私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

磐姫皇后の嫉妬(うはなりねたみ)

2009-06-29 18:24:21 | Weblog
 磐姫皇后(いわのひめのおほぎさき)は大変な嫉妬心の強い女性でした。
 その様子を、古事記には、仁徳天皇に仕えている女性で、普通と違った何か変わったしぐさが見えると、これを、古事記では「言立者」と書いて、「ことたてば」と読ましています。意味は、平常ならぬ、違った異なったことをするという意味です。
 もし、天皇に仕えている女官が、そんな仕草をしようものなら、忽ち、磐姫皇后は、その女性に対して「足母阿賀迦邇(あしもあががに)嫉妬(ねたみたまいき)」と、書いています。
 この「あしもあががに」と言うのは、その嫉妬が余りにも激しいために、足摺りして大いに怒ることなのだそうです。地だんだ踏んで怒るのを言うのです。
 だから、めったに女官たちは天皇に近づくこともできなかったのだそうです。その仕打ちのひどさにです。

 ところがです。ここに一人の美しい女性が登場します。古事記には
  「其容姿端正」と書かれています。これを、古事記流に読みくだすと「それかほよし」と、読ませています。
 「容姿端正」です。ただ単に顔がいいだけではなかったのではと思われます。この時代の美女は性的な魅力も十分兼ね備えていなくてならなかったのです。

 万葉集にこんな歌があります。
 「しなが鳥(とり) 安房(あは)に継ぎたる 梓弓(あづさゆみ) 周淮(すゑ)の珠名(たまな)は 胸別(むなわけ)の 広き我妹(わぎも) 腰細(こしぼそ)の すがる娘子(をとめ)の 花の如(ごと) 咲(ゑ)みて立てれば 玉桙(たまほこ)の 道往(ゆ)く人は おのが行く 道は行かずて 召(よ)ばなくに 門(かど)に至りぬ さし並ぶ 隣の君は 予(あらかじ)め 己妻(おのづま)離(か)れて 乞(こ)はなくに 鍵さへ奉(まつ)る 人皆(ひとみな)の かく迷(まと)へれば うちしなひ 寄りてぞ妹は たはれてありける(9-1738)」

 要するに「豊かな乳房を持った、すがる蜂のように腰の細い美人が…」と言う意味の歌です。
 そんな美女が天皇の周りにはいっぱいたのです。それを磐姫皇后は怠りなく監視して、もしもの時はいつも嫉妬していたのでしょう。
 大変に人間味のある皇后だったと思われます。どうですか。

 なお、すがる蜂はスズメバチだそうです。腰がきょっと細く尻が出っぱったあの蜂のことでです。念のために。