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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

美と寓話。

2015-03-09 21:36:27 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ちいさなァももちゃんッ!」
「がるる!ぐるるぅるるるー!」(←訳:虎です!モモちゃんとプー!)

 こんにちは、もしも黒猫を飼うことになったら
 名前は絶対プーだ!と決意を新たにしたネーさです。
 松谷みよ子さんの功績を偲びつつ、
 本日の読書タイムもまた“偲ぶ”気配が濃いこちらの御本を、
 さあ、どうぞ~!

  



         ―― 十二の肖像画による十二の物語 (新装版)――



 著者は辻邦夫(つじ・くにお)さん、単行本は1981年に刊行されましたが、
 2015年2月に画像の新装版は復刊発行されました。

 『背教者ユリアヌス』『西行花伝』他で知られる
 辻邦夫さん(1925~1999)は、
 美術に造詣深い作家さんであったことでも知られています。
 
 この御本も、美術と切っても切り離せない構成になっていますよ。

「これはァ、しょうぞうがァ、でスねッ!」
「ぐっるるがるる!」(←訳:けっこう有名な!)

 御本の表紙にもなっている
 ポライウォーロさん画『婦人の肖像』、
 ジョヴァンニ・ベルリーニさん画『レオナルド・ロレダーノの肖像』、
 レンブラントさん画『黄金の兜の男』、
 レオナルド・ダ・ヴィンチさん画『美しきフェロニエール』……

 って、こう並べると、
 アート好きな御方は、ニヤリ♪とされるかもしれませんね。
 どこか、クセのある――

「こせいてきィなァ!」
「がるるる!」(←訳:顔ばかり!)

 一癖も二癖もありそうな顔が描かれた12の肖像画から、
 著者・辻さんが想を得たのは、
 やはり、奇妙にねじれた、
 寓話のような12の短編小説。

 夭折の天才ジョルジョーネさんが遺した『老婆の肖像』。
 彼女はどんな思いを抱え、
 こちらを見据えているのか?

 肖像画の巨匠・ティツィアーノさんの『自画像』。
 ヴェネツィアの老画家のアトリエへ、
 或る日、ひとりの男がやって来て言うには……?

「ううッ、ぞくぞくゥするでスゥ!」
「ぐぅっるがるる?」(←訳:ちょっと怖いぞ?)

 活字マニアの私たちにとって
 他人事ではいられないのは、
 ホルバインさん画『エラスムスの肖像』の物語でしょうか。

 本に目がないエラスムス先生、
 古書籍の行商人から
 大型の写本を買い取ります。
 古代東方の修道院で作られたというその本は、
 先生の書斎へ運び込まれましたが、
 重い!
 ……いや、日に日に重くなる?
 書棚を壊し、
 棚から落下しては床板を破り、
 ついには地下室の床石も
 本の重さに耐えかねて沈下し始めた?!?

「ひいィ! おうちがァ、こわれるゥ!」
「がるぐるるる!」(←訳:柱が傾くよう!)

 たった一冊の本のために、
 頑丈な建物が倒壊する?

 本好きには耳が痛くなっちゃうような、
 物語の結末は……。

「うむむむむゥ~…!」
「ぐるがるる!」(←訳:そう来たか!)

 12の物語にはそれぞれ、
 非常に暗示的かつ寓意的な題名が付されています。

 『鬱ぎ(ふさぎ)』、『妬み(ねたみ)』、
 『傲り(おごり)』、『謀み(たくらみ)』、
 『吝い(しわい)』……

 どの画にどの題名が宛てられているのか、
 ここで明かしませんので、
 アート好きな活字マニアさんは
 どうぞ御自身で確かめてみてくださいね。
 
 画を観ながら、物語を読んで、
 そして読み終えてのち、題名を見返したら――
 なるほど!

「むゥ! これはァ~…」
「がるぐるぅ!」(←訳:機智だねぇ!)

 
 時を超えた、
 画家さんと作家さんの見事なコラボ本、
 おすすめです!


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