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1984




Northen Ballet による“1984”を、サドラーズで。

ジョージ・オーウェルのディストピアの名作「1984」のバレエ仕立てである。


英国のバレエ界はこのところ民族主義に回帰しているのだろうか。

英文学をバレエに仕立てるケースが増えているように思えるのだがどうだろう。
わたしの思い込み、リサーチ不足かもしれないが。

例えば、今月初めはロイヤル・バレエの新作「フランケンシュタイン」(にがっかりさせられた)、先週は去年の新作だったシェイクスピアの「冬物語」...

ノーザン・バレエは「ジェーン・エア」を予定しているようだし、「嵐ヶ丘」もやっている。

次はジョイスの「ユリシーズ」とか、ウルフの「オルランド」とかどうでしょう...



ところで「1984」、これをどうやってバレエにできるのか? 

と、観る前は演出の想像がなかなかできなかったのだが、例えば全体主義を表すのに一糸乱れのない群舞はとても効果的であるなど、なるほどと思わされた点は多く、音楽もすごくよかったし、練りに練られてそぎ落とされた舞台装置もすばらしかった。

特に最後、主人公ウィンストン・スミスが名前を失い、同時に完全に個を失うシーンの演出は感動的だった。

わたしなんかは全体主義下で真っ先に体制に飲まれてしまうだろう衆愚の典型だと思うので(もうすでにプロレなのかもしれないよ...)、最後はまるで、観客であるはずの「自分自身」さえも一緒に消えてしまったかのような気さえした。

ああ、もうどのように書いてもイングソックから逃れていないような気がしてきた...気がしてきた、と主体的に考えていることすらも疑わしい...


話も登場人物も原作よりもかなりシンプルになっているが、全体的には期待より数段上の作品だった。

娘は試験中ゆえ連れて行かなかったが、次回があったら絶対に見せようと思っている。
特にインターネット(もっと端的にGoogleですかな。あっ、この発言は消されるかもしれませんね・笑)が当たりまえの世代には積極的に読ませたいと思い、今年の夏の彼女の読書リストには「1984」を早速入れた。「動物農場」は小学生の時に読ませたのだったが。

はい、うちでは未だに母親がリコメンドする本と、彼女が自分で選ぶ本を交互に読書しています...



(写真はNorthen Balletのサイトから。101号室!)
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queen elisabeth competition 2016




娘、GCSE(義務教育の修了試験)中につき、母親としてはなかなか出かけられない。
これが5月第1週目から始まっていて、6月3週目まで続く。


嗚呼ブラッセルで開催中のクイーン・エリザベート・コンクールを見に行きたいの...


義理の両親は、昨夜、ファイナリストのLukas Vondracek のピアノのパフォーマンスに圧倒され寝つけなかったたそうだ。
大勢の観客が彼の演奏するラフマニノフ3番に手を取り合い涙を流し、会場は喝采で揺れたとか。

ベルギーの音楽ファンやメディアの一部の噂では彼がすでに優勝候補らしい。
この記事はこの予想が当たるかどうか、結果が出る前に書きたくて...


こちら

http://www.imkeb.be/cgi?lg=en&pag=1648&rec=0&frm=0&par=aybabtu



29日追記: 彼が優勝! 市井の音楽ファンの目もなかなかのもんですな。
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ショパンのいちご








スーパーで「イギリス産いちご」が最安値になる
最も美しい季節がやってきた!


今年は鳥よけの網を張るのが面倒だったので
温室効果を狙ってガラス張りの家の中に入れ
そうしたら勢い一日中ショパンを聞いて育ついちごになり(<信じてませんが)

この鉢で3つ分、
いちごのケーキにする分くらいは十分に収穫できそうな結果が出た。
うちの歴代最高の出来高かも...


生き物を育て、毎日成長と変化を観察できるというのは
精神衛生上ええもんですな。


他には、今年は初めて大好きな芍薬を植えたので
こちらも楽しみ。

彼女にはベートーベンを聞かせることにしよう...
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ぴーちゃんの週末




土曜の午前中、家周りの手入れをしていた夫が鳥の雛をレスキューした。

ぽわぽわの産毛が残るロビン(マザーグースの「誰が殺したクックロビン」のロビン。和名ヨーロッパ・コマドリ)の赤ちゃんだ。

コンクリートのドライブウエイのど真ん中にうずくまっていたらしい。


周囲は低木のみの鳥の巣もないような場所で、親鳥の姿も見えない。

この辺りは縄張りを徘徊する飼い猫が多く、また猛禽も狐もおなじみな場所柄なのだ。

ロビンちゃんは全体が濡れていて、相当衰弱している様子だったので、空き箱に古着を入れて暖をとれるようにし、卵の白身の裏ごしやササミを極細に裂いた餌をやった。

落ち着いたところで野生動物保護センターに連絡する。

事情を話したところ、土日は止むを得ず(<大嘘。喜んで)預かることになった。


しばらくしたら大口をあけて餌をねだるようになった。
ピーピーと美声でさえずり、お腹がくちくなると猫がごろごろいう調子で声を出す。
わたしの手のひらの3分の一くらいの体はまん丸でほわほわ、ものすごく、ものすごーくかわいらしい。

動物の赤ん坊ってなぜにこのように愛らしいのだろう。
黒目がちの目と口の位置が近く、丸くて。
世話をしてもらうためにだろうか。
(日本の人気アイドルはみなさんこういう系統のお顔つきですよね)


このあたりでわたしはこのロビンの赤ちゃんを「ぴーちゃん」と猫撫で声で呼び始める。日本語話者としては単純明快、自然な名付けである。
(蘭語話者である夫は最初「ピピップチェ」と呼んでいたが、次第に「ぴーちゃん」と呼ぶようになった)


しかし人間に慣れて野生にかえれなくなっては困る。
ベタベタさわらなように気をつけていたのだが、ロビンはもともと人間を怖がらない習性だそうで、速攻で買いに行った鳥かごから出てきては、テーブルの上や娘の腕を、小首をかしげながらちょんちょん歩くようになった。

家族全員デレデレですよ。



月曜日朝一番で野生動物保護センターに届けた。
もっと預かりたい気持ちでいっぱいだったのだが、野生にかえすのが一番大切ゆえできるだけ早く...

2日一緒に過ごしただけなのに、心を半分持って行かれるような気がした。


帰宅後、ウィキペディアで調べたら、ロビンの卵が孵って巣立ちする割合は55%、その後の1年間を生き延びれないのが77%...


ものすごく切ない。

空の巣症候群ってこういう感じなんだろうなあ!


ぴーちゃん、どうか元気で!
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カタルシス








ロンドンで友達とディナーを楽しみつつ、関西弁でしゃべりまくった。

翌朝、「めっちゃ楽しかったわ。しゃべり足りないような気もするけど、ストレス解消になった! ありがとう」と、彼女にメールをした。


しかし、だ。

前夜の盛大なおしゃべりの中で、わたし自身はストレスが全くない、アホやから! という話をしたのだった。


ストレスがないのにストレス解消とは、はて?

確かにストレスが解消されたような気もする。


たぶん...

ストレスは実際になくても、あることにしておいたほうが「発散」ができるからいいのである。
抑圧された感情を発散する行為:カタルシスこそが大切なのであって、抑圧された感情は実際にはあってもなくてもいいのである。


今日はストレス発散になにをしようかな...



カタルシスといえばアリストテレス。
写真はルーブル博物館のアリストテレス(中央)。右はソクラテス、左がプラトン。3人ともさすがに結構な面構えですな。

ああ、わたしって単純...というか、短絡的...そりゃストレスもないわー
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