
船場吉兆が食べ残しの刺身や天ぷらを使いまわしていたということが大きな問題となっている。
女将というか現社長の湯木佐知子さんが「『食べ残し』ではなく『手付かず』の… 」とでも言おうものなら
「ちょっと箸でふれたかもしれないでしょ、なぜ手をつけていないとわかるんですか!」と記者の厳しい指摘が飛んでくる。
町を行く会社員たちも「あれはないよね」と口にしている。
気の強そうな女将も悪役としてはまっているのかもしれない。
伍代夏子がうるうると涙しながら頭下げていたら、これほど激しく全否定されることもなかったかもしれない。
「高級料亭」で、「衛生上問題のある行為」「客を欺く行為」や「けち臭い行為」を行っていたから、非難されているのだろうか。
もし、「庄や」や「白木屋」や「餃子の王将」や「デニーズ」で青ジソや煮物や炒め物の使いまわしをやっていても、これほどの非難は受けなかったのではないだろうか。
「信頼性が高くあるべき店」が、賞味期限偽装で大きく評判を落とし、さらに信頼性の低いことをやっていたことが明らかになり、炎上し、朽ち果てようとしている。
だが、船場吉兆が全否定される必要もないのではないだろうか。
まず、船場吉兆を全否定する人たちの言い分は、多分に感情的、雰囲気的、情緒的であることが多い。
「私たちはそのような行為がなぜ許されないと思うのか」
「店はなぜそのような行為をおこなってしまったのか」
「行政は今後どのような備えをすればよいのか」
などといったことを冷静に分析してもよいのではないだろうか。
吉兆をつぶすことが問題の解決につながると考えるのは、理屈を無視した「臭いものに蓋」のひとつのパターンでもある。
物事の構造を解き明かすことなくイメージや印象で何かを否定するムーブメントは、成熟していない社会で度々見られる。
戦争の発生するメカニズムも知らずに戦争に反対するような人たちは、戦争を起こす側にもまわりやすい。
戦争を起こす人たちの攻撃性と、戦争反対を叫ぶ人たちの攻撃性は紙一重。
正しいと思うことをするのは心地よいが、堂々巡りから脱していない行為であることも多い。
何かを叩かなくても、物事を変えることはできる。
それでも、「絶対に船場吉兆がわるい。反省してない。あんなのつぶれてしまえばいい」と言う人は多いだろう。
だが、「具体的にどのような行為が許されないことなのですか。何が罪なのですか」と聞けば、法律的、あるいは社会学的に答えられる人はどのくらいいるだろう。
第一、船場吉兆は何か法律違反をしたのだろうか。
商品の賞味期限を偽装したことも、何か法律に触れただろうか。
法律に触れていないことなのに絶対にいけないと言うのは、個人的な価値観を押し付ける傲慢な行為ではないだろうか。
刺身や青ジソやパセリを使いまわしするのは、何か法律に違反するだろうか。
食品衛生法違反になるのであれば、きちんと法的機関が判断し、船場吉兆を法的に罰すればよいのではないだろうか。
立ち入り検査をした保健所の人は「健康被害がなければ法的な責任は問えないが、食に携わる事業者としてあってはならない」と言っている。
法的な責任は問えないのに、どういった権限で「食に携わる事業者としてあってはならない」と言えるのだろうか。
周囲の雰囲気に流されず、法的根拠を明確にしていただければありがたい。
法的根拠のない行動が黙認されるのは社会的に危険なことだ。
また、おそらく全国の居酒屋やレストランで全く残り物の使い回しをやったことがない、というお店は、開店直後の店を除いてごくごく少数なのではないだろうか。
私は刺身の青ジソもツマも大好きだから全部食べる。
だが、たまに「これは使いまわしかな?」と感じるような、どことなく新鮮さを感じないものに当たるときもある。
新大久保の韓国料理屋のランチで突き出しを食べていると、明らかにこれはきのうのおつまみの残りをあえて作ったな、という小皿があるときもある。
使い回しが許されないのであれば、使い回しを許さない法律を作り、きちんと全ての店で取締りを行って筋を通してほしい。
そして、使い回しを許さない人々は、使い回しを行わないことによって生じる大量の生ごみの処理については何か提言をしないのだろうか。
衛生を重視するのであれば、もったいない行為も黙認されるべきだと割り切っているのだろうか。
