▼朝のテレビのワイドショーの終盤に「今日の運勢」というコーナーがある。昨日(18日)の、獅子座の私の運勢は最悪だった。
▼そこで、言動はなるべく控えめにしようと考えた。運勢など、70歳も過ぎれば関係ないように感じるが、なんだか気になるのが、年齢のなせる業なのだろうか。
▼開店準備をしていたら、自転車に乗った女性の外国人旅行者から声をかけられた。コーヒーを飲みたいらしい。ドイツ人だという。スマホの自動翻訳機能を使っての会話なので、こちらも安心する。
▼コーヒーを出してから。私も彼女のスマホを利用させてもらいながら「メルケル首相はどんな人物ですか」というような内容で聞いてみたが、解読不能ですと表示された。簡単に聞けばよかったものを、少し長く話したので、スマホが解釈できなかったようだ。
▼スマホの翻訳機能はこんなものかと、私は自分の質問の不適を考えず、ちょっぴりうれしくなった。彼女の今日の目的地の途中に、縄文交流センターがあるのでぜひ見てくださいと教えた。
▼お金を支払う時になったので、私は、百円玉を3個用意し「ワン・ツー・スリー」とテーブルに並べたら、スマホの日本語訳は「今のはとてもうれしいです」と彼女は笑顔を見せた。私の外国人に対する接客態度も、なかなかのセンスだと自画自賛した。
▼次に現れた男女は、なんと6年ぶりだという、ある公立病院の院長先生だった。気さくな方で、何度も店に足を運んでくれていた。若い医師を連れてきては、この店は田舎の割にはいい店だろうと、必ず宣伝してくれていた。
▼ある日一人で来店した。他に客もいなかったのでいろんな話をしたが、いつもは楽しい話をするが、なんだか浮かない表情だった。後で病院関係者から聞いたのだが、病気で奥様が亡くなられたという。
▼再婚したという噂を聞いていた。先生は私よりちょっぴり上の年齢だが、人柄がよかったので、再婚してよかったと思っていた。
▼再婚相手は先生より10歳ほど若く見えた。医者の奥様という感じがして素敵な女性だった。私の妻には少し照れながら「これうちの奴」と紹介したらしい。
▼「先生お元気で」というと「僕は何時までも元気でまた来るから」と、満面の笑顔を見せて帰っていった。老境に入り良い伴侶を得たことに、私たち夫婦も本当によかったねと話した。
▼次は、奥様を始めて連れてきた、近くの町の元町長さんだ。私の店は洋風だが、店のすぐそばに石組みの和風の庭をつくっている。いわゆる枯山水を模したものだが、とても自然観があるとほめていただいた。
▼庭を真剣に褒められたのは恐らく初めてで、自然体の工夫を理解され、とてもうれしい気分になった。さらにサーファーが3人入ってきた。我が店のおすすめ「縄文ランチ」を、3人ともご飯をおかわりして完食くしてくれた。
▼仁徳天皇陵が世界遺産に登録されそうだというニュースが流れている。隣町の縄文遺産群も世界遺産に登録を申請しているが、もし登録されると我が店の「縄文ランチ」も、世界中からお客様が来るのではないかと、今から楽しみにしている。
▼というわけで、運勢がいちばん悪い日が最もうれしいことが続く日になった。妻もよかったねと笑っていた。店を閉めて家に帰る時、近くの川のそばで立派な蕗の葉が見えた。
▼2メートルもある石垣を後ろ向きで降りた。下に足場のような場所が見えたのでそこに足を付けようと思ったが、足場の感覚がなく、ずるりと川床まで落ちてしまいそうになった。
▼驚いたがすでに遅しだ。くるりと半回転し、気が付いたら川床に倒れ空を見上げていた。川は浅かったので背中が流れに浸かっただけで、痛みはなかった。
▼ずぶぬれで這い上がってくると、やはり体に痛みを感じ打撲の跡があった。それでもあの大きな石がたくさんあった川床では、信じられない軽傷だった。
▼運勢が悪くても、この程度で済ん事と、楽しいお客様に会えて、運勢が悪い日も捨てたものではないと思った。もしかして、運勢を占う人が、私の昨日の運勢を占い誤ったのではないかと、自画自賛してみた。
▼「ピンチをチャンス」に、なんというかっこいい言葉もあるが、気にしないという能天気な精神も、人生を気楽に送る秘訣かと思った1日でした。