パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

年金問題、その3

2007-06-07 22:13:18 | Weblog
 話が前後するが、年金基礎知識。

 年金制度を「財源」の見地から分類すると、積立式と賦課式の二つになる。

 積立式は、読んで字のごとく、掛け金を積み立てておき、一定の年齢に達したら、そこから支払いを受ける。
 これに対し、賦課式は、現役世代が拠出したお金を、即、リタイヤ世代に回す。

 では、日本の年金制度はどちらであるかと言うと、私は、200兆円(4年分以上)も溜め込んでいるのだから、当然「積立式」だと思っていたのだが、ウェキペディアその他、多くの箇所で、「日本の年金制度は賦課式を基本に、積立式を加味したもの」と説明されていた。社会保険庁も、しきりに「助け合い」とか言っているから、本質的に賦課式と考えられるが、それとは逆に、積立式に賦課式を加えたもの、と説明しているところもなくはない。いったい、どっちなんだろう。首をひねってずいぶん考えたが、全然わからない。

 ところが、ネットで調べたら、年金制度発足当時の厚生省年金課長・花澤武夫が、『厚生年金保険制度回顧録』という本でこんなことを言っているそうだ。

 《「この法律ができるということになった時、すぐに考えたのは、この膨大な資金の運用ですね。何十兆円もあるから、一流の銀行だってかなわない。これを厚生年金保険基金とか財団というものを作って(中略)そうすると厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。何千人だって大丈夫だ」
「将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ」》

 思い出した! たしか、5、6年前に年金制度が問題になった時に、この花澤発言が頻繁に取り上げられていた。私も、これをきっかけに、年金制度に興味をもつようになったのだ。

 それはともかく、この花澤氏の発言によると、日本の年金制度は明らかに「積立式」ということになる。創始当時の責任者がそう言っているのだから、まちがいない! そして、そうやって積み立てた金で有料の高速道路やグリーンピアなどを作り、そこからの「揚がり」を年金支払いに当てる。うまくやれば、「積立金」には手を触れなくても年金制度を維持できるという算段だ。

 この、「役人の皮算用」は、理屈から言えばたしかに成り立つ話だが、プルサーマル原子炉と同じで、実際にはそうはうまく問屋が卸してくれないことは、歴史が証明している。具体的に言うと、巨額の積立金には必ず利権が発生し、制度が腐敗するのだ。

 しかし、社会保険庁の役人は、グリーンピアによる損失なんか、200兆円に比べれば、微々たるものと言う。象の血を一匹の蚊が吸ったくらいの損害だと。そんなのは見逃して、もっと大きく見てくれと。そう、『公的年金の不信・不安・誤解の元凶を斬る!』の著者、坪野氏も言っている。たしかに、グリーンピアの赤字なんか、制度全体にとっては痛くも痒くもないに違いないのだが、しかし大衆は許さない。それを、役人は理解できない。そして、大衆はバカだと思う。

 たしかに、大衆はバカだ。役人の言う通り、グリーンピアの破綻くらいで、年金が破綻するわけがないし、それどころか、全体的に見れば、「積立金の運用」は、かなりうまくいったほうだと認めてもよい。しかし、私の考えるところでは、真の問題はここにはない。

 問題は、「(積立金のあるうちに)せっせと使え」と花澤氏は言うが、その《使い道》がなくなってきたことなのだ。

 だとしたら、積立金のさらなる上乗せはここでストップして、「賦課方式(=税方式)」に変えればいいではないか。

 ということで、結論は、花澤氏の言う通りということになる(坪野氏は、賦課式は「所得移転政策」につながり、日本の国柄に合わないと言っているが……馬車馬のごとく真面目一筋・仕事一筋のノンキャリアっぽいなあ、キャリアは、花澤のように、もっと頭がよい)。
 200兆円というと、湾岸戦争をそっくりまかなえちゃうくらい物凄い金額であって、簡単に解決のつく問題ではない。たとえば、日本国の抱える国債残高が800兆円という天文学的数字に達していても、日本国の国歌財政が破綻しないのは、一つには、巨額な年金基金がそれを防いでいるという面があるのだろう。しかし、大枠としては、「積立金」は必要最小限(理論的には一ヶ月分あれば充分らしい)に抑える方向に行くのではないかと思う。というか、行くべきだと私は思う。

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1 コメント

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正しい情報を知りましょう (はなざわ)
2007-06-23 11:25:29
花澤氏の事が紹介されているサイトがあります。
ここもお読みになってはいかがか。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~sr-rokko/page053.html
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