パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

持ち家民主主義

2013-02-05 02:02:40 | Weblog
 「グラフィケーション」で、建築家の塚本ヨシハル氏が、日本には外国人や低所得者向けの住宅政策が存在しないので、つくってみたいという発言を掲載したら、都の担当者から「そんなことはない、認識不足だ」との抗議があった。

 都の担当者は、ホームページを見ろと言っていたそうだが、見てもよくわからなかった。

 それで実態はどうなっているのか調べたところ、盛り場の街頭で、ホームレスが売っている「ビッグイシュー」のひと月ほど前の号に、神戸大学で住宅政策を専門に研究している平山洋介という学者が、世界的に低所得者向け公営住宅の建設は減少しているが、リーマンショック以後、ヨーロッパのみならず、中国、韓国でも低所得者向けアパートの建設を再開した、が、日本はまったくそのかけらもない、と言っていた。

 なるほど、と思ったものの、住宅政策の流れのようなものは、今ひとつよくわからないでいたが、「公営住宅 ヨーロッパ」でネット検索したところ、以下のようなことがわかった。

 私が見たのは、イギリスの公営住宅政策で、フランス、ドイツ、イタリアの大陸諸国とは根本的に異なるところがあるようだが、そのイギリスの場合で言うと、産業革命以前・以後で状況は異なるが、低所得者向け住宅は労働党政権のもとで数多く建設されていたが、第二次大戦後、イギリス経済の行き詰まりと軌を一にして荒廃が進み、犯罪の温床となってしまった。

 日本で「イギリス病」と言われていた、あれである。

 それで、サッチャーが採用したのが「持ち家政策」だが、日本の「持ち家政策」とは根本的に異なり、労働党が大量につくった公営住宅を住民に売却するという政策で、サッチャー曰く、自分の家を持つことで、その地域に対する愛情、責任感も生まれるというのだ。

 それで、サッチャーの持ち家政策は、「不動産所有民主主義」と名づけられたが、サッチャーの次に首相になったブレアは労働党だったが、サッチャーの「持ち家民主主義」は引き継いだ。

 しかし、リーマンショックで「持ち家民主主義」はその限界を露呈し、低所得者向け公営住宅の建設が再開した、と平山教授は言っていたのだ。

 しかし、サッチャーに「持ち家民主主義」なんてものがあったとは初耳だが、これは彼の国ではサッチャー主義の代名詞のように有名な政策らしいが、マスコミではとんと耳にしない言葉だ。

 でも「家を持つ」ということは、プチブルになるということだから、当然その自覚も求められてもいいはずで、それのない「持ち家」ばかりになったら、どうなるか。

 その結果は、乱雑で、エゴイスティックで、醜い家並みが続く、川口の現状のようになるだけだ。

 否、川口は客観的にはそんなに醜くはない。

 しかし、全然愛着がわかないし、「持ち家」に住んでいる人も同じではないだろうか。

 「持ち家」を所有するということは、自治に責任を持つ、ということなのだが、そんなイデオロギー(観念体系)は、ついぞ聞かされたためしがない。

 やはり、「知っている/知らない」の違いは大きい。

 日本の高級官僚たちは、公営住宅がスラム化してしまった「イギリス病」を見て、日本はあのようにはなりたくないという一念でやってきたので、だろうが、スラム化というのは、低所得者=労働者階級の体制へのプロテストという意味合いもある。

 つまり、スラム化は住民の一つの表現でもあるのだけれど、日本の為政者は、オリンピックの柔道選手の体罰抗議問題にも現れているが、被為政者は管理の対象で、彼らの「表現」をまったく認めないのだ。

 ところで関連ブログを見たら、日本の公営住宅の現状は、高額所得者が所得を隠して住み続け、居住希望者を閉め出す状態は、依然として続いているらしい。

 やっぱり国民総背番号制度はどうしても必要だろう。

 旧社会党系は反対だろうが、旧社会党が反対したことは、ことごとく正しいようなもので…。

 ともかく公営住宅の不正入居は私が中学生の頃から言われていたことで、最近、指摘する人がいないので、低家賃の公営住宅そのものがなくなってしまったのではないかという印象を持ち、それで都の担当者の抗議を招いてしまったわけだが……うーん、いまいち、まとまりに欠けるが、今日は「持ち家民主主義」という言葉があるということを知ったということで。

 ただし「持ち家民主主義」は、サッチャーの先行政権である労働党に対する対抗政策で、問題を解決するものではないことは言っておかねばならない。

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1 コメント

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写真集について (山本透)
2013-02-07 23:33:54
DM頂きました有難うございます。

話は古くなりますが、私の知人(コンテンポラリーフォトギャラリー時代から来て下さっている)荘司さんが以前、コラムで潮田さんの「風に吹かれて」について書かれています。
ご存じかもしれませんが、報告まで。
http://homepage2.nifty.com/ARARYU/sub1a58.htm

私の方は相変わらず1日1点と文章でブログ『仮現の言説』を続けております。宜しかったらご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/tooru001/?_ts=1351338562

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