パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

年金問題、その2

2007-06-06 22:11:20 | Weblog
 どうせ年金はもらえないのに、以前から興味があって、いろいろ調べているが、どうも、何を読んでも要領を得ない。特に、日本以外の年金制度をもっている国の、「掛け金」の金額が、どこを調べても具体額が示されていない。
 それで、ネットを一日探していたのだが、わかったことは、フランスやニュージーランドは、全額税金でまかなっているので、「掛け金」そのものがない。
 次に、日本と同じく、掛け金が必要な制度、つまり《社会保険方式》を採用している国の場合はどうかというと、辛うじてイギリスの例を見つけた。

 自営業者等の場合だが、イギリスでは、週に2ポンド強が義務的掛け金となっている。2ポンド強とは、日本円で420円。月額で1700円弱といったところ。ただし、所得が年4465ポンド(約90万円)以下は免除されている。
 以上は低所得者の場合で、比較的裕福な場合、任意加入を選ぶことができ、その場合は週に約7ポンド半(1500円強)。てことは、月額で約6000円だ。
 そして給付金は、年限一杯払ったとして、週に84ポンド強。約17000円、月に6万8000円。夫婦だと、その倍、13万円くらいとなる。(任意加入の場合はもっと多いのだろうが、資料には載っていなかった)

 もちろん、満額貰うには、定められた期間を年限一杯収めないとダメなのだろうが、それは44年とかなり長い。ただし、最低どれだけの期間、払わないとダメかというと、4分の1、つまり、11年となっている。(イギリスの場合、男女で少し違うが、大した違いではないので割愛)

 以上、日本で言う、国民保険制度に見合うケースで、サラリーマンや公務員の年金制度は割愛したが、日本では、月に1万5000円。一方、イギリスでは任意加入で6000円、義務的加入だったら1700円! むちゃくちゃ安い、といってもいいだろうが、それでもイギリスの年金制度はドイツ、フランスなど大陸ヨーロッパと比べて条件が「厳しい」と言われているのだ。てことは、イギリスが安いというのではなく、明らかに、日本が、あまりにも「高過ぎる」のだ!(給料の額、物価等を勘案したとしても)

 そもそも日本で国民皆年金制度が発足したのが1961年だが、この時の掛け金はわずか150円。(35歳未満は100円)その後、1970年に450円に統一、2年後に550円、さらにまたその2年後の1974年に一気に900円。
 それからは、毎年30%近い大幅値上げをくり返して、1998年に1万3300円となった。この頃から年金不信の声が高まり、数年間値上げは止まったが、今年またあがって、1万5000円強となった。

 要するに、40年ほどで、掛け金は100倍になったというわけだ。一気に値上げされた1974年当時から比べても、15倍だ。

 昨日紹介した『公的年金の不信・不安・誤解の元凶を斬る!』では、「1960年頃の100円はとっても価値があったのです」と書いてあったが、当時、好物の「カツ丼」が150円くらいだったと思う。今、カツ丼は、富士屋で450円、高いところでも800円くらいだろう。あるいは、サラリーマンの初任給が、当時、多分、3、4万……今、初任給はどれぐらいか。100倍で300万円? そんなはずはないだろう。
 
 要するに、1974年から1998年まで24年間、毎年、説明不能の、異常に近い大幅値上げが積み重なってこうなったのだが、何故、1998年に、恒例の値上げが止まったかというと、自民党政権が崩壊したからだろう……と思ったが細川政権は1993年~1994年だった。う~ん……。
 ただ、当時のことでよく憶えているのが、消費税を7%にあげるという細川首相の「深夜の記者会見」で、記者団から根拠を問われて、「腰だめの数字」と答えて顰蹙を買った事件だ。あの時、武村蔵相は、消費税を福祉目的税に充てるとか言っていたと思うが、具体的には国民年金のことが頭にあったのだと思う。たとえば、イギリスの場合で言うと、消費税は17.5%である。ただし、日用品には非課税で、もっぱら贅沢品を買った場合に効率の消費税を負担することになるが、いずれにせよ、月1700円の掛け金で月6万8000円もらえるのは、この高率の消費税のおかげだろう。

 つまり、年金問題の鍵を握るのは、つまるところ、消費税の行方いかんにかかっている。言い換えれば、高額な年金掛け金のおかげで、今現在、5%と欧米諸国に比べてかなり低い消費税率で済んでいるとも言え……いや、それでも、日本の国民年金の掛け金の値上がり率、金額の高さは異常である。
 何しろ、今現在、国民年金基金には(厚生年金に含まれている部分も含めてだと思うが)200兆円あるというのだ。『公的年金の……』の著者、坪野氏が、「払い込み金が一銭もなくても、5年間払い続ける余裕がある」と威張っているくらいなのだが、何故、こんなに溜め込む必要があるのだろう? 200兆円、つまり、国家予算の2~3倍溜め込んでいるのだが、これくらいなければ年金制度を維持できないとは思えない。
 実際、ILOは、一ヶ月分用意するだけで十分と言っている。それ以上溜め込むと、人間どうしても無駄遣いしてしまうから――日本を念頭においてかどうかはわからないが――と、批判報告している。
 もちろん、日本の役人は、無駄遣いといってもほんの一部(グリーントピアとか)で、全体的に見ればちゃんと有効活用していると反論するに違いない。では、どう有効活用しているのだろう?……私が思うに、それは日本国の国債の買い支えに向けられているのではないだろうか。

 むちゃくちゃ本質的なことを言うと、日本の年金制度は太平洋戦争中に、戦費調達のために始まった。正々堂々と戦時国債を買ってくれと日本国民に訴えるべきだったが、日本の役人は日本の大衆を信じていなかった。それで、「欲しがりません勝つまでは」と、国民に倹約を進め、余った金を郵便貯金とか年金基金とかの名目で駆り集めたのだ。
 そして、その構造は戦後も続いた。ただし、「戦争遂行」ではなく、「経済復興」のため、次には「欧米に追い付き追い越す」ために……と私は推測するのだが、どうだろう。

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