是枝裕和×西川美和氏の愛弟子の初監督作。
力作と思う。
「夜明け」71点★★★★
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とある、郊外の田舎町。
朝、釣りをしにきた哲郎(小林薫)は
水際に倒れている青年(柳楽優弥)を見つける。
哲郎は青年を助け、自宅に連れ帰り、介抱する。
そして行く当てのなさそうな彼を、
哲郎は自身の経営する木工所で雇おうとする。
何しに来たのか、どこから来たのか
何もかもハッキリとしない青年をなぜ、そこまで?
そして青年には、何があったのか?
そこには、お互いの、ある過ちの過去があった――。
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是枝裕和×西川美和氏が立ち上げた
制作者集団「分福」の新人、広瀬奈々子監督のデビュー作。
全てにおいて、もそもそ、モゾモゾ、はっきりしない青年(柳楽優弥)の
会話にならない遠慮や恐縮、
ときどき爆発する不安定さ。
観ていてかなりイラッとするんですけど(苦笑)
その「居かた」は
若者らしく、かなりリアル。
手持ちカメラの手ぶれ、
日暮れ、夜明け前など「暗さ」を生かした映像も
ドキュメンタリーとリリカルのはざまを切り取るようで、印象に残りました。
見ず知らずの青年の面倒を見るおっさん(小林薫)も
青年が働くことになる木工所の従業員たちも
優しすぎるほどにやさしく
青年は
やさしさ、にくるまれてはいる。
なのに、どうしても、それをそのままに受け入れられない。
そのモゾモゾ。
なぜ、おっさんがそこまで彼にやさしいのか。
そこには自身が息子を亡くした経験をしている、という背景があり
彼は青年に、亡き息子を投影するわけですね。
父と子のぶきっちょな関係、青年が犯した過ち……
核となるもの自体には微妙に既視感があり、話の甘さも気になりはする。
ただ、その描写の「空気」に「いま」があり、
目を離せずに見入ったのはたしかです。
そして、たまたまなのですが
昨日、試写で観た
スティーブ・カレル×ティモシー・シャラメ主演の「ビューティフル・ボーイ」(4月公開)に
この映画にすごく通じるものを感じたのです。
やさしさに包まれているのに、そこに居られない青年。
なぜ、何が苦しいのか。
もがく若者をそのままに、なところが「いま」の叫びなのかもしれない。
★1/18(金)から新宿ピカデリーほか全国で公開。