ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

2011-05-29 00:07:14 | あ行

「肉体の悪魔」の
マルコ・ベロッキオ監督作品です。


「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」51点★★☆


20世紀初頭のイタリア。

政治活動をしたことで
官憲から追われていた一人の男が
路上で一人の女に匿われる。

男の名はムッソリーニ。
女の名はイーダ。

イーダはムッソリーニに恋をし、
彼の政治活動を全面的に支援する。

やがて彼女は妊娠し、
男の子を出産する。


一時は息子を認知したムッソリーニだが
実は正妻のいる身。

さらに統帥として
イタリアに君臨するようになった彼は
息子の存在を認めようとせず


さらにイーダを排除しようと
ある手段に出る――。



まあなんとも悲劇すぎる話でした。

悪名高きファシストとして
ヒトラーに並ぶとされるムッソリーニ。


数百人も愛人がいたとも言われ、
このイーダもそんな一人だったらしい。


それでも泣き寝入りなどせず、

「私は彼の子どもを産んだ!」と声高に叫び、
その矜恃を生きる糧とし、

どうにかして「息子だ」と
認めさせようとした彼女の行動は

いま見ればまっこと正当なんだけど、

この時代にあっては
「うるせー女」として
存在した痕跡すらも消され、

完全に歴史から葬り去られようとしていたそうです。


が、彼女の手紙などをおさめた本が
イタリアで出版され、
監督がこうして蘇らせた、というわけです。


いいことだなあと思う。


しかしそうはいっても

見ていても彼女の闘いは、
あまりに勝ち目ナシで気の毒だし、


史実は史実なのだろうけど、
見る側はどこか
「虐げられた女が、逆転してギャッフン!」みたいな
カタルシスを求めてしまうので、

あまりに悲劇のまま進む内容に、
さほど感慨を持てなかった。


本当のところは
わかんないんだから、
解釈にしちゃえばいいのになーとか。
勝手なこといってスミマセン。


でもそう思いたくなるほど
どうも釈然としないっつうか。


せめてムッソリーニがその後、
どんな運命を辿ったかまで
描いちゃう、とかさ。


さらに
芸術的というのか、相当変わった演出方法なので
ちょっと面食らう部分もあった。


「未来派」とか「ダダイズム」っぽい
コラージュとか映像が取り入れられていて、

おもしろいし
実際に未来派は当時の流行だったんだろうけど

どこか唐突でもあり……。


厚みはありますが
ちょっと不思議な映画、かな。


★5/28からシネマート新宿ほか全国順次公開。

「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」公式サイト
コメント
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