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bruegel in vienna, once in a lifetime




今回のウィーン旅行の目的は、ずばり「100年に一度の規模」で開催されているブリューゲル展だった。

Bruegel in Vienna, Once in a lifetime 人生に一度。

大げさでなく、ウィキペディアのピーテル・ブリューゲルの作品一覧のほとんどが一堂に会しているのではないかというくらいだった。
11月の出雲大社か! 

まさか、バベルの塔の2枚を同じ部屋でゆったり心ゆくまで眺められる日が来るとは(ブリューゲルはバベルの塔を3枚描き、1枚は失われている)。

右上はウィーン、美術史美術館蔵 114X155。こちらが記憶よりも大きくてびっくりした(左真ん中の蛍光グリーンは非常口のサインが写り込んでしまったもの)。
左下はロッテルダム、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館蔵 59.9X74.6。素晴らしい絵だ。





バベルの塔の絵は元から興味のある絵ではあったが、長谷川 三千子著「バベルの謎―ヤハウィストの冒険 」を読んで以来、わたしは完全に魅了されている。


バベルの塔を含め、ブリューゲルが描いた多くの絵は、風俗の百科事典のようになっていたり、奇妙な生き物や寓話が次々と謎を投げかけてくる。

テレビやネットのなかった16世紀当時は、客間にこういう飾って会話のネタにしたそうだ。そりゃあこんな絵が客間に飾ってあったら、政治や宗教の風刺、風俗の揶揄、知識自慢、話題は尽きなかっただろう。



ブリューゲルは16世紀、現在のオランダとベルギーにあたるエリアで活動し、現地にも多くのブリューゲル作品が残っている。

13年間住んだベルギーで、それらを気軽に鑑賞できるのは常にわたしの喜びだった。
理由はいくつかあるが、愉快なのは、描かれた16世紀のネーデルラントの人々と現代のネーデルラントの人々がその根本的なところでそっくりだと思え、そこにブリューゲルの天才性が煌めいていると思ったからだ。時代に固有の風俗を捉えながら、人間の普遍性が同時に描かれているというすばらしさ。





中野孝次著「ブリューゲルへの旅」にはこう書かれている。
「あそこに描かれた人物たちは、固体でありながら、いわば固体の代表、固体の複数の集約的表現となっている、ちょうど彼の自然が写生そのものではなく、いわば複合的な世界風景であるように」

「それぞれ孤独な生命のなかに充足しながら、それらの関わりによって比類ない調和を形成していたあの感じ」

(右は「雪中の狩人」部分。この四季6部作も、一枚は失われ、現存する5枚のうち4枚が集合。ブリューゲルの描く犬がたまらなく好きだ)


ウイーンの美術史美術館に12枚もの油絵があるのは、ひとえに16世紀ハプスブルグのルドルフ2世(神聖ローマ皇帝)に購入を勧めた弟のエルンスト・フォン・エスターライヒのセンスによるものだそうだ。

この地方とハプスブルグの縁は15世紀の神聖ローマ皇帝マクシミリアンとブルゴーニュ(現在のベルギーを含む)公女マリーの結婚に遡り、当時は地方の一領主に毛が生えたほどのハプスブルグ家のマクシミリアンは、最先進国であったブルゴーニュ地方の文化に魅了されたという。

ヨーロッパ大陸の西と東がこうやって繋がっていると思うととてもおもしろい。


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