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Brugge Style
パリの博物館あちこち
どなたも賛成してくれると思うが、パリでは単なるぶらぶら歩きも面白い。
わたしは、特にガイドブックなどには全く取り上げられることもない、地元の人も知らないような歴史的建造物、時間の忘れものが好きだ。
馬鹿げていたり、くだらなかったり、アートの出来損ない、残骸などを見て歩くのもとても趣味に合っている。
建物にあげてある「有名人誰それがここに何年から何年まで住まった」というプレートを見て歩くのも好きだ。
今回はルドルフ・ヌレエフのセーヌ川沿いの家を偶然見つけて喜ぶ...まあ、ミーハーなんですな。
パリ市が立てているHistoire de Paris(名所旧跡にパリ市が立てている立て札。800近くあるそう)もとてもおもしろい。簡潔明瞭なフランス語で書いてあるのでわたしでも読める。
先日も書いたが、いつも鹿島先生の博覧強記を参考にさせていただいている。
鹿島先生とパリを歩いたらどんなに楽しいだろう!
夫はそういう瑣末な妻の趣味にもきっちりつきあってくれる地図読み名人だ。最近はGoogleマップにその地位を脅かされているが。
今回のわたし的大発見は、15世紀初めに建てられたブルゴーニュ公のパリの邸宅、Hôtel de Bourgogne の一部、Tour Jean-sans-Peur(ジャン一世・無怖公のタワー)だった(写真上)。
中世、ブルゴーニュ公国にはブルージュも含まれており、当時ブルージュはヨーロッパで最も豊かな都市として栄えたので、ブルゴーニュには勝手な親近感があるのだ。
エチュエンヌ=マルセルの繁華街に突然その姿を現わす、中世の塔!
中世といえば、パリに残る最も古い市壁も見に行った。こちら、12世紀フィリップ・オーギュストが建造したもの。
さらに古くはローマ時代の遺跡もたくさん残っていて、まこと、パリは街全体が博物館なのである。
もちろん、大博物館、有名美術館、趣味のいい小ギャラリーも大好物だ。
初日は、友人とイヴ・サンローラン博物館、メゾン・バカラで食事をしたあと、バカラ博物館(食事をしたり、買い物をした場合は無料)、エッフェル塔を見に行く道すがら、ギメ東洋博物館にすんでのところで入りそうになり、パレ・ド・トーキョーで現代美術を見て館内のカフェでお茶、というような動き方をした(どれも近所)。
パレ・ド・トーキョーの手前で、ロシア音楽協会「コンセルヴァトワール・セルゲイ・ラフマニノフ」を見つけて喜んだりもした。
木曜日はオルセーが21時過ぎまで開いているので9時間かけて行ったり来たり楽しんだ。
脚だけでなく、無知なりに頭を使った結果、コンタクトレンズがかすんで、翌日は全身筋肉痛になった。
その反動で緊張せずにぶらぶらできる、すてきなコニャック=ジェイ美術館とニシム・ド・カモンド美術館にも行った。
ヴォージュ広場の特別展、ヴィクトル・ユーゴーの住まい展にも。
とても好きなガリエラ博物館は休館中(シャネルの協賛を受け、地下に常設展を準備中。2019年秋再オープン予定)だが、庭の方はもう春らしい花が咲いていた。
パリにはまだまだ無数の聞いたこともないような博物館や美術館があり、次回は「パリ下水道博物館」と「マジック博物館」にぜひ行ってみたいと思っている。
ブリクジット騒ぎでフランスの税関はサボタージュ中らしい。なんでもブリクジットで一番仕事が増えるのはフランスの税関とイミグレーションだからという理由だ。
わたしはシャルル・ド・ゴール空港から飛行機利用だったので影響は受けなかったが、まさにその当日オルセー空港はストで閉鎖、ユーロスターでは手荷物検査とイミグレーションで5時間待ちだったとか。
ブリクジット前にもう一回行っておきたいのだが、無謀だろうか...
