久留百合子の生活者視点

仕事、旅行、日常のちょっとしたことから得た情報、生活者として感じたことなどを綴ってみます。

県の女性研修の翼②スイス編

2008-11-19 16:18:42 | Weblog
 「福岡県の女性研修の翼」も今年で25回目、その歴史を振り返ると訪問した国も違いますが、時代と共に研修テーマも少しづつ変わってきたのかなあと思います。勿論、女性問題、男女共同参画と呼び方は変わっても、女性がもっと力を付け、エンパワーメントするということが主たるテーマであることに変わりはないのですが。
 今回、訪問国がスイス・ベルギーということで、ILOやEU本部の雇用委員会などを訪問するということもあって、特にこのたびの研修は、女性問題というよりも「ワーク・ライフバランス」が主たるテーマとなりました。
 
 これから訪問先の紹介とどのようなことを学んできたのか、順にお話していきましょう。まず、初めの訪問先は、スイス・ジュネーブの「男女平等推進センター」でした。
 前にも書きましたとおり、私の荷物だけ到着しないままジュネーブでの一夜を
過ごし、その日は着たきりスズメのまま出発。訪ねたセンターは、郊外の住宅地の中にあり、ここが州のひとつの課のオフィスというのに、まず驚かせられました。



 スイスは連邦政府なので、州がそれぞれ法律をもっている、というちょっと日本では理解しにくい国ですが、このセンターはジュネーブ州のひとつの課という位置づけです。
 センターの課長補佐の方のフランス語の心地よい響きと、はっきりとした適格な表現をされる通訳の人の話を聞きながら、ここでしているプログラムの中で、大変印象的だったことを3つほど紹介しましょう。
 ①「女の子の日」
 ②prix lab-elle
 ③15才以上のプログラム

 他にも、中小企業向けやキャリアウーマン向けなどいろいろなプラグラムがあるのですが、上の3つをご紹介します。
 ①の「女の子の日」ですが、このプログラムは、すでに8年続いており、州によって呼び名は違うのですが、小学校5年生(10才から11才)の女の子に、11月の第2木曜日に、学校を休ませて、両親のどちらかの職場見学をさせるものです。そうすることによって、小さい時から親の仕事に関心を持つのと同時に、特に女子に仕事の認識を持たせるということを意識して続けているということです。
 しかし最近では、なぜ女の子だけなのか、という疑問も寄せられるようになり、検討していると言われていました。

 次に、②prix lab-elleですが、labはラボラトリーのことで、幼稚園児に本の読み聞かせをする時に、女の子はこうだとか男の子はどうだという刷り込みがされないように図書を選定しているということです。

 ③の15才以上のプログラムがちょっとユニークだと思いました。授業で、男女平等を表しているような写真や、逆に不平等なかたよりのあるような写真を見せて話をしたり、ディスカッションするというものです。その写真は、新聞から取ってきて、それを選ぶについては、先生方を交えて十分話し合いをするということでした。

 スイスは、女性が参政権を獲得したのも1970年と大変遅く、決して男女平等先進国ではありません。また、スイスはEU加盟国ではありませんが、北欧などの先進国の情報は入ってくるでしょうし、周りの国々に刺激されて、男女平等を進めていかなくてはならない状況を感じました。

 この日の午後、2番目の訪問先は、ILO(国際労働機関)でした。ILOとは、ご存じのように、国連の専門機関のひとつですが、この本部がジュネーブにあり、実際に行ってみて、その建物の立派さにまずびっくり。1階の天井がものすごく高い石づくりの重々しい建物で、その中の会議室で、話を聞くことができました。



 とてもラッキーことに、この9月に日本に行って、講演をしたという担当の方が話されたので、資料もその時に使われたのをいただくことができましたし、日本の事情もよく分かった上での話を伺うことができたので、大変充実していました。

 2時間近く話を聞いたり、質疑をしましたが、要約すると、日本は先進国でありながら、特に労働市場において、男女平等が大変遅れていると指摘されました。まず、男女の賃金格差が、男性100に対して、女性は66.9.これから労働人口は減り続け、2030年には現在よりも100万人減ると言われているのに、家庭を持った女性が仕事を続けるということに対する社会観念が変わっていないと言われました。

 ILOでは、日本だけではなく、世界中の労働について研究したり、提言、指導を行っているのですが、現在その考え方の支流に、ジェンダー平等の考え方があるということです。また、日本でもやっと言われだしたワークライフバランスもそうですが、ここでは、もう少し広義に”ディーセントワーク”という言葉使われていました。
 実は初めて聞く言葉でしたが、「尊厳ある労働、働きがいのある人間らしい仕事」というように訳されるようです。
 この考え方は大事ですよね。男性、女性ということではなく、人間として、働くということはどういうことなのか、この考え方を雇用者も被雇用者も認識する時にきていると思います。
 そうすれば、自ずから、時間だけではなく、効率の良い仕事の仕方をし、男女共に、家庭も仕事も大事にすることができます。すなわち、子供を持った女性も働き続けやすくなるし、男性も過労死することもなく、家庭も大事にしながら働くことができるでしょう。本当に、日本はもう少し考えなくてはいけませんよね

 次の日、午前中に訪問したのは、スーパーのCOOPです。スイスには、大きなスーパーが2つあって、そのひとつだそうです。スイス中に1,739店舗あって、シェア15.8%で業界2位。従業員は48,200人の生活共同体だと言われていました。今回我々のために話してくれた若い広報担当の女性は、このために3時間もかけて本社の方から来てくれたといくことでした。感激!
 聞きたいテーマは環境への取組みでしたが、丁寧に、この会社の経営戦略や今後の方向性などを話していただきました。具体的には、消費者が選択しやすいように、オーガニック製品を集めたコーナーを作ったり、商品の質をラベル表示で見やすくしたり工夫されているそうです。



 また、環境への取組みに関しては、今日本でも言われようになった、フードマイレージの考え方を中心に、成るべく国内生産の物を仕入れたり、仲介業者を少なくするようにしているということです。そして、それらを消費者が選択する参考にできるよう、やはりラベルなどで表示する工夫をしているそうです。
 ここが大事ですよね。日本のスーパー、小売店は流通経路が複雑すぎると思います。ですから、消費者に明確な情報が伝わらない。だから、こんなに不正や事件が起こるのではないでしょうか。

 やっぱり、違う国の、それも生で話を聞くということはいい勉強になりますね。今回は、スイス編でしたので、次回はベルギー編をお届します。お楽しみに!

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