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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

彼は、異端の画商さん。

2010-06-21 23:11:59 | ブックス
 つい先日まではジャスミンが、
 今はクチナシのお花がなんとも良い香り~…♪
 こんにちは、ジャスミンティー大好きなネーさです。

「こんにちわッ、テディちゃでスッ!」
「がるがる!」(←訳:虎ですよ!)

 お花の香りに包まれて、さあ、本日もお昼寝タイム、
 じゃなくて! 読書タイムと参りましょう!
 こちらを、どうぞ~!


 
             ―― 洲之内徹 絵のある一生 ――

 
 
 著者は洲之内徹さん、関川夏央さん、丹尾安典さん、大倉宏さんと他の皆さん、
 ’07年10月に発行されました。
 ↑上の画像の、御本の表紙写真の御方が、
 洲之内徹(すのうち・とおる)さんです。

「ふむむゥ~、しぶいィ~おじちゃんでスッ!」
「ぐるがるるっ?」(←訳:何者なのかなっ?)

 洲之内さんは、画商さん――

 画商さんといえば、そうですね、
 イメージとしては、
 ジェラール・フィリップさん主演の映画『モンパルナスの灯』に出てきたような、
 夭折した貧しい画家さんを食いものにする
 悪どい人物を思い浮かべる御方も多いでしょう。
 儲かりさえすればいいんだ!
 流行を作れ!
 安く買って高く転売しろ!

「ひどいィ!」
「ぐるるぐる!」(←訳:悪いヤツらだ!) 

 洲之内さんは、
 そんな悪辣画商たちとは大違いの画商さんでした。

 実は、前回の記事で御紹介いたしました
 長谷川りん二郎さんの作品、
 『猫』を買い入れたのが、
 他でもない、洲之内さんだったのです。

「えッ? あのッにゃんこッ?」
「がるがるぐるる?」(←訳:タローくんの絵を?)

 画家の長谷川さんと、画商の洲之内さんは
 深い信頼で結ばれていたようです。
 何年も何年も待ちに待って、
 ようやっとタローくんの画――『猫』を渡された洲之内さんは、
 遠慮、というか、引け目をおぼえました。
 これは、いまはもう亡きタローくんを描いた唯一の画。
 タローくんをとても慈しんだ長谷川さんは、
 手離したくはなかろう……

 長谷川さんは言います。
 『いいんですよ、お約束したんだから』。

 洲之内さんは、答えます。
 じゃあ頂戴します、その代わり――

 『どこへも売りません』

「ふァ??
 がしょうさんなのにィ??」
「がるがるる~る?」(←訳:絵を売らないの~?)

 売りません。
 洲之内さんは、こう続けます。

 『いつまでも僕が持っていることにします』

 ニューヨークあたりの大手画廊経営者さんなら、
 何だそれは?
 オマエはそれでも画商かっ?
 画商が絵を売らないでどうする!!
 と怒り出すでしょうね。
 でも、やっぱり、売らないのです、洲之内さんは。

 絵を売り捌くことよりも、
 絵を愛することを選んだ洲之内さん。
 おかげで、銀座にある洲之内さん経営の『現代画廊』は
 いつも赤字だったそうです。
 赤字を補うのは、
 小林秀雄さんも『当代一』と賞賛した
 美術批評をはじめとする文筆業で得たお金。
 どこどこまでも真っ直ぐに、
 洲之内さんは絵を愛し、
 絵に囲まれた人生を送ったのでした……。

「うむッ!
 それでェいいのだッ、おじちゃんッ!」
「がるがるがる!」(←訳:いいんだそれで!)

 洲之内さんの急逝により、
 『現代画廊』は畳まれてしまいました。
 しかし、遺された『洲之内コレクション』は
 散逸することなく、
 宮城県美術館に引き取られます。
 『コレクション』の中には、
 ええ、確かにありました。
 猫のタローくんを描いた長谷川さんの画が!
 洲之内さんは約束を守り通し、
 誰にも売らなかったのです……。

 不思議千万な画商さんにして評論家、
 洲之内徹さん。
 アート好きさんに、
 そして昭和史に興味をお持ちの方々も、
 ぜひ一読を!
 洲之内さんが成した大きなお仕事が
 じわり……と見えてくるかのようですよ!

「ねこのたろーくんッだいすきィなおかたもォ」
「がるがる~♪」(←訳:ぜひぜひ~♪)