ABDARC(アブダーク)という団体があるらしい。
「ABDARC(アブダーク)は、全国の被差別の地名や個人情報をネットで公開するなどしている鳥取ループ(示現舎)に対する裁判を支援し、問題の基礎知識などを提供するために設立された有志グループ」とのこと。
「Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center」の頭文字をとって「ABDARC(アブダーク)」なのだそうだ。
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
ただ、この団体の名称にちょっと違和感がある。
一般的に、「Anti-○○ Discrimination」と言えば、「○○を排斥する差別」と訳すことが多いのではないだろうか。「反○○差別」ではない。
Anti-Muslim Discrimination は、「イスラム教徒に敵対する差別」。
Anti-Black Discrimination は、「黒人を排斥する差別」。
だから、Anti-Buraku Discrimination は、「ブラクに敵対する差別」となる。
「ブラク差別に対抗」と言いたかったのかもしれないけど、それだったら「Anti-Discrimination for Buraku」のほうがまだ通じるかもしれない。
とにかく、「Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center」という名前では、
「ブラクを排斥する差別 行動資料センター」という意味になってしまうのではないかと思う。
差別に反対する姿勢がなかなか読み取れない。
ABDARC(アブダーク)の人たちは、団体名を変更することも検討してもいいのではないだろうか。
ただ、この団体の考えがよくわからない。公式HPのQAの最初に「Q.問題ってなに?」とあるけど、「ただいま準備中です」となっている。
https://www.abdarc.net/q-a/
残念ながら、差別に反対していても、差別の定義を把握していないという人は多い。
あたかも、差別というモノや仕組みが存在していて、それを消滅させれば問題は解決できる、と認識している人が少なくない。
だけど、「何者かを罪人視し、価値がないものと認識し、否定し、排除し、見下す」という意識には、差別者とまったく同じ構造が見てとれる。
(鳥取ループ?という人は、批判者たちから犯罪者・異常者のように認識され、見下され、否定・排除されているのかもしれない)
悪人正機説でもないが、差別に反対する人たちは、まずは自分たちも差別的な意識から逃れられてないということを自覚しなくては、いつまでたっても差別を解消することなどはできない。
それに気づかずいくら反差別運動に関わっても、根本的な問題は解消されないまま表面だけかき回して時間が過ぎて行く。
ABDARC(アブダーク)の人たちは、自分たちが正しいと思うことを続けていれば充実感が得られるかもしれないけど、残念ながらその思考パターンでは、世の中の差別を解消することは、10年20年経ってもむずかしいだろう。
上智新聞の原木風歌(ハラキフウガ)記者は、公開授業にやってきた鳥取ループ氏に対して、「差別者」「差別に依存し、差別に居場所を見つけているのではないか」と決めつけて記事化した。
このような、意見や認識の異なる対立相手の価値を認めず、論理的な解説を放棄して一方的に見下す姿勢こそが「差別」の構造を持つと認識する必要がある。
そうでなければ、原木風歌記者は、「正義(という名を借りた差別)に依存し、見下しや否定(といった差別)に居場所を見つけているのではないか」と言われてしまうのではないかと危惧する。
<参考>
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
■ABDARC(アブダーク)
(Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center)
全国の被差別の地名や関係者の個人情報をインターネット上に公開している鳥取ループ(示現舎)。
彼らにNOを突き付けるために起こされた裁判情報を中心に、 問題の基礎知識などを提供するためにABDARC(鳥取ループ裁判支援サイト)は、設立されました。
お問合せ:検索「ABDARC」(問合せフォーム)https://www.abdarc.net/contact/
http://www.asahi.com/articles/ASK6V65S5K6TUTIL01S.html