(写真は上からガリエラ博物館の庭、ジャン1世の塔、メゾン・バカラ)
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musée yves saint laurent paris
3月はウィーンから始まり、ボルドー、パリ、ミラノに滞在し、ほとんど英国の家にいなかった。
旅先の感想や写真もこれっきりになってしまうのはとても心残り。記憶とメモ(わたしはメモ魔)を復元できるものから適当にアップしていこうと思う。
パリのイヴ・サンローラン博物館で感じたことが忘れられないので、今日はそれを書いておこう。
イヴ・サンローラン博物館では有名なモンドリアン・ルックの特集をしていた。
米アニメ『シンプソンズ』)(<実は好き)のマージがモンドリアン・ドレスを着ている絵は鮮烈だ。最も単純化、記号化された二次元の人物が、ほとんど同種の服を着ているのだから!
これらサンローランのデザインした、デザイン史を塗り替えるような服を着せられたマネキンが飾ってあるのはとても興味深いが、展示物では何よりもヴィデオがおもしろいと思った。
満足そうなディオールや、憮然としたシャネルの顔も残っている。
ショウのヴィデオが面白いのは特に80年代後半から90年代初頭で、それはスーパーモデル文化があらゆる意味でおもしろおかしいから...
だけではない。
服の中に生身の体が入り、布が動き出すからこそ、光沢や、光を全部吸収する黒さ重さ、空気を可視化する薄さ軽さ、ビジューの輝き、カッティングの妙が生きてくるのであって、美術館に陳列してあるものは貴重だが、その美しさ半分も表していない。
あれらのスーパーモデルというのは、カリカチュア的で、話題になる存在だけではなく、当たり前だが良い仕事をしたのだなあと感心した。
そしてすべてはサンローランの夢と渇望でできたお城、彼自身が自分がもしも女だったらこういうものを着たい、こんな身体でこんな髪なら着たかった、そういったものへの切ない永遠の憧れの集約につきると思う。
そしてそれは汚れなく美しい。
彼がデザイナー人生を辞した時のスピーチで、「女性に自信を与えるだけでなく、女性がそのままの自分を受け入れるために仕事をしてきた」と言っており、それはそのまま彼自身に対してのスピーチであったのではないか。
美しくも儚いファッション。が、スタイルは残る(と、彼も言った)。
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lugansky
ニコライ・ルガンスキーのリサイタル、ロンドンのクイーン・エリザベス・ホールで。
Nikolai Lugansky piano
Debussy: Suite Bergamasque
2 Arabesques
Images, Set 2; L'isle Joyeuse
Scriabin: Sonata No.2 in G sharp minor, Op.19 (Sonata-fantasia)
Etude in C sharp, Op.8 No.1;
Etude in F sharp minor, Op.8 No.2
Etude in B, Op.8 No.4
Etude in B flat minor, Op.8 No.7
Etude in A flat, Op.8 No.8
Etude in D flat, Op.8 No.10
Etude in B flat minor, Op.8 No.11
Sonata No.3 in F sharp minor, Op.23
エチュード42-5が聴きたかった。
スタインウェイが小さく見え、ピアノの椅子は彼が座ると子供の椅子に座っているよう。
現代のピアノは(先日のアンドラーシュ・シフの19世紀のピアノとは対照的に!)ここまで音が出るのだ! というのがまず驚きだった。爆音どころではない。まるで別の楽器のよう...
天才スクリャービンはどれもとてもよかった。
先月、キーシンがスクリャービンのほとんど地球の瞑想のようなソナタ4番を演奏し、特に最近よく聞いているのもある。
アンコールの3曲目、ラフマニノフのプレリュードOp.23, No.7は、客席は半分くらい帰途につこうとしていたにも関わらずノリノリでほんとうに素晴らしかった(娘の十八番でもある。昨夜は娘と一緒だった)。ルガンスキーはこういうコテコテのを聴きたいです...
