波打ち際の考察

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波屋山人

小田急線を利用した

2009-06-06 11:36:18 | Weblog
先日、小田急線を利用した。
京急や東西線などと違い、朝の小田急線は女性の姿が多い。黒や灰色のスーツの比率は低い。
初夏の陽射しに照らされた代々木上原や代々木八幡の住宅街の風景とあいまって、さわやかな路線だ。

世田谷代田駅で高齢の男性が1人乗り込んできた。
満員状態だけど躊躇なく体を押し込む。
電車が走り出すと、静かな車内で、男性の鼻息がよく聞こえる。
70代くらいの小柄な男性だけど、鼻の穴が大きいのだろうか。
鼻毛が密集して空気の通りを邪魔しているのだろうか。肺活量が大きいのだろうか。

そんなことを連想しているうちに下北沢駅に止まり、何人かが下車した。
その時だ。その小柄な男性が、近くの若い女性に向かって「あなた、ちょっと大きいよ」と声を発して指差した。
女性は恐縮しているように見える。
ヘッドホンから音が漏れていたのだろうか。
(女性のほうが背が高かったけど、べつに体が大きいよ、と言ったわけではないと思う)

思わず、「あなたの鼻息のほうが大きかったですよ」と言いそうになった。

「あなた、ちょっと大きいよ」と言った時の高齢者の声にはよどみとか躊躇といったものは全くない。
「森光子が2千回演じた舞台は?」というクイズに「放浪記!」と答えるように、何の迷いもなく、当たり前でしょう、といった感じの快活な表情だった。

さも当然のこと、といった表情で言葉を投げかけていたけど、すこし違和感もあった。
相手を全面否定するときの意識とはどのようなものだろう。
正しくないことは駆逐されて当然だ、と認識しているのかもしれないけど、他の考え方もあるのではないだろうか。

それに、相手を完全に否定するような言い方をすると、反発を招くおそれもあるのではないだろうか。
高齢者の人は自分が安全な場所にいると思っているのかもしれないけど、歌舞伎町の路地でコワイ人たちにポイ捨てを注意するくらいのリスクが隠れているかもしれない。

カチンときた人は何をするかわからない。
全面的に非のある人でも、攻撃を受けたと感じれば身を守ろうとする。本能的にガードを硬くして跳ね返す。
自分の心を意識的にコントロールできなければ、瞬間的にキレてしまうかもしれない。


私だって、時には人に文句を言いたくなることもある。
だけど、非難したり咎めたり、上からものを言うことによってすんなりと解決することは少ない。
むしろ下手に出たほうがスムーズに状況を動かしやすい。

例えば、問い合わせの回答がなかなか戻ってこない場合、
不愉快な顔をして「なぜ返答が来ないんだ。忘れているのか。困るんだ」
などと言うと、先方の態度を硬化させるおそれがある。
全面的に相手に非があっても、相手が気分を害する可能性は高い。

控えめに「お忙しいところおそれいります。先日お問い合わせした件なのですが、ご確認いただけますでしょうか」
とでも言っておいたほうが回答は早いかもしれない。

強い口調で言わないとなめられる、ということはない。
控えめな姿勢でいいから、きちんと物事を把握して指摘したり催促していれば、なめられない。
弱い立場の部下やスタッフに対しても、偉そうに命令しなくても指示することはできる。

それにしてもあの高齢者の方は、女性が逆ギレするというリスクを考えなかったのだろうか。
完全に自分が安全圏にいるかのような、全面的に相手に非があるかのような態度だったけど、女の子が内心むっとしている可能性もある。
「今度どこかで出会ったら、痴漢の犯人として駅員さんに突き出してやろうか」と思っているかもしれない。

高齢者の人だって、文化の違うところに足を踏み入れれば、人から咎められることもあるだろう。
欧米でコーヒーをすすりながら飲んでいたら顔をしかめられる。
韓国で茶碗に口をつけてご飯をかきこんでいたらさげすまれる。
表参道でのどを鳴らしてタンを吐いたら顰蹙を買う。
静かな飲食店で高齢者の人たちが大きな声でがやがやしゃべっていたら、内心「もうちょっと静かにしてくれないだろうか」と思っている人もいる。

そんな人に「ちょっと音が大きいよ」と文句を言われたら、高齢者の人は素直に「雰囲気壊して、迷惑かけてごめんね」とあやまるのだろうか。
あるいは、「は? 知らないよ、何言ってるんだ、この人たちは。高齢者に配慮しろよ」と言って反発するかもしれない。

あるいは、外国の人から「日本の高齢者はアジア侵略の加担者だ。反省していない。謝れ」と言われたら、素直に謝るのだろうか。内心「わるいことしたな」と思っていても攻撃的な非難を感じたら、心のガードを固めて反発してしまうのではないだろうか。

私は、「うるさい」とか「謝れ」とか言われるとカチンと反発してしまうかもしれないから、できるだけそのような言葉遣いで人に接することは避けたいと思う。

まあ、けっこう気が短いから、無意識に感情的な言い方をしてしまうこともあるかもしれないけどね。
その時は、逆ギレされないか、殴られないか、刺されないか、といったリスクは覚悟しておく。
タバコのポイ捨てを注意して反発されて殴られそうになったら、ひょいと身軽によけてついでに自分の顔をガードするふりをしながら肘打ちで相手のあごを撃ち抜いてみようか、などと夢想する。



追記 
それにしても、逆ギレっていう言葉は安易に使われすぎかな。昔から「かんしゃく持ち」とか「瞬間湯沸かし器」という言葉はあった。むかしのほうがキレやすい人は多かったかもしれない。


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