夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

ゴーン・ガール

2015-02-14 23:22:12 | 映画
昨年からずっと観に行こうと思いつつ、なかなか機会に恵まれなかったが、先日ようやく観ることができた。

さわりだけあらすじ

ニック・ダン(ベン・アフレック。写真上)が、ライターとしての仕事を失い、妻と共に故郷であるミズーリの田舎町に戻って2年。
現在は妹のマーゴと「ザ・バー」を経営している。
ある日、ニックは朝から妻の姿が見えず、3時間余りも探した挙げ句、「ザ・バー」に行き、苛つきながらバーボンを呷る。
ニックが不機嫌なのももっともで、今日は妻との5回目の結婚記念日だったのだ。
だが、ニックが家に戻ると、部屋が荒らされており、ガラステーブルが割られ、キッチンには血痕が残っている。
ニックは妻が何者かに暴行され、連れ去られたと思い、警察に通報する。


妻のエイミー(ロザムンド・パイク)は、少女時代、人気絵本『完璧なエイミー』のモデルとなった有名人。
ハーバード大を卒業後、NYでライターをしていた頃に、とあるパーティーでニックと知り合って恋に落ち、結婚した。
エイミーは美しく聡明で、ニックの好みに完全に適った女性であり、この結婚はうまくいくものと思われた。
しかし、エイミーが父親の多額の借金を肩代わりし、また、二人が共にNYでの職を失い、ニックが強引に自分の故郷のミズーリに帰ることを決めたあたりから、結婚生活は暗転し始めていた。

警察から第一発見者として犯罪の疑いをかけられる中、ニックはTVに出演し、視聴者に捜査への情報提供を呼びかける。
かつての有名人である美人妻の失踪というので、全米の注目が集まるが、その直後からニックにとって不都合な事実が次々に浮かび上がってくる。
浪費癖による借金、愛人の存在、妻への暴力や多額の保険をかけさせていたことなど、ニックによる妻殺害の容疑が固まっていき、ニックは窮地に立つことになる。
一方で、ニックの知らなかった妻・エイミーの過去やその隠された素顔も次第に明らかになっていく。

感想(ネタバレ)

数日前、放課後の教室で、生徒たちと雑談中に、この映画を観たことを話したら、
「自分も『ゴーン・ガール』観た。」
と嬉しそうに言う者がいた。
その生徒は以前、『セブン』(1995)を観て気に入っていたので、同じデヴィッド・フィンチャー監督の作品だからと観に行ったのだそうだ。
しかし、あまりの後味の悪さに引いた、と話していた。
たしかに、サイコパスで殺人を犯した(正当防衛ということになっているが)とわかっている妻と、結婚生活を続けていかなければならないというのは悪夢以外の何物でもないだろう。
しかも、妊娠を楯に取られ、失踪妻が監禁から必死に逃れて夫の元に帰ってきたニュースに全米が沸く中、離婚を口に出すことはできず、TVのインタビューに答えて「父親になります。」と言わざるを得なくなる結末には暗澹とした。

いや、もっと暗澹とするのは、この映画を通して、女性というもの、あるいは結婚の正体が、われわれ(特に男性)の思っているようなものではない、という認識を否応なく突きつけられるところかもしれない。
この映画を観る前に、ある人から、「人間不信になるよ。」と言われたのを思い出した。
観ている間は不安と緊張でハラハラしどおしだし、見終わっても心が安まることはないので、恐いのも大丈夫、という人でないとオススメできないが、間違いなく傑作であり問題作であると思う。

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