ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

楽園

2019-10-20 17:39:41 | ら行

いまだに、この映画の

佐藤浩市氏の姿が頭から離れないんですよ・・・

 

「楽園」71点★★★★

 

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田んぼが広がる、のどかな地方都市。

 

その集落に続くY字路で、少女が行方不明になった。

村人たちの必死の捜索もむなしく、少女は発見されない。

 

12年後。

事件のとき、少女と直前まで一緒だった紡(杉咲花)は

罪悪感を抱えながら成長していた。

 

そんなとき再び、

少女がY字路で行方不明になる事件が起きる。

 

人々の疑いは、集落で孤立する青年(綾野剛)に向かっていく――。

 

そんな青年の姿を、最近村にやってきた男(佐藤浩市)が見ていた。

妻を亡くし、山で養蜂をしながら暮らす彼は

集落の男手として献身的に働き、みなに一目おかれていた。

が、あることをきっかけに、村人との関係が変わってしまい――。

 

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吉田修一原作×瀬々敬久監督。

 

いや~な話なんですが

抗えない猛烈な負のエネルギーに、完全にやられました。

 

終始重苦しい緊迫が続き、

2時間9分が4時間半くらいに感じた。

 

集落で行方不明になる少女、出自から差別されている青年。

あることで村八分にされていく男。

 

3人を主軸に、物語が紡がれていき

実事件を想起させるリアルさに、圧倒される。

 

誰が犯人か、よりも

人間の疑心暗鬼の心や

誰かを孤立させることで集団の結束を保つ陰湿なイジメ体質など

人間の「暗部」に焦点が当たっていて

胸がふさがるんですよねえ。

 

 

それまで何も話さなかったヒロイン紡(杉咲花)が

綾野剛氏にはいきなり心を開いたり

 

いくらなんでも、そこで男女混浴に入らんでしょう?とか

少々の「ん?」はあるんだけど

完全に寄り切り勝ちされました。

 

3人のなかでも

特に村八分になる佐藤浩市氏のエピソードがいまも強烈に心に残ってる。

あまりにも直近の事件をリアルに思い出させるし

(あれ、すごく印象に残ってる事件だったんだよな・・・)

 

吉田修一氏の原作は

実際の事件にインスピレーションを得て書かれたそうで

その状況や心理などはもちろんフィクションだろうけど

いや、こういうことあるでしょ、とリアルに思った。

 

映画.comさんの評にも書かせていただきましたが

「ジョーカー」(19年)観たとき、まずこの映画の佐藤浩市氏を思い出した。

 

やはり実際にあった事件を下敷きにした

イタリア映画「ドッグマン」(19年)も近い。

心優しいドッグトリマーの男が

あることからみんなにハブられてしまう悲劇で

 

ともに犬が出てくるのが辛いんですが

犬って、

おそらく人間社会を映す「象徴」なんですよね。

 

犬は人間と同じに、一夫一妻制で「家族」を作り

成人しても群から追い出されることなく

家族単位でコミュニティを作って、一緒に狩りをしたりする。

そのなかで協調性を持ち、ときに服従もし、

空気を読まないと、孤立してしまうわけで。

 

ああ、人間って、社会って、怖い。

 

★10/18(金)から全国で公開。

「楽園」公式サイト

コメント
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