私は船場吉兆に行ったこともなく、船場吉兆に期待しているわけではないが、再オープンしたら、一度食べに行ってみたいと思う。
きっと、使い回しが明らかになっていない有名店の油断した料理に比べ、船場吉兆の料理は緊張感に満ちたものとなっているのではないだろうか。
船場吉兆が今回の事件を糧とし、生まれ変わって躍進されることを期待する。
※食品衛生法
http://www.houko.com/00/01/S22/233.HTM#s11
第2章 食品及び添加物
第5条 販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。以下同じ。)の用に供する食品又は添加物の採取、製造、加工、使用、調理、貯蔵、運搬、陳列及び授受は、清潔で衛生的に行われなければならない。
第6条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
1.腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
2.有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
3.病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
4.不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080502/crm0805021423026-n1.htm
■せこい!船場吉兆 食べ残しの天ぷら、アユ塩焼きを別の客に
2008.5.2 21:21
このニュースのトピックス:不祥事
会見で苦渋の表情で頭を下げる船場吉兆の山中啓司料理長=2日午後7時15分、大阪市中央区の船場吉兆(頼光和弘撮影) 牛肉の産地を偽装表示していた高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)が、本店の料亭部門で客が残した天ぷらやアユの塩焼きなどの料理をいったん回収し、別の客に提供していたことが2日、分かった。料亭経営を取り仕切っていた当時の湯木正徳前社長(74)の指示で昨年11月の営業休止前まで常態化していたという。大阪市保健所も同日、「モラル上あってはならないこと」として食品衛生法に基づき、本店の立ち入り調査を行った。事実関係を確認したうえで行政指導する方針という。
一方、九州産牛肉を但馬牛などと偽って販売した偽装事件について、府警は、表示変更のコストを節約するために偽装を継続したとみて、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で湯木前社長と長男の喜久郎前取締役(45)らの書類送検に向け、詰めの捜査を急いでいる。
関係者の証言によると、使い回しは、本店の調理場で、仲居が客席から下げてきた器を回収。客がはしを付けた料理は調理人が廃棄するが、はしを付けずに残った料理の一部はいったんトレーなどに移し替え、器に盛り付け直して別の客に提供していたという。
使い回されていたのは、アユの塩焼き、ゴボウをうなぎで包んだ「八幡巻き」、エビに魚のすり身を塗って蒸した「えびきす」など。天ぷらは揚げ直して出すこともあった。さらに手付かずの刺し身のつまも出し直していた。
接待の宴席などでは、比較的食事に手をつけない接待側の客に使い回しの料理を出していたといい、元従業員は「先輩の調理人から『使えるものはすべて使う』と指示され、残った料理をえり分けていた。1人数万円の料金を取っていた高級料亭として恥ずかしい」と話している。
これらの使い回しについては、府警も一連の捜査の過程で事情を把握しているという。
船場吉兆の代理人弁護士は、使い回しを認めたうえで「お客さまに大変申し訳ない」と謝罪。「(1月の)営業再開後は一切やっていない」と説明している。
食品衛生法は、腐敗などで健康を損なう恐れがある食品を販売することを禁じているが、使い回しに関する規定はないという。市保健所は「健康被害がなければ法的な責任は問えないが、食に携わる事業者としてあってはならない」と話しており、同社の関係者から詳しく事情を聴いている。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080503ddm041040064000c.html?inb=yt
