パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

考える量

2012-09-15 22:44:37 | Weblog
 尖閣問題がきなくさいが、問題の発端になった3年前の中国漁船体当たり事件の時からずっと書いているのだが、あの事件での菅内閣の処理は「結果的に」とはいえ、評価するに足るものだった。

 そもそもこの問題が表面化したのは、自民党政権時代、アメリカのモンデール大使が、「尖閣諸島周辺は日米安保の対象外」という発言をして、アメリカで問題化し、大使更迭ということになったのだった。

 その少し前に、石原都知事がワシントンでモンデール発言に噛み付いたのだが、オバマはそれで更迭(辞任)したわけではなく、あくまでも戦略的判断として問題があると判断して更迭したのだと思う。

 そんな中、中国の漁船が海上保安庁の監視船に体当たりをするという事件が起きた。

 これは、中国のスパイ船だとかいう人もいたけれど、単に振る舞いが乱暴だっただけだと思う。

 これに対し、海上保安庁は船長を逮捕した。

 それ以前、小泉時代は、「逮捕」せずに、「強制排除」をしていたが、振る舞いが乱暴だったことと、民主党が事態に不慣れだったこともあって「逮捕」に踏み切ったのだった(と解説されていたが、多分そうなのだろう)。

 当然、中国政府から猛抗議が寄せられ、民主党内閣はアメリカと協議した上、船長を釈放したのだが、そのとき、クリントン国務長官は、「尖閣諸島海域が日米安保の対象区域である」ことをはっきり明言した。

 私はこれを聞いて、「誰がシナリオを書いたのか知らないが、見事だなあ」と思ったのだが、菅直人をはじめ、民主党政権はそのことに誰も気づかず、体当たりのビデオをひたすら隠す等、マスコミ、自民党の攻撃を自ら招き入れるがごとき、自信のない言動に終始したのだった。

 もしこのとき「私たちは正しいことをした。その証拠にアメリカは尖閣諸島海域が安保の対象となることを、この事件で明言したし」と言って自信を持って突っぱねれば、内心では「失敗した」と臍をかんでいた中国政府を牽制し、今回のような事態にも立ち至らなかっただろう。

 ところが、かつてモンデールに噛み付いた石原慎太郎もまた、そのことに気づかず、かつて噛みついたときに抱いた私怨を晴らすことを優先してしまった。

 それも、アメリカに対するというより、日本に対する不満がもろもろに積み重なった私怨なのだ。

 石原は、もちろん、「私怨なんかじゃない、国を思ってのことだ」と言うだろうが、私に言わせれば「私怨」だ。

 神風特攻隊だって、本人は「愛国の至上に駆られて」と言うだろうが、実際の心理は「私怨」にできるだけ近いところに気持ちをもってきて、それで納得する。

 神風第一号の関中尉も、新婚間もなかった「愛妻○○子のため」と書き残してアメリカの空母に突っ込んだのだが、空母に突っ込むことがなんで愛妻のためになるのか。

 「愛妻」と「空母」は、何の関係もないけれど、関係があるかのように思わないと行動には移れないということなのだ。

 なぜなら、行動は、あくまでも「私」が為すものだからだ。

 そしてそこまで突き詰めて考え、説明すれば、もう、国籍・文化は関係なく、「なるほど」とわかりあえるのだ。

 なぜなら、日本人も、中国人も、朝鮮人も、アメリカ人も、行動と心理の関係は、同じ人間である限り、同じだからだ。、

 石原はそこまで突き詰めて考えているか、というと、考えていないと思う。

 ただ自分勝手な理屈で納得して、しかもそれで理解してもらえるはずだと、淡白にというか、単純に考えてしまうのが日本人で、日本人同士だったらそれでもいいのかもしれないが(私は嫌だけれど)、外国人からは理解されず、嫌われるのだ。

 「理解なんかしてもらわなくてもいい」と言って突っ込んだのが、前の戦争だったのだが、今になって考えると、「考える量」がぜんぜん足りなかったのだと思う。

 三島由紀夫も、死ぬ一年ほど前、東大の全共闘との対話集会で「考えるのが面倒くさくなった、それに比べ行動は簡単でいい」と言って切腹してしまったのだった。

 作家としてスランプに陥っていたともいえるだろうが、やはり「考える量」が足らなかったのだと、今にして思う。

 考える量が足りなかったために、考える量が足りないことがわからなかった、というか。

 こりゃ切りがないな。

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1 コメント

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怒りの本当の原因 (尾崎伸行)
2012-09-16 07:19:28
怒りの本当の原因。それは、無意識に自分の中にいったん作って、そして、怒る、ということが日本人には多いのかもしれませんね。直視して怒るんじゃなく、自分に返す。そのとき受け身になります。日本人に、パラノイア的な精神混乱が、多いのも、一回自分のせいや、自分絡みにしてから感じることが、多いから。そして、即、行動。
受けて自分のせいにして行動。
それでは、切腹もするかもしれませんが、尖閣諸島も、竹島も、自分に返さず、素直に感じることを言えば良いと思う。単純に、損ですから。国として、未来の利益が、さがるから。嫌です、やめて下さい、反日運動も、やめて下さい、いくらでもいままで中国を助けてますから。普通に言えば良いと思う。
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