権、政治的判断などが絡み

裁判所でも

「彼女たちを死刑にしてしまった方が、都合がいい」という空気が満々なんですよ。

 

弱い立場の女性2人が、利用され、スケープゴートになり、

本当に死刑になるかもしれない――

実に恐ろしい話です。

 

しかし考えてみれば

あれだけの事件も、すっかり忘れ、

この二人のこともすっかり忘れていた

ワシも、その片棒を担いでいたんじゃないか?

 

どんなに衝撃的なニュースも、あっという間に消費し、

関心を失ってしまう。

そんな我々こそが、刃を手にしているのではないか?

そのことが真に恐ろしく、

反省をするのであります。

 

そんななかで、真実を追い続ける

心ある弁護士やジャーナリスト、ドキュメンタリストには

リスペクトしかありません。

 

彼女たちがどうなったかを、ぜひ直視していただきたいと思います。

 

★10/10(土)シアターイメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

「わたしは金正男を殺してない」公式サイト


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