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とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

映画「おくりびと」を観てきました。

2008-09-14 23:21:20 | 映画


映画「おくりびと」を観てきました。
前から観たかった映画でしたが、先にモントリオール映画祭でグランプリを取ったということで海外の人が日本的なテーマをどう評価したんだろうという別の興味も湧いてきました。

映画館はいつものシネコンです。
前の日にネットで一番後ろの席のチケットを予約してスタンバイです。

「おくりびと」について驚いたことがいくつかあります。
1 鑑賞者の平均年齢が圧倒的に高い。
2 これほど「泣き」の映画はない。
3 主役の本木氏は見事にまで美しい。
4 音楽が圧倒的な存在感をもっている。
5 山形の自然が映画を仕上げている。

以上が、この映画に関するびっくりです。
結果から言えば今年観た映画の中で群を抜いて第1位に輝く作品だと思います。

納棺師(のうかんし)という職業を取り上げたということだけで意外性があるのに、この納棺師の演技をしている本木雅弘の佇まいは目を釘付けにしてしまうところがあります。
動きそのものが実に無駄がなく、茶道の作法を見ているような気がしてきます。また、本木雅弘の目線は真剣そうのものでまるで死者に対して敬意を示しているように思えるのが不思議です。

東京でチェロ奏者をしていた主人公の大悟(本木)がオーケストラの解散で故郷の酒田に帰り、職探しの勘違いから納棺師の世界に入ってしまう。
妻の美香(広末涼子)には冠婚葬祭の仕事についたとごまかすが、ベテラン納棺師の社長(山崎努)に導かれるように、迷いながらも成長していく様子を描いていく。

まだ、始まったばかりなのでストーリーをあまり書くことは避けようと思いますが、印象的なできごとだけ少し書いてみようと思います。

納棺師だけにたくさんの遺体が登場するが、その順番が実に見事だと思いました。見え隠れするエピソードの中に人間そのものに対する尊厳が見えてきます。このあたりの描写で観客の多くがスクリーンと一緒にもらい泣きしてしまうのです。
そこまで、本木雅弘の目線は観客をとらえてしまうのだと思います。

ショッキングなシーンも入っています。
隠していた納棺師という仕事が、美香に見つかってしまいます。
美香は大悟に納棺師という仕事をやめてほしいと迫ります。
その場を取り繕おうとする大悟に「さわらないで!穢らわしい!」と叫びます。
こんな差別的なエピソードを持ち込むことは、冒険だったのではないかと思いました。
かつての問題における差別も、職業的なものをたくさん含んでいました。
動物の皮をはいで太鼓や靴を作ってきた職業集団や火葬場の管理や墓堀人たちの問題などあげるときりがありません。
「穢れ」という問題は様々な差別を再生産してきたものでもあります。

映画はこの美香(広末)の視線を観客と一緒に変化さえていくという視点でもあるような気がします。
映画のクライマックス近くで「私の夫は納棺師です。」とピシッと宣言する美香(広末)にただのエンターテイメントではない誇りのようなものを感じました。

この映画で印象的に描かれているものに大悟のチェロを演奏するシーンがあります。
家の中だけでなく外で演奏するシーンが特に印象的です。
後ろには鳥海山が雄大な風景を見せています。
外でチェロを弾くシーンはどこかで見たなと考えていました。
入れ墨をしている白龍が滝の前で演奏するシーンを思い出しました。
でも、何の映画だかはどうしても思い出せません。
風景と相まって胸に響くテーマ曲は久石譲氏によるものだそうです。
ぜひサントラも手にいれたくなりました。

もう一つこの映画の特徴は、原作がないことです。
昨今の映画はほとんどがコミックや小説の映画化です。
でも、この映画はオリジナル脚本ということもあって、実に見応えのある作品に仕上がったのかもしれません。

「日本映画恐るべし!」です。
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