■船場吉兆:残った料理、別の客に アユ塩焼きなど--大阪市保健所が立ち入り
◇営業自粛前まで「もったいない」と
高級料亭「船場吉兆」(大阪市)が客の残したアユの塩焼きなど料理6種類を捨てずに別の客に回していたとして、大阪市保健所は2日、本店を立ち入り調査をした。船場吉兆側は「昨年11月の営業自粛前まで使い回しをしていた」と認めているという。食品衛生法には問われないものの、保健所は「健康被害を招きかねず、今後、使い回しはあってはならない」と口頭で指導した。【久木田照子】
保健所の調査では、使い回していた料理は、アユ塩焼き▽稚アユ素揚げ▽ゴボウをウナギで巻いた「八幡巻き」▽エビのすり身とキスを合わせた「エビキス」▽サーモンの焼き物▽刺し身の添え物のゼラチン--の計6種。本店で客が増えた時に使い回しをしており、添え物以外は再加熱していたという。
船場吉兆は「今年1月の営業再開後はしていない」と説明。取締役の山中啓司料理長(47)は保健所に対し「当時は社長の言うことを100%聞かざるを得なかったので、不適切と思いつつも、応じていた」と話しているという。
◇「指示断れず」料理長認める
「まだきれいなものを、もったいない精神と言いますか、見るからに使えそうなものであれば、足りなくなった時、お出ししたりした」。大阪市保健所が調査に入った後、山中料理長は報道陣の取材に応じ、こう釈明した。「社長の指示は断れなかったのか」という質問には、「社員という立場で。情けない話ですが……」とうつむいた。
使い回しの頻度は「2週間に1度程度くらいか」と言葉を濁した。「(食材の)数が1、2本足りなくなった時に、そういうことがあったと記憶している。お客様に出した状態のままで調理場に下がってきた時のみ、状態を見極め使い回しをした」と客が手を付けてない料理だけ使い回していた点を強調。「調理場の人間はみんな知っていた」と話した。
船場吉兆を巡る不祥事は昨年9月に発覚。その後、今年1月に民事再生法の適用を申請して、再出発を図っているが、今回の使い回しはこれまで一切明らかにしていなかった。
山中料理長は今年1月、旧経営陣辞任後の新体制で取締役に就任していた。
毎日新聞 2008年5月3日 東京朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080509-00000012-maiall-soci
■<船場吉兆>アユは二度揚げ、刺身のツマは洗う……使いまわし手口明らかに
5月9日13時16分配信 毎日新聞
報道陣の質問に応じる船場吉兆博多店の河合元子店長=福岡市博多区の船場吉兆博多店で2008年5月8日午前10時56分、金澤稔撮影
老舗料亭・船場吉兆(大阪市)の博多店(福岡市博多区)と天神店(同市中央区、現在は閉店)が客の食べ残しの食材(延べ9品目)を使い回していた問題で、具体的な手口が8日明らかになった。「アユ揚げ」は湯木正徳・前社長の指示で二度揚げされたほか、刺し身のツマはパート従業員が洗い、造り場(調理場)に持参していたという。博多店の河合元子店長は「鮮度が良いのは原則的に使い回していた。刺し身のツマについては店の多くの従業員が知っていた」と述べ、使い回しが常態化していた様子が浮かび上がった。
【関連図】 船場吉兆博多店での使い回しの手口の詳細
河合店長が8日、博多区保健福祉センターに提出した報告書によると、博多店の使い回しは99年3月のオープン直後から、閉店した天神店も同じく04年3月から行っていた。使い回した品目は、博多店が▽金時ニンジン▽ウド▽ボウフウ▽オオバ▽わさび▽刺し身▽アユのおどり場げの7品。天神店は金時ニンジンとボウフウの2品だったという。
報告書作成のため、博多店は辞めた店員も含めて聞き取り調査したという。河合店長は「実際に刺し身のツマを洗ったり、前社長の指示でアユを揚げ直すなどした人がいた」と話す一方、「私自身は見ていません」と関与していないことを強調した。今後の経営については「本社からの回答を待つのみです」と話した。【鈴木実穂】
