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ウィーン旅行から「マイヤーリンク」へ








旅先から戻ったその足でロイヤル・バレエのMayerlingへ。


ウィーンに行く前日にも世紀末ウイーンが舞台のこの作品を見、ウィーンから戻ったばかりでまだ気持ちは彼方にあるところでまた見るという、夢の続きを夢で見て渡った感じがする。


昨夜の公演は、ナタリア・オシポワ(Natalia Osipova)、サラ・ラム(Sarah Lamb)、マリアネラ・ヌネツ(Marianela Nunez)、フランチェスカ・ヘイワード(Francesca Hayward)と、圧巻の女性プリンシパル大盤振舞い。

そして日本人プリンシパルの平野亮一さんが主役のルドルフ皇太子を踊った。怪我で降板したエドワード・ワトソン(Edward Watson)の日程も埋めることになったのだ。


ルドルフ皇太子は男性バレエダンサーにとって最も難しい役柄(
全くお気楽ではなかったルドルフ大公の皇太子人生について)
のひとつだ。

優れたダンサーであるばかりでなく、精神が蝕まれ死に近づいてゆく様子をハプスブルグの斜陽とともに表現し、色あせたセクシャルさも要求される。

平野さんは人柄の良さが舞台上でも滲み出るような方なので、精神の爛れ(ただれ)や狂気や枯れた様が多少不足しているように感じたが、そこを揃いも揃って個性的で優れた女性プリンシパルらがそれぞれの役柄でもって十二分にカバーして化学反応が起き、素晴らしい仕上がりだったと思う。

母親は愛情に飢えた子供っぽさを、政略結婚の相手にはサディスティックさを、馴染みの高級娼婦相手には馬鹿にされながらも自由な精神を、昔の愛人には信頼関係を、17歳の愛人にはついに救われる様子を...それぞれ引き立てられていた。

プリンシパルらは単体でも優れている。しかしここまでお互いを引き立てて一つの作品にすることができるのかと驚愕したのだった。


(写真はIndependentからHelen Maybanks。魅力溢れる平野さんとナタリア・オシポワ)
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