ダルデンヌ兄弟の新作にして
カンヌ映画祭史上初の5作品連続主要賞を受賞。
そんな離れ業も納得でした。
「少年と自転車」78点★★★★
12歳のシリル(トマ・ドレ)は
父親に児童養護施設に預けられる。
シリルは父に会いたい一身で
施設を飛び出し、反抗を繰り返す。
そんなシリルと偶然出会った美容師のサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)は
父(ジェレミー・レニエ)を探し出し、会わせてやる。
だが父はシリルに
「もう会いにくるな」と言うのだった――。
父に捨てられた少年のハリネズミのような抵抗と
彼に手を差し伸べる女性の邂逅を描く作品。
重めのテーマではありますが
ダルデンヌ作品のなかではハッとするほど明るい色調で
話も非常にわかりやすく、スッと爽やかな風が吹きぬける印象があります。
父を求めてホームを飛び出し、
拒絶されても受け入れられたいと願い
動物のように逃げ、走り、攻撃する少年の姿は
名作「冬の小鳥」のジニにかぶります。
しかしジニは女の子だったけど、男の子の場合より抵抗が動的で
より「扱いが大変だよなあ」という印象。
すべてはそのか細い心と体に
インプットされた防御本能なんですけどね。
見てると、まあ扱いにくいこと(笑)。
しかし、抵抗されてもあきらめず
少年を受け入れようとするサマンサの粘り強さと
その自然なふるまいがとてもステキ。
ともすれば悪いほうにも流れてしまう
「子ども」という未完成の器にどう愛情を注ぐべきなのか?
サマンサの存在と対応に、学ぶものは非常に多いです。
さらに、
なんとこの話、日本で監督が聞いた
ある話が基になっているそう。
来週4/3発売の週刊朝日「ツウの一見」で
その基となるお話を監督にした
弁護士の石井小夜子さんにお話を伺ってます。
少年犯罪を専門とする石井さんがシリル少年によせるまなざしは
とても深く興味深いものでした。
新レイアウトで文字数も若干増えていますので
ぜひご一読を☆
★3/31(土)からBunkamuraル・シネマで公開。ほか全国順次公開。
「少年と自転車」公式サイト