夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

今年観た映画から 2015

2015-12-30 08:47:57 | 映画
今年は5本しか映画を観られなかったので、全てを観た順番に紹介。

1.ゴーン・ガール元記事

美人妻の失踪から、事態は次々に予想外の展開を遂げ、その中で、夫と妻それぞれの隠された素顔も明らかになっていく。
この夫のように妻がサイコパスでなかったとしても、無邪気そうに振舞う妻や彼女を見ながら、「この可愛い頭の中に、何が詰まっているのか。」と問いたくなる男は、世に多いだろう。
この映画を観た後は、普段は気づかずに(気づかぬようにして)過ごしている、男女の深淵を覗き込んでしまったかのような、暗澹たる気持ちになる。

2.バルフィ! 人生に唄えば

インド・ダージリン、1972年。
シュルティ(写真右)は、婚約者と離れて訪れていたダージリンで、偶然バルフィ(写真左)に出会う。
バルフィは生まれつき耳が聞こえず口も利けないが、目と仕草で雄弁に話し、自由気ままに生きている。シュルティを一目で気に入ったバルフィは、彼女に熱烈にアプローチする。
〈バルフィという突風が、平凡な人生から一瞬で私をさらった。〉
シュルティがバルフィに好意を持つようになるのに、時間はかからなかった。
しかし、シュルティは母親からこの恋愛に反対され、
「その人はあなたに愛を語ってくれる? あなたの声が聞こえる? 恋愛は何度でもできる。」
と言われ、迷った挙句、婚約者とそのまま結婚する道を選んでしまう。

一方バルフィは、ダージリン随一の資産家の娘だが、自閉症であるため隠すように育てられていたジルミル(写真中央)と出会う。バルフィは一度は、病に倒れた父親の入院代を工面するため、ジルミルを誘拐して身代金を要求しようとするが、彼女を連れての逃避行の間に、二人はしだいに心を通わせていく。


人妻になり、虚ろに生きているシュルティが、過去を痛切に悔やむ場面がある。
〈運命は何度も私たちを引き合わせたのに、私は心の勇気に従うことができず、運命に見放された。〉
この映画を観ていて、私たちは言葉があるからかえって不自由なのではないかと感じた。バルフィとジルミルは、恋のリスクを考えず素直に心に従い、言葉は不自由だが愛に満ちた人生をつかむ。私たちは嘘や建前に縛られて、自分の心の声が聞こえなくなり、どれだけの幸せを失っているだろう、ということを考えずにはいられなかった。

3.でーれーガールズ元記事

岡山を離れてまだ1年も経たないが、すでに郷愁のような気持ちでこの映画を振り返っている自分がいる。
倉敷美観地区、奉還町商店街、鶴見橋、岡山城、岡山駅地下…。ストーリーは原作とはかなり違っているところもあったが、物言わぬ背景たちが、実はたくさんのことを語りかけていたように思われる。

4.KANO―カノ― 1931海の向こうの甲子園

昭和6年(1931)、当時日本の統治下にあった台湾から甲子園に出場し、決勝戦にまで進んだ嘉義農林学校(嘉農)野球部の、実話に基づく映画。

近藤兵太郎(永瀬正敏)が内地から野球部の監督として赴任した時、嘉農は草野球レベルの弱小チームだった。部員は球も満足に捕れず、対戦したチームから、試合するのは時間の無駄とバカにされ、地元の人からも恥知らずと言われる始末。しかし近藤は、彼らを甲子園に連れて行くと宣言し、厳しい練習で鍛え上げ、わずか2年でその目標を実現する。


嘉農は三族共学を特徴とする学校だったが、野球部も実際に日本人・漢人・台湾原住民の混成チームであり、彼らが泥まみれになって一つのボールを追いかけ、必死に戦う試合のシーンは迫力に満ちていた。なんでも、嘉農野球部を演じたメンバーは全員野球経験者で、ピッチャー役のツァオ・ヨウニンは台湾大学野球のスターなのだそうだ。
泥臭いが熱い映画で、今年観た中では一番の感動作。

5.シンデレラ関連記事

女性なら、小さい頃絵本で読んで誰でも知っている話だが、男の私が観ても面白かった。
舞踏会のシーンはやはり圧巻。国中から着飾った娘たちが集まる中、シンデレラが魔法の力で変えてもらったブルーのドレスはひときわ美しく、他を圧倒していた。
ただし、私の記憶に強く残ったのは、ケイト・ブランシェットが演じた継母。
シンデレラを屋根裏部屋に移させ、使用人としてこき使い、いじめ抜くさまが半端じゃなく怖い。シンデレラがたまりかねて、私は何も悪いことはしていないのに、なぜこんな仕打ちを受けるのかと聞くと、
「あなたが若くて美しく、純真で善良だからよ。」
この台詞は人間性の本質を突いているように思った。

今年は米子という映画館のない町に来たこともあり、赴任して1年目で何かと慌ただしかったこともあって、7月以降はまったく映画を観る機会がなかった。
例年以上に、興味を惹かれつつ見逃してしまった映画が数多くあるのが悔やまれる。
来年は1本でも多く、映画を観に行きたい。

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