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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

怖さの、背景……。

2015-03-29 21:37:36 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 うきゃァ~ッ!」
「がるる!ぐるーっ!」(←訳:虎です!ヤダーっ!)

 こんにちは、ネーさです。
 さあ、サクラ咲く3月最終週の読書タイムは、
 悲鳴と絶叫ほとばしるこちらの御本を、どうぞ~!

  



        ―― 明治の怪談実話 ヴィンテージ・コレクション ――



 編者は東雅夫(ひがし・まさお)さん、2014年6月に発行されました。
 『KWAIDAN-JITUWA THE REAL GHOST STORIES in MEIJI VINTAGE COLLECTIONS』と
 英語題名が付されています。

「ぶるぶるゥ!」(←震えてます)
「ぐっるるっ!」(←訳:じっ実話っ!)

 ええ、そうです、実話です。
 ですから、手に取ったら、
 はい、先ずは……

 解説から読み始めましょう!

「……ふァ??」
「がるぅ?」(←訳:解説ぅ?)

 御本の巻末、246ページから254ページにかけて掲載されている
 編者・東さんによる『編者解説』。

 このパートから読み始めれば、
 御本全体の印象、
 収録されている“怪談実話”への理解度が
 ずいぶんと違ってくるはずです。

 すなわち、明治という時代に怪談が語られることの意味が、
 明らかになる、んですね。

「ふあァ? なぜェ、めいじィ?」
「がるるぅるるぅぐる?」(←訳:明治じゃなきゃだめ?)

 明治維新によって
 文明開化の波が日本を覆いました。

 政治体制の一新、
 暦の改変、
 身分制度と髷は消えましたが……

「おしろがァ、なくなッちゃッたでス!」
「ぐるる~!」(←訳:仏像も~!)

 旧い日本の習慣や文化が無理矢理に、
 次々と消し去られていった明治の初め。

 けれど、そこにフィードバックというか
 反動現象が生じるのもまた必然だったのでしょうか。

 昔の日本を全否定しちゃうのはどうなんだろう?
 何から何まで悪いことばっかり、じゃなかったよね?

「だからァ~?」
「がるぐる?」(←訳:怪談復活?)

 編者・東さんの解説では、
 明治二十年代を境に
 怪談はふたたび文化の表舞台に返り咲きます。

 三遊亭圓朝さんの速記本『怪談牡丹燈籠』がベストセラーになり、
 井上圓了さんが東京帝国大学で『不思議研究会』を旗揚げし、
 やがて泉鏡花さんが幻想文学に本領を発揮し、
 のちに柳田國男さんが佐々木喜善さんの話をもとに
 『遠野物語』を著す――

 維新の時代=明治が抱える矛盾と混沌が
 窺えるムーヴメントですね。

「だからかなッ?」
「ぐるがる!」(←訳:この変化!)

 明治の百物語イベントで
 細々と……ではなく堂々と語られる怪談には、
 江戸の残り香が強い幽霊譚もあれば、
 ガラスという近代的な物質が登場するお話、
 ロンドンでの怪異を報じたもの、
 アメリカの鉄道で起きた出来事もあります。

 また、百物語のニュースは新聞の紙面を飾って
 世間に波紋をもたらしたのでした。

「えどじだいィとォ、めいじィではァ~…」
「がるるるるるぐる?」(←訳:似てるようで違う?)

 この御本に収録されているのは、
 受け取り方によっては
 “吹けば飛んでしまうような怖いおはなし”
 かもしれませんが、
 たとえボンヤリとでも
 時代の背景や風潮、流行を感じ取った後に本文の
 『怪談実話』ねと読み進めば、
 見えないモノも見えてきます。

 社会の変容、
 歪み、澱み、人々が感じだ不安、郷愁、
 そして新しい世界への好奇心も。

「……でもねッ!」
「ぐるがるるるがるるる!」(←訳:マジ怖い話もあります!)

 そうね~、
 とりわけ怖いのは数行で済んじゃう怪談だわね。
 容赦ないブッたぎり方が、怖さを倍加します……!
 これが近代の怪談実話、なのかしら?

 そんなゾクゾクするお話の御本を、
 怪談好きさんも
 近代の歴史&文化史好きな活字マニアさんも、
 ぜひ、一読くださいな~♪