女将というか現社長の湯木佐知子さんが「『食べ残し』ではなく『手付かず』の… 」とでも言おうものなら
「ちょっと箸でふれたかもしれないでしょ、なぜ手をつけていないとわかるんですか!」と記者の厳しい指摘が飛んでくる。
町を行く会社員たちも「あれはないよね」と口にしている。
気の強そうな女将も悪役としてはまっているのかもしれない。
伍代夏子がうるうると涙しながら頭下げていたら、これほど激しく全否定されることもなかったかもしれない。
「高級料亭」で、「衛生上問題のある行為」「客を欺く行為」や「けち臭い行為」を行っていたから、非難されているのだろうか。
もし、「庄や」や「白木屋」や「餃子の王将」や「デニーズ」で青ジソや煮物や炒め物の使いまわしをやっていても、これほどの非難は受けなかったのではないだろうか。
「信頼性が高くあるべき店」が、賞味期限偽装で大きく評判を落とし、さらに信頼性の低いことをやっていたことが明らかになり、炎上し、朽ち果てようとしている。
だが、船場吉兆が全否定される必要もないのではないだろうか。
まず、船場吉兆を全否定する人たちの言い分は、多分に感情的、雰囲気的、情緒的であることが多い。
「私たちはそのような行為がなぜ許されないと思うのか」
「店はなぜそのような行為をおこなってしまったのか」
「行政は今後どのような備えをすればよいのか」
などといったことを冷静に分析してもよいのではないだろうか。
吉兆をつぶすことが問題の解決につながると考えるのは、理屈を無視した「臭いものに蓋」のひとつのパターンでもある。
物事の構造を解き明かすことなくイメージや印象で何かを否定するムーブメントは、成熟していない社会で度々見られる。
戦争の発生するメカニズムも知らずに戦争に反対するような人たちは、戦争を起こす側にもまわりやすい。
戦争を起こす人たちの攻撃性と、戦争反対を叫ぶ人たちの攻撃性は紙一重。
正しいと思うことをするのは心地よいが、堂々巡りから脱していない行為であることも多い。
何かを叩かなくても、物事を変えることはできる。
それでも、「絶対に船場吉兆がわるい。反省してない。あんなのつぶれてしまえばいい」と言う人は多いだろう。
だが、「具体的にどのような行為が許されないことなのですか。何が罪なのですか」と聞けば、法律的、あるいは社会学的に答えられる人はどのくらいいるだろう。
第一、船場吉兆は何か法律違反をしたのだろうか。
商品の賞味期限を偽装したことも、何か法律に触れただろうか。
法律に触れていないことなのに絶対にいけないと言うのは、個人的な価値観を押し付ける傲慢な行為ではないだろうか。
刺身や青ジソやパセリを使いまわしするのは、何か法律に違反するだろうか。
食品衛生法違反になるのであれば、きちんと法的機関が判断し、船場吉兆を法的に罰すればよいのではないだろうか。
立ち入り検査をした保健所の人は「健康被害がなければ法的な責任は問えないが、食に携わる事業者としてあってはならない」と言っている。
法的な責任は問えないのに、どういった権限で「食に携わる事業者としてあってはならない」と言えるのだろうか。
周囲の雰囲気に流されず、法的根拠を明確にしていただければありがたい。
法的根拠のない行動が黙認されるのは社会的に危険なことだ。
また、おそらく全国の居酒屋やレストランで全く残り物の使い回しをやったことがない、というお店は、開店直後の店を除いてごくごく少数なのではないだろうか。
私は刺身の青ジソもツマも大好きだから全部食べる。
だが、たまに「これは使いまわしかな?」と感じるような、どことなく新鮮さを感じないものに当たるときもある。
新大久保の韓国料理屋のランチで突き出しを食べていると、明らかにこれはきのうのおつまみの残りをあえて作ったな、という小皿があるときもある。
使い回しが許されないのであれば、使い回しを許さない法律を作り、きちんと全ての店で取締りを行って筋を通してほしい。
そして、使い回しを許さない人々は、使い回しを行わないことによって生じる大量の生ごみの処理については何か提言をしないのだろうか。
衛生を重視するのであれば、もったいない行為も黙認されるべきだと割り切っているのだろうか。
私は船場吉兆に行ったこともなく、船場吉兆に期待しているわけではないが、再オープンしたら、一度食べに行ってみたいと思う。