■東京)問題・差別を語る公開授業 上智大
編集委員・北野隆一2017年6月27日03時00分
問題や差別の現状について語り合うイベント「私たちの問題」が25日、千代田区の上智大で開かれ、約220人が参加した。日本社会におけるさまざまなマイノリティー(少数者)について考える上智大の公開授業「立場の心理学~マジョリティーの特権を考える」の一環。
戦前の報告書「全国調査」にもとづく被差別の地名リストの復刻出版は「差別を助長する悪質な行為」だとして、解放同盟や被差別出身者が川崎市の出版社や経営者らを相手取り、出版禁止などを求め東京地裁に提訴している。この日のイベントは、裁判の原告らでつくるグループ「ABDARC」が、問題について学んでもらう場になればと企画した。
「結婚差別の社会学」の著書がある斎藤直子・大阪市立大特任准教授は「差別は現代の問題。差別される側ではなく差別する側の問題として構成すべきだ」と説明。川口泰司・山口県人権啓発センター事務局長は「最近起きているのは、の地名や出身者を暴いてネットで公開する『アウティング』。当事者が自ら出身を名乗る『カミングアウト』とは決定的に違う。情報化の進展で差別が深刻化している」と訴えた。(編集委員・北野隆一)
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
■差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~ 当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。
2017-05-16
「私たちの問題」~上智大学で公開講座~
私たちの問題のイベントが6月上智大学で開催されます。
東京近郊の方はぜひ!「問題の今」について学べます。
◆ Lecture「初めての問題」
齋藤直子(大阪市立大学特任准教授)
「ネットと差別」
川口泰司(山口人権啓発センター)
◆Talk Event 「私とと反差別」
【ゲスト】 三木幸美(とよなか国際交流協会)
上川多実(BURAKU HERITAGE)
C (BURAKU HERITAGE)
李 信恵(ライター)
ゆーすけ(C.R.A.C)
【コメンテーター】香山リカ(精神科医)
【コーディネーター】内田龍史(尚絅学院大学准教授)
https://www.sophiatimes.info/
上智大学新聞 2017年(平成29年)7月1日 第548号
■差別を考える「同調圧力に抵抗を」
『Lecture & Talk Event 私たちの問題』が本学の開講科目「立場の心理学~マジョリティの特権を考える」の公開授業として、6月25日に6-301で開催された。
まず第一部では、問題の歴史といった基本的な事項を学ぶ講義に加え、ネットと差別に関する講演が行われた。山口県人権啓発センターの川口泰司氏は、出身者の名前や住所が載った「地名年鑑」がネット公開されていることを取り上げ、「差別の助長であり、差別の扇動だ」と問題視した。
第二部は、「私とと反差別」というテーマでトークショーが行われた。差別事件の一例である大量差別はがき事件の被害者の女性C氏や、民族と女性の複合差別についての裁判で勝訴した在日コリアンの李信恵氏、ゲイ当事者のゆーすけ氏など様々なバックグラウンドを持つ5人が登壇。ゲストスピーカーとして香山リカ氏も加わり、各々の立場から見た「に対しての差別」をどう解決していくか、またはどのように正しく伝達していくかに関して熱い討論が交わされた。
その中でゆーすけ氏は「同調圧力に少しでも抵抗してほしい」と参加者に呼び掛けた。C氏は「問題で苦しんでいる人が周囲にいるかもしれないと、自分のことのように考えてほしい」と話し、登壇者が思い思いの言葉で差別の解消を訴えた。
なお、法廷闘争中の登壇者もいることから、授業の趣旨として、あらかじめ「ヘイトスピーチや差別目的の参加、裁判係争関係者の参加を断る」張り紙をしていた。しかし開始直後、裁判係争の当事者が出席していることが判明。主催者が繰り返し「協力してください」と退席を要請したが、机にしがみついて反発し、対応に苦慮するという場面もあった。
記者の目
イベントでは差別者が退席を命じられ、反発した。その後香山リカ氏が「どれほど説得しても差別をやめない人を見ていると、嗜癖(依存)を連想することさえある」と発言した。会場にいた彼も差別に依存し、差別に居場所を見つけているのではないかと記者は感じた。
差別者を増やさないためにも、私たち若い世代は問題に向き合う必要があるだろう。
