夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

「おおかみこどもの雨と雪」(その5)

2012-09-27 14:24:41 | 映画
雪の小学校最後の夏、記録的な豪雨がこの地方を襲った。

この頃、雨は頻繁に山に行くようになっていた。そして花に、「先生が足を悪くしてもうすぐ死ぬ。先生が山で果たしてきた役割を、誰かが果たさなければならない」と言う。

ある朝、ラジオでは晴れのち雨の天気予報を告げている。スクールバスが来る時間に、雨は雪に、「今日は家にいた方がいいよ」と注意するが、雪はそのまま登校する。果たして、午後から集中豪雨となり、花の家は落雷で停電する。雨は思いつめた表情で、「行かなきゃ…。」とつぶやいている。

小学校から、大雨で休校になったとの連絡を受け、花が小学校に雪を迎えに出かけようとしていると、雨がどこかに行こうとしている。次に気づいたときには、雨の姿は見えなくなっていた。花は雨の後を追って山をさまよい、崖下に転落してしまう。

花は倒れたまま、夢の中で彼(おおかみおとこ)に会う。
「今まで苦労かけたね。…ずっと君を見てた。こどもたちを立派に育ててくれてありがとう。」
「雨がいないの。」
「雨なら大丈夫だよ。もう大人だよ。自分の世界を見つけたんだ。」

翌朝早く、崖下に倒れていた花を、雨が見つけて安全なところまで運んでやり、そっと山へ帰ろうとする。花が気づいて、
「行ってしまうの? 私まだ、あなたに何もしてあげていないのに。」
雨は黙って去り、山の上からオオカミの姿で花の方を振り返る。
「元気で。しっかり生きて!」
花は雨に向かって叫ぶ。

次の年、雪は中学校に進み、寮に入った。花は今も村の家で静かに暮らしている。山からは時々、オオカミの遠吠えが聞こえてくる。

感想
実際にはありえない、現代のおとぎ話のはずなのに、不思議なほど引き込まれて見てしまった。映像の美しさ、人物設定の確かさ、脚本の良さもあるのだろうが、細部まで徹底して描き込まれ、作り上げられているのが大きいと感じた。国立市内や富山に住んでいる人なら、きっと見ていて思い当たる場所がたくさんあることだろう。主人公の花のまっすぐでひたむきな生き方や、村人たちと打ち解けていく様子、山里での暮らし、こどもたちの成長と別れなど、花と同じ視点で体験して、つらかったり悲しかったり嬉しかったりを感じたように思った。素晴らしい作品で、この夏休み、何人もの生徒たちが見ていたのも納得した。

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