夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

新盆

2014-08-15 23:26:10 | 日記
先日の「短歌初心者講座」の際、旧友の墓参を詠んだ十首歌の添削をしていただいた。

きわめて私的な事柄ではあるが、亡き友の死を悼む歌を、十首歌の連作にしたことには意味があった。
私が大学院時代から研究している後鳥羽院と『新古今和歌集』の時代には、歌人たちが哀傷歌(人の死を悲しみ悼む歌)を十首連作の形で贈答(和歌のやりとり)することがしばしば行われていた。
後鳥羽院も、寵愛していた尾張の局という女性の死に際して、慈円との間で二度、十首歌の贈答を交わしている。(『源家長日記』に記事がある。)

今回の詠歌は、新盆を迎える旧友の御魂に捧げるものであるので、形の上でも、哀傷歌にふさわしいものにしたいと思っていたのだ。
先生に添削していただいたことによって、言葉遣いも整い、単なる個人の感慨を詠んだだけではない歌になったと思う。

亡き友の新盆なれば墓参のためわれは故郷(ふるさと)浦和に帰る
小学校よりの親しき友なりしを四十半ばにて亡くなりにけり
「墓参りに行きたい」といへば亡き友の母が電話の向うにて泣く
昨年の十二月に逝きてはや八ヶ月魂送りする時となりたり
葬儀にて導師をつとめし住職に墓の在り処(ど)を教へてもらふ
暦にては立秋なれど汗に濡れ西日の中を友の墓に参る
線香は忘れたれども菊の花と冷たき水を友に参らす
朝ごとにその名を唱へひたすらに亡きわが友の冥福を祈る
清め終へし墓に向かひてわが日頃の無沙汰を切に悔やみてをりぬ
夕暮れの空に筋雲広がりて友の墓に秋の風吹きわたる

先生は、この十首を十五分近くかけて丁寧に添削してくださった。たいへん感謝している。

学生時代は毎年、お盆の今時分に必ず、中学校時代の仲間が集まって、飲んだり他愛もない話をしたりしていた。
若かったあの頃も、旧友も、もう帰ってくることはないけれど、私が生きている限り、決して失われない記憶であり、大切にしていこうと思う。

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