(原木風歌)
「ABDARC(アブダーク)は、全国の被差別の地名や個人情報をネットで公開するなどしている鳥取ループ(示現舎)に対する裁判を支援し、問題の基礎知識などを提供するために設立された有志グループ」とのこと。
「Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center」の頭文字をとって「ABDARC(アブダーク)」なのだそうだ。
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
ただ、この団体の名称にちょっと違和感がある。
一般的に、「Anti-○○ Discrimination」と言えば、「○○を排斥する差別」と訳すことが多いのではないだろうか。「反○○差別」ではない。
Anti-Muslim Discrimination は、「イスラム教徒に敵対する差別」。
Anti-Black Discrimination は、「黒人を排斥する差別」。
だから、Anti-Buraku Discrimination は、「ブラクに敵対する差別」となる。
「ブラク差別に対抗」と言いたかったのかもしれないけど、それだったら「Anti-Discrimination for Buraku」のほうがまだ通じるかもしれない。
とにかく、「Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center」という名前では、
「ブラクを排斥する差別 行動資料センター」という意味になってしまうのではないかと思う。
差別に反対する姿勢がなかなか読み取れない。
ABDARC(アブダーク)の人たちは、団体名を変更することも検討してもいいのではないだろうか。
ただ、この団体の考えがよくわからない。公式HPのQAの最初に「Q.問題ってなに?」とあるけど、「ただいま準備中です」となっている。
https://www.abdarc.net/q-a/
残念ながら、差別に反対していても、差別の定義を把握していないという人は多い。
あたかも、差別というモノや仕組みが存在していて、それを消滅させれば問題は解決できる、と認識している人が少なくない。
だけど、「何者かを罪人視し、価値がないものと認識し、否定し、排除し、見下す」という意識には、差別者とまったく同じ構造が見てとれる。
(鳥取ループ?という人は、批判者たちから犯罪者・異常者のように認識され、見下され、否定・排除されているのかもしれない)
悪人正機説でもないが、差別に反対する人たちは、まずは自分たちも差別的な意識から逃れられてないということを自覚しなくては、いつまでたっても差別を解消することなどはできない。
それに気づかずいくら反差別運動に関わっても、根本的な問題は解消されないまま表面だけかき回して時間が過ぎて行く。
ABDARC(アブダーク)の人たちは、自分たちが正しいと思うことを続けていれば充実感が得られるかもしれないけど、残念ながらその思考パターンでは、世の中の差別を解消することは、10年20年経ってもむずかしいだろう。
上智新聞の原木風歌(ハラキフウガ)記者は、公開授業にやってきた鳥取ループ氏に対して、「差別者」「差別に依存し、差別に居場所を見つけているのではないか」と決めつけて記事化した。
このような、意見や認識の異なる対立相手の価値を認めず、論理的な解説を放棄して一方的に見下す姿勢こそが「差別」の構造を持つと認識する必要がある。
そうでなければ、原木風歌記者は、「正義(という名を借りた差別)に依存し、見下しや否定(といった差別)に居場所を見つけているのではないか」と言われてしまうのではないかと危惧する。
<参考>
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
■ABDARC(アブダーク)
(Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center)
全国の被差別の地名や関係者の個人情報をインターネット上に公開している鳥取ループ(示現舎)。
彼らにNOを突き付けるために起こされた裁判情報を中心に、 問題の基礎知識などを提供するためにABDARC(鳥取ループ裁判支援サイト)は、設立されました。
お問合せ:検索「ABDARC」(問合せフォーム)https://www.abdarc.net/contact/
http://www.asahi.com/articles/ASK6V65S5K6TUTIL01S.html
