ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ジョーカー

2019-10-02 23:46:06 | さ行

ここまで「いま」に寄せてくるとは!

あまりに哀しい物語だ。

 

「ジョーカー」73点★★★★

 

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1980年代初頭のゴッサム・シティ。

アーサー(ホアキン・フェニックス)は

ピエロの仮装をして働く青年。

 

彼は「ストレスを感じると、発作的な笑いが出て止まらなくなる」

神経の病を抱えており

コメディアンに憧れつつも、なかなか夢に辿りつけない。

 

それでもピエロの仕事にやりがいを見出し、

家で老いた母の面倒をみながら

どん底から抜け出そうともがいている。

 

しかし、社会は彼を省みることなく

予算削減でソーシャルワーカーとの面談も打ち切られ、

持病の薬も満足に手に入らなくなる。

 

孤独と絶望のギリギリにいるアーサに

さらに決定的な「ある出来事」が起き――?!

 

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「バットマン」に登場する

悪のカリスマキャラとして知られる

ジョーカー誕生の物語。

 

陰鬱・・・・・・なんです。

でも

現実にあまりにマッチした

あまりに哀しい物語に心がひっかかれた。

 

これは「バットマン」を知らない人こそ

観るべきだし、観て欲しい作品だと思いました。

 

だって誰も宙を舞ってバトルをしたりしない

完全にリアルな人間ドラマだから!

我々日本人にも、痛いほどリアルだから!

 

 

舞台は1980年代初頭のゴッサム・シティ。

富裕層とそれ以外の人々の格差が広がり、

貧困者への支援は打ち切られ、

社会には不満と不穏が渦巻いている。

 

主人公アーサー(ホアキン・フェニックス)も

まさに「負の連鎖」に陥った一人。

 

神経の病を抱え、コメディアンを夢見るも、なかなか叶わず、

老いた母の面倒をみながら暮らしている。

 

人を笑わせるピエロの仕事にやりがいを見出し

懸命に生きようとするけれど

社会はあまりに冷たく

 

仕事を失い、社会的支援も失い

誰にも省みられることなく、どん底に落ちていく。

 

どう考えても

ほんのわずかなきっかけで、

彼を「まっとう」たらしめているものが壊れ

ギリギリの淵から水が溢れ出すのは見えているんですね。

 

そして、やはりある出来事をきっかけに

限界に達し、振り切れる。

 

――ね、これって

現実にいくらでも起こっている事件じゃないですか。

 

トッド・フィリップス監督は

ドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせ

サシャ・バロン・コーエン主演の「ボラット」(06年、問題作!)の脚本も担当。

「ハングオーバー!」(09年)などを監督してきた人で

なるほど、社会の切り取りかた、

特に男の心情、ダメさの描き方がリアルなのかもしれない。

 

演じるホアキン・フェニックスの

哀しみをまとった、渾身の演技もさすがで

 

そして、ブチ切れたアーサーの行動が、

彼と同じく、貧困と虚無の中で生き、富裕層への憎しみを募らせる人々を動かし、

社会の不満への引き金を引く――という展開が、またうまいんだなあ。

 

あまりのリアルさに

「現実に、こうした事件が起こるのではないか」と

米では上映禁止をめぐる騒動にもなっているそうで

その不安もわかる。

 

でもね、そこまでこの話がリアルで

「怒れる民」を想定できるなら

そんな社会こそを、なんとかしなきゃなんねえんじゃね?

 

そう思わせるのも、映画の力なんですよね。

 

★10/4(金)から全国で公開。

「ジョーカー」公式サイト

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