Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ZEISSの空気10. ローカリズム

2018年04月07日 | Kyoto city

 映画「天然コケッコ」(2007年公開)や矢口史靖監督「WOOD JOB〜神去なあなあ日常」(2014年公開)、古くは、根岸吉太郎監督「遠雷」1981年など、田舎をロケ地とした映画が散見する。

 何故田舎が執拗に取り上げられるのかというのも、本当は、このように暮らしたかった、あるいはこのように成長したかった、とする都会人達の田舎暮らしへの憧憬があるからだろう。

 そんな田舎も現在では、都会人達が抱いている田舎イメージとはうらはらに、既に幻想になっている可能性もある。というのも田舎の多くは、限界集落を越えてすでに廃村となり存在していない場合もあるだろう。少なくともコミュニティがあり定住人口が維持されている田舎の数は相当数減ってきていることは確かだろう。

 映画「天然コケッコ」のロケ地が島根県浜田市三隅町となっていた。おおっ!、ここにはまだ田舎暮らしがあったのか。田舎にあんなカワユイ中学生がいるとも思えないが、それにしても島根県や鳥取県は大変興味深いところである。あらゆる国の統計をとっても先ず上位にいることがない、これらの県は、ある種逆手の方法でローカルな環境を次世代に残してくれる可能性を一番持っている県ではなかろうか。逆手の方法とは、「いじるな!」、「壊すな!」という方法である。

 「WOOD Job」は三重県一志郡美杉村(現在津市)であり、杉木材のブランド産地である。この辺りは林業の盛んなところで、このエリアの中で私は、近隣の三重県波瀬村(現在の飯高町)にフィールド調査で訪れたのが高校時代だった。

 ちなみに「遠雷」は宇都宮市近郊の農家であり、いかにも栃木県という空気が漂う。新幹線があるので東京人が棲めそうな田舎である。

 こうした田舎志向の映画と対照的なのが、大森立嗣監督「セトウツミ」2016年であり、堺市が舞台になっている。

 これらのことから考えると、田舎-都市軸というものがあり、程度の差こそあれ、その線上に私達の意識が点在しており、そりときの気分によって左右に動くのだろう。実際に田舎に住もうという人は、なんらかの生業が成り立つ見通しがあって移住するのだろう。

 人間の本質論から考えれば、農耕民族だったというDNAがあるなら、潜在的には皆カントリー・ライフ志向。田舎とはゆかなくても、地方都市に住む人は結構多いはずである。それは先験的な目利きともいえる。これからの社会では、そんな本人にとって住み心地のよい地方都市をみつける幸運があってもよいのではないか。

 そういう私も、縁あって東京新宿から京都市に移住した。京都から名古屋の大学に新幹線通勤するという幸せにも恵まれた。おかげて素晴らしい沿線の景色を十分堪能できたし、それは東京の地下鉄や住宅街ばかりの通勤電車では絶対にできない体験。そして名古屋の街の魅力も経験できるという副産物もできた。

 そんな二都市で暮らしていると、東京は記憶の外に消えてゆく。

 東京ねぇー、過密すぎるから大震災が起きたらどうするんだろうか。街がつぶれると3.11の時のような余裕はない。しかも2060年には東京都の人口が増え、その他は全て低減するという統計予測が出た。それは地方都市にとっては大変結構な話ではないかとするとらえ方もできる。人口減少であれば不動産価格も下がり家も余ってくるだろう。さらに棲みやすい条件が地方都市に揃ってくるではないか。地方都市にとっては、大変素晴らしい統計予測と解釈できる。

 もちろん統計予測通りにならないのが私達の生活世界だから、そんなものは全くあてになりませんが・・・。2060年後には東京都が全て30階建てのビル群になるぐらいでないと、増加人口は吸収できないかもしれない。あるいは今の1ルームマンションよりさらに狭い居室でも新たに開発するのだろうか。それでも東京に住むのだろうか。

 都市には適正な人口規模がある。当然そんな統計通りにはならないことがすぐわかる。だから今もローカリズムという考え方は、全くぶれていないわけだ。

 田舎でもよいけど、地方都市に棲め!、ついに役人もそんなパラドックスに気がついた。観光庁が京都市にやってくる。いずれ中央官庁も地方都市に分散することもできそうだ。分散していてもネットで一つにつながる時代だ。

 

2018年4月2日京都市鴨川五条

α6000,Carl Zeiss,Vario-Tessar E 4/16-70mmZA OSS

ISO3200,70mm,露出補正0,f/11,1/125

 

 

コメント
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