■東京)問題・差別を語る公開授業 上智大
編集委員・北野隆一2017年6月27日03時00分
問題や差別の現状について語り合うイベント「私たちの問題」が25日、千代田区の上智大で開かれ、約220人が参加した。日本社会におけるさまざまなマイノリティー(少数者)について考える上智大の公開授業「立場の心理学~マジョリティーの特権を考える」の一環。
戦前の報告書「全国調査」にもとづく被差別の地名リストの復刻出版は「差別を助長する悪質な行為」だとして、解放同盟や被差別出身者が川崎市の出版社や経営者らを相手取り、出版禁止などを求め東京地裁に提訴している。この日のイベントは、裁判の原告らでつくるグループ「ABDARC」が、問題について学んでもらう場になればと企画した。
「結婚差別の社会学」の著書がある斎藤直子・大阪市立大特任准教授は「差別は現代の問題。差別される側ではなく差別する側の問題として構成すべきだ」と説明。川口泰司・山口県人権啓発センター事務局長は「最近起きているのは、の地名や出身者を暴いてネットで公開する『アウティング』。当事者が自ら出身を名乗る『カミングアウト』とは決定的に違う。情報化の進展で差別が深刻化している」と訴えた。(編集委員・北野隆一)
http://tubame-jiro.hatenablog.com/entry/2017/05/16/224949
■差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~ 当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。
2017-05-16
「私たちの問題」~上智大学で公開講座~
私たちの問題のイベントが6月上智大学で開催されます。
東京近郊の方はぜひ!「問題の今」について学べます。
◆ Lecture「初めての問題」
齋藤直子(大阪市立大学特任准教授)
「ネットと差別」
川口泰司(山口人権啓発センター)
◆Talk Event 「私とと反差別」
【ゲスト】 三木幸美(とよなか国際交流協会)
上川多実(BURAKU HERITAGE)
C (BURAKU HERITAGE)
李 信恵(ライター)
ゆーすけ(C.R.A.C)
【コメンテーター】香山リカ(精神科医)
【コーディネーター】内田龍史(尚絅学院大学准教授)
https://www.sophiatimes.info/
上智大学新聞 2017年(平成29年)7月1日 第548号
■差別を考える「同調圧力に抵抗を」
『Lecture & Talk Event 私たちの問題』が本学の開講科目「立場の心理学~マジョリティの特権を考える」の公開授業として、6月25日に6-301で開催された。
まず第一部では、問題の歴史といった基本的な事項を学ぶ講義に加え、ネットと差別に関する講演が行われた。山口県人権啓発センターの川口泰司氏は、出身者の名前や住所が載った「地名年鑑」がネット公開されていることを取り上げ、「差別の助長であり、差別の扇動だ」と問題視した。
第二部は、「私とと反差別」というテーマでトークショーが行われた。差別事件の一例である大量差別はがき事件の被害者の女性C氏や、民族と女性の複合差別についての裁判で勝訴した在日コリアンの李信恵氏、ゲイ当事者のゆーすけ氏など様々なバックグラウンドを持つ5人が登壇。ゲストスピーカーとして香山リカ氏も加わり、各々の立場から見た「に対しての差別」をどう解決していくか、またはどのように正しく伝達していくかに関して熱い討論が交わされた。
その中でゆーすけ氏は「同調圧力に少しでも抵抗してほしい」と参加者に呼び掛けた。C氏は「問題で苦しんでいる人が周囲にいるかもしれないと、自分のことのように考えてほしい」と話し、登壇者が思い思いの言葉で差別の解消を訴えた。
なお、法廷闘争中の登壇者もいることから、授業の趣旨として、あらかじめ「ヘイトスピーチや差別目的の参加、裁判係争関係者の参加を断る」張り紙をしていた。しかし開始直後、裁判係争の当事者が出席していることが判明。主催者が繰り返し「協力してください」と退席を要請したが、机にしがみついて反発し、対応に苦慮するという場面もあった。
記者の目
イベントでは差別者が退席を命じられ、反発した。その後香山リカ氏が「どれほど説得しても差別をやめない人を見ていると、嗜癖(依存)を連想することさえある」と発言した。会場にいた彼も差別に依存し、差別に居場所を見つけているのではないかと記者は感じた。
差別者を増やさないためにも、私たち若い世代は問題に向き合う必要があるだろう。
(原木風歌)