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Brugge Style
双魚宮の宮殿
遠く24年前の婚約を記念して先週から、わたしが最も好きな都のひとつ、ヴェネツィアに来ている。
この美しい夢の浮橋にいながら、観光のための外出をほとんどしていない。
昨日はやっと夫の眼鏡を注文するためにサン・マルコ周辺まで歩いて行って写真を撮ったくらい。
とても好きな、路地を迷うような外出も、ルネサンスの名画があたりまえに実用品として飾られている教会を歩き回ったりもせず、宿泊中のティエポロのフレスコ画のあるパパドポリ宮Aman Veniceの天井を日がな一日眺めて過ごしている。
宿泊客専用のサロンだけでなく、客室内の天井にも描かれているから...!
フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂のジオットのフレスコ画を見上げていても、スタンダール症候群には絶対悩まされたりはしないわたしでも、目眩がしそうになる。
ヴェネツィアがなぜこうもロマンティックなのか(こんなことばかり考えている)考えたのでそれを明日は書いてみようと思う。
......
魚座の3月は特別な月だ。
1998年3月のアフリカ旅行中(ジンバブエ、ザンビア、南アフリカ)に結婚の約束をしたからだ。
ヴィクトリア・フォールズのホテルのテレビで、米アカデミー賞の授賞式を見た。
『恋に落ちたシェイクスピア』で主演女優賞を受賞したグイネス・パルトロウが、ピンクのサテンのラルフローレンのドレスを着てインタビューに答えていたのをなぜかよく覚えている。
あれからわたしはベルギーへ行き、娘が誕生し、愛犬を見送り、英国へ引っ越しし、娘は大学4年生になった。
わたしたちはまた振り出しに戻って2人になった。仲良く老いていこうと思う(笑)。
Two for the Roadだ、全く。
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swan lake for ukraine
黄昏れる、春の夕暮れロイヤル・オペラハウス@ロンドン。
空もウクライナの国旗色。
先週末から春分をはさんでからっとした日が続いている。毎日青空を拝める幸せよ。
昨夜はロイヤル・バレエ公演『白鳥の湖』だった。
オデット・オディール Natalia Osipova
ジークフリード王子 Reece Clarke
しかし...
Natalia Osipova 新型コロナウイルス感染のため、急遽Marianela Nunez(今日お誕生だそう!!)が代役に立った。
今シーズン、Marianelaも感染し、予定3回のうち1回しかオデット・オディールとして見られなかったのでキャスティングに不満は全くないが。
Natalia、週末土曜日のチャリティーDance for Ukraineではお元気そうだったのに...
これが新型コロナの恐ろしいところか。だからダンサーを守るためにもマスクしようよ! と思う。劇場でも奨励されているにもかかわらず、マスクをしているのは1割ほどだ。
現在、英国では再び感染者が増加している。
1日の感染者数は95000人(トータルで2000万人。英国の人口が6000万人なので3割が感染したことになる)、うち、イングランドが75000人(トータルで1700万人)。
75歳以上の人と12歳以上で免疫の弱っている人を対象に4回目の摂取が始まり、50歳以上が対象になるのは秋からだとか。
ファイザーがどの変異株にも効果のあるワクチンを開発したそうですね...
公演自体に話を戻すと、Marianelaのバタークリームのような滑らかな足首や動きはもう言うことがないとして、音楽のテンポが一部いまひとつだったと思う。
特に3幕目重要な舞踏会のシーンのオディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥ、遅すぎ!! おそらく、Reece Clarkeに合わせているのだろうが、オディールのソロなぞ、レントのテンポじゃないか。あんなに遅いのを聴いたのは初めて...
それにしてもすばらしい筋力!
一方で、彼が長身から繰り出すリフトは見事だった。
花嫁候補を踊った佐々木さんが際立って美しかった!
Dance for Ukraineでオデットと王子のパ・ダクシオンを踊った金子さんも驚くほど(ほんとうに、驚くほど)美しかった!
