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アントワープの「狂女フリート」








先日訪れたウイーンのブリューゲル展にはもちろんこちらの大作も展示されていた。

Dulle Griet「狂女フリート」(部分)

この絵の所蔵はアントワープの賑やかな街中にあるマイヤー・ファン・デン・ベルグ美術館だ。
典型的な個人収集のこぢんまりした趣味の良い邸宅美術館。
「狂女フリート」以外にももう一点「12の諺」という愉快な作品もこちらにある。
関係のない話だが、チケット売り場にこの世のものとは思えないほど美しいボルゾイがいて、思いきりナデナデせてもらい、気分が華やいだ。

ウィーンの展覧会に出展中で当然「狂女フリート」は不在、常設のその位置に、最近行われた修復にまつわる話がビデオ公開されていて大変興味深かった。
修復の結果、今までグレーだと思われていたフリートの着物が薄いブルーだったとか、"DUL"という書き込みが見つかったなど。

「狂女」とはオランダ語では「激怒する」ほどの意味で、フリートは怒髪天を突く勢いで口を開けた地獄へ向かい、彼女の背後では小柄な女たちの大群がそれぞれ奇妙な生き物をやっつけているのだ。

地獄なぞ恐れない、地に足ついた強い女。醜悪な面をした悪魔なぞ仕事の合間にちょいちょいとやっつけて涼しい顔をしている女。

ネーデルラントの知り合いのたくましい女性らを思い出しては「この絵は、男らが集まっては、自分の妻『あるある』をおもしろおかしく愚痴るネタにしたのではないか」と、今度は毎度妻の愚痴を言い合う、うれしそうな男衆らの顔を思い浮かべながら苦笑したのであった。
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