一方、プロはまた違った聴き方をするのかもしれないが、わたしのシロウト意見によると、ドビュッシーがまったく「フレンチ」ではなく、もんのすごく大ロシア的で、悪く言えば大味も大味、そんな弾き方をするならばドビュッシーじゃなくてもよかろうにという印象を受けた。
何か別の次元でも目指しているのだろうか? 即売会にもドビュッシーのCDしか置いてなかったし...わたしが聞くことのできない何かがそこにはあるのだろうか? あるなら知りたい、とても知りたい。
前半、演奏中に「間もなく開演です...電気機器のスイッチを...」という録音アナウンスが長々と流れ、一瞬どうなるかと会場がどよめいたほどだった。
もうひとつどうでもいいことだが、彼に限らないがホワイト・タイを着用する場合は、当時のようにコルセットでウエストを締めた方がやっぱり格好がいいな...音楽家の演奏には全く関係がないけど。
(写真は全く関係のない、先日ミラノのブレラ絵画館で撮影したもの。すんごい大きな手! と感嘆したので...)
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don quixote 2019 with natalia osipova
ロイヤル・バレエのDon Quixote、今シーズンの続きが始まった。
眼福、眼福!
先月はマリアネラ(Marianela Nunez)のキトリ、今月はナタリア(Natalia Osipova)のキトリを楽しみにしている人も少なくないはず...
パートナーのバジリオ役はマリアネラの時と同じで、絶好調の美しきVadim Muntagirov。
当初ナタリアの相手役だったCesar Corralesが負傷したためだ。
モンタギロフとナタリアの組み合わせはあまり見る機会がなく、組み合わせのケミカル反応としてはモンタグロフとはマリアネラの方がよりいいのかもしれないが、例えば1幕めの最後の強烈な片手リフトはマリアネラの3回よりもずいぶん上手くいっていた。
ナタリアは猫のようでリフトしやすそうだ。
ナタリアとといえばキトリ、キトリといえばナタリア...
昔とかわらず、もう最っ高に弾み輝くキトリだった。自分の気持ちをコントロールできない、幸せと希望にあふれたキトリ! 跳躍の高さ、回転のありえないスピード。観客の沸くことといったら!
最後の最後まで拍手と歓声と床を踏み鳴らす音が鳴り続けた。
(Don Quixote Natalia Osipovaで動画検索してみて頂戴...惚れます)
比較するのもどうかと思うが、マリアネラのほとんど数学的に美しい完璧な踊りもあり、ナタリアの生命のエネルギーそのものといった感じの美しさ(まるで春に花が咲く映像の早送りを見ているかのような)もあり。
彼女らが舞台に登場すると色が変わるのが分かる。多分どんな役をやっても目立つのだろう。
モンタギロフはソロにも惚れ惚れ、ずっとずっと永遠に見ていたいが、ある日はマリアネラ、この日はナタリア、先日はウィーン国立バレエで信じられないほど美しい日本人プリンシパル橋本清香さんと踊り、彼女ら一人一人にプロポーズし(劇中で。もちろん)、プロポーズに持っていくだけのダンサーとしてのすべてが備わっており(劇中で、もちろん・笑)それが心からすごい! と思う。
派手な人気マタドール役のReece Clarkeはヴィスコンティ風の大変な美男子でしかも長身ではあるものの、平野さんの当たり役であるこれを表現するギラギラとキレにはもう一つというところだった。
彼のパートナーのClaire Calvertは美しい(あの足!)。でもサポートされるのは今ひとつ上手くないのかもしれない...平野さんのパートナー、Laura Moreraはやはり優れている。
そして最後にドリアドの女王役、金子扶生さんはやはりやはりすばらしい! 彼女も信じられないほど美しい...絶対に近々プリンシパルに昇進されると思う。
(ナタリアのロイヤル・バレエでのキトリの写真が一枚も見つからないため、写真は彼女をスターにしたボリショイ時代のもの)
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