夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

Over The L'Arc-en-Ciel

2014-12-14 23:03:10 | 映画
ラルク・アン・シエルは以前から好きで、今でも時々聴いているので、このドキュメンタリー・フィルムはぜひ観に行きたいと思っていた。
2012年の彼らのワールド・ツアーに密着し、ほとんど制限なしにカメラを回して撮ったライブとその裏側の映像である。
日本のバンドとしては、過去最大級の世界ツアーであるが、欧米では「ラルクって誰?」と認知度が低い中で、興行としても成功させようとする意気込みが伝わってくる。


彼らの公演はタイ・バンコク、香港、上海、台北、ニューヨーク、ロンドン、パリ、シンガポール、ジャカルタ、ソウル、そして横浜、大阪、東京など世界14都市で、2ヶ月以上にわたって続けられた。
ライブシーンは少なめだし、編集も細切れで、正直、ファンの方には物足りない印象が残るのではないかと思う。
ただし、密着取材によって、メンバーの意外な素顔が垣間見えたり、彼らの本音がわずかだが聞けるのは、大きな収穫だ。
この映画で見る限り、ラルクのメンバーは、移動中もパーティーでもインタビューでも、驚くほど喋らず、静かである。
hydeやkenが、自分たちは言葉を発するのが苦手な人たちで、言葉でなく音楽で発信・表現するものだと思っている、ということを言っていたのは、職人的で私にはとても親しみが湧いた。
また、自分たちは1人の天才が引っ張っていくバンドではなく、4人それぞれが曲を書き、ソロ・プロジェクトも行っている。もともとクセの強い者が集まって20年もやってこれたのは、本当にすごいことだ。ただそれは、4人がそれぞれバランスをとったり、時には我慢もし、うまくバンドが回るように、音楽活動が円滑に進むようにやってきたから可能になったのだ。もしそれぞれが自分を貫いていたら、多分2、3年で終わっていただろう、という内容のことを述べていたのが印象に残った。

ラルクの人気はアジア圏では絶大で、コンサートホールやスタジアムは満杯、入国の際は空港で多数のファンに熱狂的に迎えられていたほどであった。
ジャカルタでの初公演も、聴衆がみな「あなた」を日本語で歌うくらいに、待ち望まれていた。
一方、アメリカやイギリスでは、人々は基本的に日本(語)の曲を聴かないし、最も受け入れられないところで、大きなコンサートを行う困難さが伝わってきた。
ただし、欧米でも彼らの音楽を高く評価する層は確かにおり、逆に本物のファンがそのコンサートには集まっていたように見えた。
会場のファンが、
「(人種や言語による)差別はしない。音楽性を評価している。」
「彼らの音楽に魅了されたら、もう言葉は関係ない。彼らの音楽を聴くと、その世界に吸い寄せられる。」
と語っていたのが印象的だった。

実際、自分が好きだから言うわけではないが、ラルクくらいメンバーの個々の力量が高く、バラエティに富んだ楽曲を次々に生み出すグループは、日本だけでなく海外にも少ないのではないだろうか。
また、hydeはボーカリストとして類い希な表現力の持ち主であるばかりか、作詞の才能も相当のものであると思う。
「あなた」や「虹」のようにスローな曲だけでなく、「Shout at the devil」のようにハードな曲でもほとんど日本語だけで歌い、ロックとして成立させる一方、詩としても自立した世界を構築するのは、並々ならぬ能力だと、以前から感心しているのだ。
40はとうに過ぎているはずなのに、hydeもtetsuyaもkenも、今でも変わらず若々しい(yukihiroは少し老けたが)のも驚きである。

先に述べたように、肝心のライブシーンが少ないのは残念だが、ファンならずとも存分に楽しめる内容で、100分があっという間に終わってしまった。やや物足りなかった部分は、彼らの実際のライブ・ビデオを見て補うことにしよう。

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