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ウィーン旅行と「マイヤーリンク」








今週はウィーンへ遊びに行く予定。

昨日はロイヤル・バレエでMayerlingのリハーサルを見た。
いよいよシーズンが開幕なのだ。

ウィーンを訪問するその直前に、世紀末ウイーンの悲劇を題材にした「マイヤーリンク」なんぞを見たら、さぞワクワク感が高まるだろうと想像はしていたが、もうそれどころの話ではない。

ワクワクの中から次々とワクワクのマトリューシュカが出てくるようなと言えばいいか、あるいはワクワクの芋を掘ったら芋づる式にワクワクがずるずると出てきたというか...
カール・ショースキーの著書「世紀末ウィーン」を読み進む励みにもなる。


バレエ「マイヤーリンク」は、オーストリア=ハンガリー二重帝国のその凋落と世紀末に呼応するかのように起きた、1889年の「マイヤーリンク事件」に題材を求めた作品だ。


文化文明がかつてないほど爛熟したウィーンの世紀末。
どんな豪華絢爛さだったかというと、有名人のリストを眺めているだけでも鼻血がでそうなくらいの豪華さで(ぜひウィキペディアの「世紀末ウィーン年表」を検索してみてください)、もし時間旅行ができるならこの時代に行ってみたいと思っている。

コスモポリタン的雰囲気が一層広がり、第二次産業革命の恩恵による経済的豊かさが拡大し、光とともに陰も増え、都市が近代化され、富裕なブルジョワ層が貴族文化に倣い対抗して独自の文化を促進・擁護し、政治的な不安定さから刹那的な快楽を求める人々、...ウィーンは百花繚乱の時代に。

1889年、事件は起こる。
ハプスブルグ最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と、美貌で有名なエリザベト皇后「シシィ」の息子で、唯一の帝位継承者であったルドルフ大公が、ウィーン郊外のマイヤーリングで、17歳の男爵令嬢、愛人マリー・ヴェッツェラと謎の情死を遂げる。

ロイヤル・バレエは、帝国そのものだけでなく、特に皇太子にとっては何もかもが二重でねじれており、それに苦しむ様子を見事に描いた(去年書いた全くお気楽ではなかったルドルフ大公の皇太子人生について)。アノミー的自殺?

バレエをドラマティックにする題材には事欠かない時代風景、人間関係、不安な精神、死と生の境目に起こった事件だ。


ルドルフ王子役は難しい役柄で、ロイヤル・バレエをもってしてもこの役を演じられるダンサーは少ないと思う。
ティアゴ・ソアレス(Thiago Soares)はその一人で、実際のルドルフ皇太子はこんなに魅力的ではなかっただろうと思うが、男の色香あふれる艶やかさ、危うい全体の美しさが、その狂気を強調していてよかった。


そうだ、今シーズンからロイヤル・オペラに加わり、次の「ラ・バヤデール」ではさっそく主役を踊るセザー・コラレス(Ceaser Corrales)が、ハンガリーの軍人役で初登場、さすがに目立っていた
(2014年にイングリッシュ・ナショナル・バレエに加わるや、そのカリスマでロンドンのバレエファンの心を鷲掴みにし、明日からでもソロで会場をいっぱいにできるのではと思わせた若手ダンサー。2017年には早くもプリンシパルに昇格、今年からロイヤル・バレエへファースト・ソリストとして入団)。



(写真はROHから)
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