そして先日販売になったのが、5月上旬に開催されるSwan Lake for Ukraine『ウクライナのための白鳥の湖』。
なななんと、オデット・オディール大御所4プリンシパルMarianela Nunez, Sarah Lamb, Natalia Osipova and Lauren Cuthbertson 。
ジーグフリード王子Vadim Muntagirov 。
オデット・オディールが次々入れ替わって王子を翻弄するんだろうな...
オール・プリンシパルで、大きい2羽の白鳥を Mayara Magriと金子さん、王子の二人の妹を高田さんとYasmine Naghdiでお願いしたいです。
チャリティだけあってお値段も普段よりすごいが、万難を廃して見に行きます!
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dance for ukraine 芸術のない世界なんて
昨夜はロンドンでDance for Ukraineというウクライナ支援チャリティーが開催された。
於London Coliseum。
英国のチャリティ団体、災害危機委員会 (Disasters Emergency Committee)を通して、元ロイヤル・バレエのウクライナ人ダンサー Ivan Putrovと、彼とキエフで共にトレーニングを受けたというAlina Cojocaruによって企画されたバレエ・ガラ。
パトロン筋からご招待いただいたのだが、チャリティーという催しの性格上、チケットを購入して娘と一緒に観覧した。
若手アーティストを育成サポートする英国のプログラム Jette Parker Young Artists Programのウクライナ人のメゾ・ソプラノKseniia Nikolaievaの国歌独唱によって開幕、アリーナ・コジョカルは「民主主義、自由、人命のため」と語った。
出演したダンサーがそうそうたる顔ぶれ。以下はプログラム。
ロシア人の傑出したダンサーNatalia Osipovaを、元々わたしは心から敬愛している。
今回彼女が示した勇敢さは...彼女の踊りを見ていつも感じるのは、彼女には「語る」ものが他の人よりも特別に多くあるということだ。
彼女には、他人の物語を自分をフィラメントのような媒体にして語れる、ある種「巫女」のような才能がある。
また、Natalia OsipovaにもMarianela Nunez にも言えることは、衆に優れたダンサーというのは、身体の使い方の美しさもさることながら、身体の可動域のその向こうにまで身体を開け、そこに「可能性が見える」。
どういうことかというと...
ここで芸術の役割とは、というのを思った。
芸術とは、無理解と排除と差別と憎悪で世界が覆われる時、言語も宗教も信条も文化も習慣も身体も違う「他者」との間にわずかな回路を設けるという努力である。
他者との不可能な対話を「試みる」のである。
対話を「試みる」とは、「他者」と理解し合い、共感し合うためにされるのではない。
そんな甘ったるいものではたぶんない。理解、はそもそも不可能なのである。
こちらの理解を超えている、話がまるで通じないという不可能なものに、堂々と勇敢に身体を開く...それが芸術だ。
そのためには想像力(創造力も)が必要なのだ。
モダンバレエが、コミュニケーションの不可能さ、不完全さを赤裸々に語る。そこにほとんど和解はない。2つの身体が向かい合って「開き合う」だけである。
クラシックバレエが、人間の男性と妖精(『シルフィード』)、王子と白鳥に変えられた女性(『白鳥の湖』)のミスコミュニケーションの悲劇を示す。
奴隷の男性と、囚われた女性の交流(『海賊』)は、恋愛関係に少し似たコミュニケーションに身を投じることである。
わたしはバレエが三度の飯よりも好きだ。
以下、写真の左から右へネットで発表された協賛ダンサー(ダンサーの国籍の表示はどちらかというと無意味かとわたしは思う...)