きっと、使い回しが明らかになっていない有名店の油断した料理に比べ、船場吉兆の料理は緊張感に満ちたものとなっているのではないだろうか。
船場吉兆が今回の事件を糧とし、生まれ変わって躍進されることを期待する。
※食品衛生法
http://www.houko.com/00/01/S22/233.HTM#s11
第2章 食品及び添加物
第5条 販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。以下同じ。)の用に供する食品又は添加物の採取、製造、加工、使用、調理、貯蔵、運搬、陳列及び授受は、清潔で衛生的に行われなければならない。
第6条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
1.腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
2.有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
3.病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
4.不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080502/crm0805021423026-n1.htm
■せこい!船場吉兆 食べ残しの天ぷら、アユ塩焼きを別の客に
2008.5.2 21:21
このニュースのトピックス:不祥事
会見で苦渋の表情で頭を下げる船場吉兆の山中啓司料理長=2日午後7時15分、大阪市中央区の船場吉兆(頼光和弘撮影) 牛肉の産地を偽装表示していた高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)が、本店の料亭部門で客が残した天ぷらやアユの塩焼きなどの料理をいったん回収し、別の客に提供していたことが2日、分かった。料亭経営を取り仕切っていた当時の湯木正徳前社長(74)の指示で昨年11月の営業休止前まで常態化していたという。大阪市保健所も同日、「モラル上あってはならないこと」として食品衛生法に基づき、本店の立ち入り調査を行った。事実関係を確認したうえで行政指導する方針という。
一方、九州産牛肉を但馬牛などと偽って販売した偽装事件について、府警は、表示変更のコストを節約するために偽装を継続したとみて、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で湯木前社長と長男の喜久郎前取締役(45)らの書類送検に向け、詰めの捜査を急いでいる。
関係者の証言によると、使い回しは、本店の調理場で、仲居が客席から下げてきた器を回収。客がはしを付けた料理は調理人が廃棄するが、はしを付けずに残った料理の一部はいったんトレーなどに移し替え、器に盛り付け直して別の客に提供していたという。
使い回されていたのは、アユの塩焼き、ゴボウをうなぎで包んだ「八幡巻き」、エビに魚のすり身を塗って蒸した「えびきす」など。天ぷらは揚げ直して出すこともあった。さらに手付かずの刺し身のつまも出し直していた。
接待の宴席などでは、比較的食事に手をつけない接待側の客に使い回しの料理を出していたといい、元従業員は「先輩の調理人から『使えるものはすべて使う』と指示され、残った料理をえり分けていた。1人数万円の料金を取っていた高級料亭として恥ずかしい」と話している。
これらの使い回しについては、府警も一連の捜査の過程で事情を把握しているという。
船場吉兆の代理人弁護士は、使い回しを認めたうえで「お客さまに大変申し訳ない」と謝罪。「(1月の)営業再開後は一切やっていない」と説明している。
食品衛生法は、腐敗などで健康を損なう恐れがある食品を販売することを禁じているが、使い回しに関する規定はないという。市保健所は「健康被害がなければ法的な責任は問えないが、食に携わる事業者としてあってはならない」と話しており、同社の関係者から詳しく事情を聴いている。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080503ddm041040064000c.html?inb=yt
