goo

the bolshoi





わたしはバレエ狂いだ。

「最も多い年で56回バレエ鑑賞に出かけ」たというドガよりも多く出かける...

もちろんそんな回数など自慢にもならない。
無芸大食家は、観る回数がどんなに多かろうとアウトカムで彼の足元にも及ばないのである。


最後にバレエを鑑賞したのは3月4日のロンドン、ロイヤル・バレエの『白鳥の湖』だった。

その2週間後くらいだったろうか、新型コロナウイルス拡大のため、ロイヤル・オペラ・ハウスは扉を閉じた。
今シーズンの残り全公演、8月分までがキャンセルされた。
9月からの2020・2021年新シーズンも、現状の見通しでは通常運転で再開するのは無理だろう。


間もなく6週間を迎える隔離生活中、美しきダンサーのインスタグラムを見たり、コレクションのDVDを鑑賞したりしてしのいではいる。
が、劇場の空間で享受できるものとは全く別物だ。

劇場では個人の五感は底が抜けたようになる。
感覚能力は個人の単位のものではなくなり、演者、物語、場そのもの、仕事に携わる人々、観客、歴史背景など全体の感覚が個のものになる...
ような気がする。

今後、オンラインや、場を共有しない方法の必要性が高まるのかもしれない。
それは今までチャンスがなかった人にスポットを当てたり、空間的にも心理的にも距離のあった人を10分だけグループに招いたりなどということを可能にするだろう。

が、時間と空間を共有する舞台芸術の価値というのは不変だと思う。
その点で、そういった分野を手厚く保護する政府も世界にはあり、分かっているなあと感心する。人間は、パンだけで生きているのではないのだ。





上の写真はロシアのボリショイ・バレエ団をロンドンで1993年から2016年にかけて撮影したSasha Gusovの美しい写真集。

白黒の中身の写真の印刷の荒さがえも言えぬ雰囲気を醸し出す。
くっきりはっきりきれいな画面というのとはまた違う、昨夜の夢のような写真集だ。

ずっと欲しいなと思い続けていて、今回、しばらくバレエを観に行ってないし...と購入した。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

レモンの葉のリース





先日、こちらに書いた温室で夫が慈しんでいるレモンの木

いよいよ花がたくさん咲き始め、蜜蜂が飛んで入ってくるので葉や小枝を剪定した。

鉢回りには小さな蟻。せっせとネクターかなにやらを運び出している。
うっかり殺菌剤入りの液体で床を掃除してしまったため、彼らがルートを失うのではと懸念したが、影響なかったようでよかった...


で、レモンの葉。
落とした葉のあまりにもかぐわしい香り。鮮やかな色、美しい形。
捨てるに忍びない。

花瓶にさすには短すぎ、水をはった円盤に飾るには多すぎるので、まだ数日は楽しめるだろうとリースを作った。
枝が短く、葉はとても大きく、綺麗な円にはならなかったが、わたしの膨大なリボン・コレクションから、わずかに黄色の入った紫を選んで飾った。

わたしの写真の腕では葉っぱの茂り方とつやつやの美しさが伝わらないし、リースの出来も余計いまいちに見えて心外だが、いいの。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

イングリッシュ・ストロベリーのムースとソルベ



今年はウインブルドンもキャンセルになってしまった。

ウインブルドン、あの頃までが英国のいちごの季節、すなわち体感的な英国の「夏」だ。

テロワールのフルーツ、無理なく手に入る分だけ、感謝していただきたい。


おいしいいちごはそのまま食べるのが一番...なのはもちろんだが、今年最初のストロベリー・ムースとソルベを作った。
去年作ったものとレシピは同じ、しかも飾りつけまで同じ! わたしのイマジネーションの限界を知った瞬間だった。

わたし自身の想像を超えた美しいものを直にたくさん見たい...
それが実現するのは何のフルーツの季節だろうか。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

the sacred canopy





英国の隔離生活が今日で6週目に入った。 
ボリス・ジョンソン首相も今日から正式に復帰。

......


このところずっと天気が良く、おかげで正気を保っていられたと思う。
明日から天気が崩れ、雨模様の1週間になる予報だ。

空が灰色になって低く下がり、気温が下がり、雨がしとしと降り続けると、隔離生活は耐え難くなるのではないか。
この状況下でも最前線で仕事をしておられる人々は大丈夫なのか。
と、太陽の光のあるなしは、日照時間の短い西ヨーロッパではとても切実な問題なのである。


昨日は温室にキャノピー、天蓋をつった。
人間は、こういう布に包まれていると安心し、リラックスする性質があると思う。

わたしは子供時代、物入れに入るのが好きだったが、母がそれを見てカーテンをつけ、天蓋付きのデイ・ベッドのようにしてくれた。
娘も、小さい時から庭にテントを張ったり、ベッドにシーツをかけて秘密基地にしたりするのが大好きだった。

この天蓋に入って、昼間は読書しながら寝落ち、夜はろうそくを灯し、香を炊いて瞑想...嘘です、ネットでニュースを読む。



「社会的に確立された規範秩序は、おそらくその最も重要な局面において、恐怖を防ぐ盾として理解してよかろう。言い方をかえれば、社会のもっとも大切な機能は秩序化なのである。これに対する人間学上の前提は、本能の力をもつかのごとく思われる人間の意味への執着である」

「社会にあるとは、まさしくそのような規範喪失の恐怖がもたらす極限の狂気から護られているという意味において正気であるということである」(ピーター・L・バーガー著、園田稔訳『聖なる天蓋』新曜社、32頁)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

東ヨーロッパの小包




明日で英国の隔離生活も6週目を迎える。

英国は新型コロナウイルスによる死者が2万人を超え、先は見えない状態だ。
医療関係者、インフラ、小売、運送業他に携わる方々...には足を向けて寝られない。


一足先に規制が緩和された東ヨーロッパから、友達が小包を送ってくれた。

いちごのチョコレートや薔薇の香りの砂糖、マロングラッセ...
週に一回、近所に買い物に行くだけの生活を始めて丸々5週間、外から入ってくるものの新鮮さに心がうきうきした。
オーガニック製品を作るボタニクス社のソープのボトルは特別かわいらしく、普段よりも湯船を使う回数が増えているため、余計にうれしい。

この期間が明けたら、わたしも隔離生活中の人に、新鮮さをイメージした英国の文物で組んだ小包を送りたい。

早速ベルギーや日本の親戚・友人に手書きのポストカードを送ってみようかと思う。


......


親友から「今日はフランシス・レイの誕生日だって」とメッセージがきた。
『白い恋人たち』『男と女』『雨の訪問者』『ある愛の詩』『パリの巡り逢い』
いいですね。
少女の頃の自分を思い出して泣けてくる。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