Luka Acri (Japan/Italy)
Mathieu Ganio(France)
Javier Torres(Cuba)
Junour Souza(Basil)
Emma Hawes(USA)
William Bracewell(UK)
Fumi Kaneko(Japan)
Francesco Gabriele Frola(Italy)
Mayara Magri(Brasil)
Ivan Putrov(Ukraine)
Alina Cojocaru(Romania)
Marianela Nunez(Argentina)
Reece Clarke(UK)
Natalia Osipova(Russia)
Aitor Arrieta(Spain)
Katja Khaniukova(Ukraine)
Fernando Carratala Coloma(Spain)
Miki Mizutani(Japan)
Mathias Dingman(USA)
Rebecca Bessett-Grahm(Canada)
Salvatore De Simone(Italy)
MariannaTsembenhoi(Ukraina)
Sasha Grynyuk (piano)(Ukraine)
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フラワー(小麦粉)とフラワー(花)
ピンクと緑の組み合わせ、春らしくてかわいい。
先日書いたアール・ヌーヴォーのモチーフっぽいところもいい。
ブリグジット、新型コロナ、ウクライナ侵攻と試練が続き、英国のインフレーション率はすでに6%近い。
今日はスーパーで、卵一パックが去年に比べて少なくとも5%値上がりしているのに気がついた。
小麦の供給をウクライナに依存している英国では、ウクライナで今年の作付けができていない(あたりまえだ)ことから、店の棚から小麦粉が消えるのではと心配されているし(偶然かもしれないが今日は小麦粉の棚は空だった)、小麦粉自体の価格はまだそれほど上がっていないようだが、パンの価格はすでに跳ね上がっているそうである(というのはうちではホームベーカリーで焼いているので実感があまりない)。
ウクライナでお腹を空かせている子供のことを考えると、このようなことを書くのすら不謹慎に思える。パンがなければご飯を食べればいいじゃない、とか。
英国の問題はなんといってもエネルギー価格だ。
来月から英政府はエネルギー価格上限を撤廃する。
その結果、家庭の光熱費は最低5割値上がりする。5割ですよ、50パーセント。5パーセントじゃないよ(笑)!!
わが家では娘が大学生になってから夫と2人暮らしで、毎月平均日本円で5万円支払ってきたが、4月から7万5千円と怒涛の値上がりだ。
更年期障害で暑がりになったのも悪いことばかりではないかも...(泣)。
ガソリン代もあれよあれよという間に1リットル300円近くになった。
わたしは必ずしもSDG’sが十分だとは思わないが、それでも今年は一台は電気自動車に乗り換えようと思っている。
うちの近所にはごく普通の花屋が二軒あり、またスーパーマーケットの花売り場もけっこう充実している。
まあ、ブルージュのかっこいいのがノーマルな花屋や、水曜と土曜の市場の華やかさには比較できないにしてもありがたい。
ブリグジットが決まった時、ひいきの花屋さんが「(オランダから仕入れることが多い)個人経営の花屋なんかはもうやっていけない」とおっしゃっていたが、あれから状況は改善されるどころか、悪くなる一方である。ちなみにこの花屋は去年閉店した。
完全に政治の失敗だ。しかし政府はブリグジットの失敗をひた隠しにし、コロナのせいにしている。今後はなんでもウクライナ侵攻のせいにするだろう。
今はまだ、売り場は春の華やかな花で溢れているが、人々がフラワー(小麦粉)を買えなくなった時に、フラワー(花)を買うのだろうか。
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花盗人
毎年、雛祭りの前に真珠のようなつぼみをつける正体不明のサクラ属(アーモンドではと友達は言ったが、アーモンドは花柄が短く桃のように枝から直で花を咲かせるらしい)の花がそろそろ散り始めた。
花盗人のようにこっそりひと枝切り、室内に飾って愛でる。
家の中が天然のルーム・フレグランスで満たされる。
あなたの名はなに?
先日、プラント・ハンター(主に17世紀から20世紀にかけて、食料・香料・薬・繊維等に利用される有用植物や、観賞用植物の新種を求め世界中を探索する、英国やオランダで盛んだった職業のこと。イングランドの有名なキュー・ガーデンもこの研究のために造られた)の話を読んでたら、英国人女性コリングウッド・イングラムという名前に出くわした。
植物蒐集も、西欧の図書・彫刻・美術品蒐集陳列への情熱と同じように、「世界を己の価値判断ルールに従ってリスト化し、支配」せんとする欲望に基づいているのだ。
コリングウッド・イングラムは当時日本の桜に関する権威であり、1926年に日本に招聘される。
彼女が自宅の庭にある桜を日本で探したところ、日本ではすでに失われた種であることが判明し、日本へ逆輸入した、というのである。これがタイハク(太白)。
写真を見ると、これに似ているような...違うかな...
海を越えた桜のロマンですな。
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