ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

セラフィーヌの庭

2010-06-27 15:21:34 | さ行
いまのところ
これが今夏のベスト1映画!

「セラフィーヌの庭」88点★★★★


実在の画家セラフィーヌ・ルイ(1864-1942)の生涯を描いた
真に力強く、美しい作品です。


1912年、フランス・パリ郊外で
家政婦として働く
中年女性セラフィーヌ(ヨランド・モロー)。

寡黙で孤独な彼女が
たったひとつ熱中していること。
それは絵を描くことだった。


ある日、セラフィーヌの働く屋敷に
ドイツ人の画商ウーデ(ウルリッヒ・トゥクール)が
引っ越してくる。

かのアンリ・ルソーを見出した目利きのウーデは
偶然、屋敷でセラフィーヌの絵を見て
衝撃を受けるのだが――。



不肖・美大出ながら
セラフィーヌという人については
まったく知りませんでした。

しかしその人生もすごければ
絵も素晴らしいんですよ
こんなにスゴイ人がいたんですねえ。


一見、愚鈍なセラフィーヌが
いったい何者なのか

川底をさらったり、教会で油を失敬したり、
木の実や草花を集めて
何をしているのか

そして彼女の絵を見せるまでの
前半部分の高まりが
ほんとに見事!


さらに
画商ウーデとの運命的な出会いで
ようやく日の目を見るかと思いきや

戦争という出来事に
彼女の人生は翻弄されていくのです。

そこからまだまだ
二転三転。


それでも
雑草のようにしぶとく生きるセラフィーヌ。
その
ずんぐりした彼女の内なる輝きを
ハッとさせる演出で魅せてくれるんです。


身軽にスルスルと木に登ったり
無愛想さのなかに
ときどき見えるチャーミングさとか。

とてもうまい。



ほら、どこみてんだか(笑)。


さらにウーデのある“事情”で
セラフィーヌの想いがすれ違ってしまう
切ない描写もたまりません。キューン!


先日、セラフィーヌの絵を1点所蔵する
世田谷美術館の学芸員・村上由美さんに
この映画についてインタビューをし

その際にうなずき合ったのが

「画家を“エキセントリック”なふうに
描いてないところがいい」
ということ。


本当にそうなんです。

画家や音楽家を描くときって
よく髪をかきむしってみたり
狂気とのはざまにあるような描写が多いけど


でもこの映画のセラフィーヌは
彼女の描く絵のとおり

大地からエネルギーを得ているような
原始的(プリミティブ)な生命力に満ちあふれていて
ほんとうに魅力的です。

演じるヨランド・モローがすごいって
話でもあるのですが。


なお
村上さんのお話は
「週刊朝日」(7月末週発売)の
おなじみ「ツウの一見」に登場しますので
お楽しみに。

そして
映画を見たあと
ぜひ実際の絵を見てください。

9/5まで世田谷美術館2階
「建畠覚造展」内でコーナー展示されています。
詳しくは
世田谷美術館ホームページで。


★8/7から岩波ホールで公開。

「セラフィーヌの庭」公式サイト

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2 コメント

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ふう~ん (三本毛)
2010-06-27 23:32:53
地味(失礼!)ながら、なんとなく
興味をそそられる映画だね。
フツーのおばさんで
家政婦ってとこがいいね。
返信する
そう (ぽつお番長)
2010-06-28 00:23:52

猫村さんみたいです、ハイ。

能あるネコは
爪を隠す・・・

あれ、違った?
返信する

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