■船場吉兆:残った料理、別の客に アユ塩焼きなど--大阪市保健所が立ち入り
◇営業自粛前まで「もったいない」と
高級料亭「船場吉兆」(大阪市)が客の残したアユの塩焼きなど料理6種類を捨てずに別の客に回していたとして、大阪市保健所は2日、本店を立ち入り調査をした。船場吉兆側は「昨年11月の営業自粛前まで使い回しをしていた」と認めているという。食品衛生法には問われないものの、保健所は「健康被害を招きかねず、今後、使い回しはあってはならない」と口頭で指導した。【久木田照子】
保健所の調査では、使い回していた料理は、アユ塩焼き▽稚アユ素揚げ▽ゴボウをウナギで巻いた「八幡巻き」▽エビのすり身とキスを合わせた「エビキス」▽サーモンの焼き物▽刺し身の添え物のゼラチン--の計6種。本店で客が増えた時に使い回しをしており、添え物以外は再加熱していたという。
船場吉兆は「今年1月の営業再開後はしていない」と説明。取締役の山中啓司料理長(47)は保健所に対し「当時は社長の言うことを100%聞かざるを得なかったので、不適切と思いつつも、応じていた」と話しているという。
◇「指示断れず」料理長認める
「まだきれいなものを、もったいない精神と言いますか、見るからに使えそうなものであれば、足りなくなった時、お出ししたりした」。大阪市保健所が調査に入った後、山中料理長は報道陣の取材に応じ、こう釈明した。「社長の指示は断れなかったのか」という質問には、「社員という立場で。情けない話ですが……」とうつむいた。
使い回しの頻度は「2週間に1度程度くらいか」と言葉を濁した。「(食材の)数が1、2本足りなくなった時に、そういうことがあったと記憶している。お客様に出した状態のままで調理場に下がってきた時のみ、状態を見極め使い回しをした」と客が手を付けてない料理だけ使い回していた点を強調。「調理場の人間はみんな知っていた」と話した。
船場吉兆を巡る不祥事は昨年9月に発覚。その後、今年1月に民事再生法の適用を申請して、再出発を図っているが、今回の使い回しはこれまで一切明らかにしていなかった。
山中料理長は今年1月、旧経営陣辞任後の新体制で取締役に就任していた。
毎日新聞 2008年5月3日 東京朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080509-00000012-maiall-soci
■<船場吉兆>アユは二度揚げ、刺身のツマは洗う……使いまわし手口明らかに
5月9日13時16分配信 毎日新聞
報道陣の質問に応じる船場吉兆博多店の河合元子店長=福岡市博多区の船場吉兆博多店で2008年5月8日午前10時56分、金澤稔撮影
老舗料亭・船場吉兆(大阪市)の博多店(福岡市博多区)と天神店(同市中央区、現在は閉店)が客の食べ残しの食材(延べ9品目)を使い回していた問題で、具体的な手口が8日明らかになった。「アユ揚げ」は湯木正徳・前社長の指示で二度揚げされたほか、刺し身のツマはパート従業員が洗い、造り場(調理場)に持参していたという。博多店の河合元子店長は「鮮度が良いのは原則的に使い回していた。刺し身のツマについては店の多くの従業員が知っていた」と述べ、使い回しが常態化していた様子が浮かび上がった。
【関連図】 船場吉兆博多店での使い回しの手口の詳細
河合店長が8日、博多区保健福祉センターに提出した報告書によると、博多店の使い回しは99年3月のオープン直後から、閉店した天神店も同じく04年3月から行っていた。使い回した品目は、博多店が▽金時ニンジン▽ウド▽ボウフウ▽オオバ▽わさび▽刺し身▽アユのおどり場げの7品。天神店は金時ニンジンとボウフウの2品だったという。
報告書作成のため、博多店は辞めた店員も含めて聞き取り調査したという。河合店長は「実際に刺し身のツマを洗ったり、前社長の指示でアユを揚げ直すなどした人がいた」と話す一方、「私自身は見ていません」と関与していないことを強調した。今後の経営については「本社からの回答を待つのみです」と話した。【鈴木実穂】
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