▼函館市の太平洋側に、鰯の大群が押し寄せたニュースを聞いたのは、今月7日だ。私の近くの海岸だったので、早速現場の確認に出かけた。
▼今まで見た鰯の中で最も大きく、丸々に太っていた。私の記憶では昭和30年代までは、冬になると頻繁に海岸に押し寄せていた。
▼当時の大人の話では、鰯は鰤や鮪に追われて海岸に打ち寄せられると聞いていた。今回のも、沖にイルカが跳ねていたという目撃もある。
▼さらにこの海岸は津軽海峡にあり、鮪の良場でもある。大鰯をたくさん食べた巨大な鮪が、正月の初セリを賑わすことを想像する。
▼だが12日の北海道新聞を見て驚いた。英国大衆紙が【函館市への魚の大量漂着が、福島の処理水放出の3カ月後だった】という内容の記事を発表し、SNS上で『核の魚』というのも拡散しているという。
▼原発反対派の私も、福島汚染水のことを一時忘れていたのだ。そこで今までの原発の温排水に関わる、知り合いからの情報を思い出した。
▼普通炉心を冷やした温排水は、大量に海中投棄される。原発周辺で釣りをした知人から聞いたが、原発地域の魚は大きいと言っていた。
▼温排水を毎日観察を続けていた知人は、その周辺のアワビが異常に大きいとも話していた。どちらも科学的に正確な情報ではないが、
本人が言うのだから、疑問を持ってもいい情報だろう。
▼それに英国紙は、福島と函館が近いという位置関係を示す写真や地図も掲載し、関連性を強く印象付けているという。
▼これについては福島原発事故直後、ベルギーに移住していた友人から電話があり「まだ非難していないのか!地図上で見ればすぐ近くの事故ではないか」と驚かれた記憶がある。
▼視点の違いで、危機感も相当違うということを実感した電話だった。そこで地球儀を見たが、福島と函館は隣だ。
▼しかし函館市民には、福島は海を隔てた遠いところというイメージがある。そして遠いところだから、自分たちは安心だというのが、心の奥に潜んでいる気がする。
▼津軽海峡をはさんで、すぐ近くに見える下北半島に、世界最大級の大間原発が建設されようとしている。
▼燃料に使うのは、広島原発の核爆弾の原料「ウラニウム」と、長崎原発の核爆弾の原料「プルトニウム」の混合燃料だ。
▼事故が発生したり、敵国からミサイルの着弾があった場合、想像を絶する被害になる。だが函館市民の大間原発に対する考えは、函館市が建設反対を国に提訴しているので、任せておけばいいという考えが多い様に思う。
▼人口減と経済が低迷する函館市が、大きな予算獲得で提訴を取り下げたら、市長を交代させるだけでは済まない。
▼大間原発問題は、函館市に任せておくだけではだめだということだ。市民がイニシアチブを取るべき問題だからだ。それが「国民の権力」、つまりデモクラシーの、本来の姿だからだ。
▼今の国会の混乱状況は、なにも議員だけの問題ではない。彼らを代表と送る国民側の責任でもあり「民主主義の劣化」がここに来て極まっているということだ。
▼ちょっぴりはみ出してしまったが、英国からの「鰯と原発汚染水」の記事。ただの中傷ととらえるより、もう一度原発の危険性を覚醒させる、指摘ととらえてみることが必要ではないかと考えてみた。
▼さらに津軽海峡は真ん中が公海だ。様々な国の船舶や軍艦、そして潜水艦の通り道だ。函館は江戸幕府以来、軍港化の目的でまちづくりがなされたという。
▼ペリーも函館に入港している。近年港は整備され、大型クルーズ船の入港で市民は喜んでいる。
▼米艦艦隊の入港も十分可能となった函館港。キシダ内閣下で異常に煽る敵国の脅威。日米安保下では、函館港に米空母が接岸するのも時間の問題のような気がする。
▼入港許可は港湾管理者の函館市長だ。その時、イニシアチブをとるのは、やはり函館市民ではないかと思う。
▼軍靴の足音は私たちの周辺に、今や鰯の大群のように押し寄せている。「仕方がない」と済まされる問題ではない。
▼1984年函館市は「核兵器廃絶平和都市」を高らかに宣言している。来年は40年目の節目だ。
▼核燃料で稼働する大間原発もいらない。核燃料で移動し、核兵器搭載の米空母の入港もいらない。
▼「市民による市民のための市民の市政」を執行できる函館市にするため、市民がイニシアチブをとれる【函館市・民主主義】の年の初夢を見たいものだ。
▼鰯の大量漂着から、函館市民の『安全・安心なまちづくり』について、ちょっぴり考えさせられた。
▼来年で函館市に吸収合併され、函館市民20歳を迎える若輩者の、平和国家存続への思いだ。