波打ち際の考察

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波屋山人

韓流ブームを批判する人は、ジャニーズも批判しよう

2011-08-07 04:26:50 | Weblog
何年も前から、中国でもベトナムでもミャンマーでも、
韓国のドラマや音楽が重要なテレビコンテンツになっている。
アジア各国において韓国製品や韓国資本の進出は著しい。
海外を訪れると、現地の人から「コリアン?」と言われることが増えた。
韓国のほうが日本よりも身近に感じられる存在になっているのだろう。

日本をとりまく状況に意識的でない人も多いのかもしれないけど
韓国や中国は、さまざまな場面で日本に取って代わってきている。
工業製品も商社も、テレビ番組もアイドルもファッションも、
アジア各国でも日本の存在は小さくなり、得ていた地位を失っている。
韓国は、輸出こそが生き残る道だと判断し、国策として海外進出を強化している。

日本は盛り返しを試みるのか、鎖国的状況をめざすのか、
あるいは特に対策を考えずジリ貧な縮小傾向を維持するのか、
政府や国民はどのように判断するだろう。

もしかしたら、日本では国民意識が強くないから、
日本がどうなろうとも、自分のことと同一視はしないのかもしれない。
とくに路線を定めることなく、流れにまかせてその中でできるかぎりの努力だけをするのかもしれない。

日本列島では住民の過半数が稲作に従事する時代が長く続いた。
稲作においては、毎年決まった時期に決まった作業を行うことが求められる。
天候によって対応した作業を行うことや、隣人たちと協力して集中的な作業をすることも必要だ。

だから、ずっと同じ場所にとどまることや、周囲の空気を読んで協調することに親しんでいた。
日照りや水害などで作物ができなかった場合は、あっさりあきらめて翌年の作業に気持ちを切り替えた。
鎖国をしていた時代は長く、一族で従事する仕事が固定されていた時期も長かったから、時代の変化に機敏に対応して新しい進路に活路を見出すことには慣れていないのかもしれない。

ただ、日本にはいいコンテンツもたくさんある。
お酒ひとつとっても、日本のお酒は実に手の込んだ丁寧なつくりの繊細なものが多い。
工芸品も工業製品も、すぐれたデザインや性能を持つものは多い。
値段や派手さでは負けるかもしれないけど、地道に努力すれば評価してくれる人だっているはずだ。

日本にはあまり資源も哲学も交渉力も攻撃力もない。
付加価値のある工業製品とか、緻密な手工芸品とか、独創的な芸術作品とかアニメとか、価値のあるものを愚鈍に作り続けて、職人とか芸術家とか研究者として、世界の人々に認めてもらうのが生き残る道かもしれない。

そういったことが念頭にあると、日本のテレビにおいて韓国のドラマや音楽が大量にオンエアされていることを不快に感じる人は、価値あるコンテンツを産み出して対抗することを考えるべきではないだろうか。

残念ながら、キムヨナの演技は浅田舞より大人っぽいのは否定できないし、
少女時代のダンスは日本のアイドルグループより完成度が高く、ダイナミックだ。
日本を応援したい気持ちはあるけど、キムヨナを否定したところで、自分の立場が守られるわけではない。
キムヨナや少女時代を否定する暇があれば、彼女たちを超える魅力を生み出す努力をしたほうが、生産的だろう。

何年か前、少女時代や東方神起が日本デビューする前から新大久保の韓国料理屋で彼女たちのライブ映像などを見ていた。
ぼくはクッパを食べながら「このスタイルとダンスはすごいな。アメリカのコピーっぽいけど、日本のアイドルは太刀打ちできないな」などと感じていた。
最近は若い女性たちの間にも韓流グループファンが増えている。
やらせじゃないかという話も聞くけど、実際に知り合いの女性が東方神起などにのめり込んでいるのを見ると、たしかに一部では人気なんだということを実感する。

韓国グループにばかり席巻されて残念だけど、韓国のアイドルグループはダンスも歌もかっこいい。
ドラマもわかりやすくてウケやすい。
それを認めたくないからといって拒絶しても、世界市場では彼らのほうが認められるばかりだし、日本のコンテンツが成長するわけでもない。

アメリカのコピーのようなダンスばかりがダンスではないと思うし、
わかりやすいドラマばかりがドラマじゃないと思うけど、少なくない人たちにウケているのは確かだ。

今日8/7(日)には、韓国コンテンツばかり大量に放映しているフジテレビに対するデモが企画されているとかなくなったとか。
たしかに、フジテレビは安い海外コンテンツを取り入れて、業績を維持しようとしている。
テレビ局が広告会社や業者などとつるんで流行を生み出すという手法も以前からあるけど、最近はテレビや新聞といったメディアの地位が低下し、ネット世論が強くなってきたから、メディアの露骨な利益誘導は反発が表面化しやすいのだろう。

ただ、反日的で独善的に見える韓国が気にくわなくて拒絶しても、何も問題は解決しない。
ほんとうに彼らの主張が不快なのであれば、きちんと英語や韓国語で世界に感情的ではない論理的な意見を発信すればいい。
ところが、韓国の主張に不満を持つ人の多くは、仲間内で不満を述べ合うだけで終わっている。外部に向って論理的に意見を述べる人は非常に少ない。
そんな人は、自分に都合のいいことばかり主張する人に負けてしまってもしかたがないだろう。

仲間内で韓国に対する文句を言うのは、成績もよく売り込みも上手な転校生に対する文句を仲間内で言い合うようなものかもしれない。
くやしくて転校生をいじめても学校に文句を言っても、不満は解消しない。
自分たちも勉強して、ウケ狙いもちょっとは考えるべきではないか。

韓国ブームの強力プッシュを続けるフジテレビに文句を言うのもいいけど、
それだったらふがいないジャニーズとかエイベックスにも文句を言うべきではないか。

とくにジャニーズ。ジャニーズに魅力を感じないから、韓国グループのほうを向く人も多いのだ。
ジャニーズ事務所のグループの振り付けは、サンチェさんという日本人振付師が長く担当しているらしいけど、ここにも問題がある。
ジャズダンスとかヒップホップとかいろんな要素が入っているのかもしれないけど、現代的な振り付けではない。
質感にとぼしく、日本舞踊か手話か何かか?というような小手先の動きを見せる。しかもメンバーで動きがばらばら。何を見せようとしているのか。

ジャニーズのダンスはがんばっているようにも見えるけど、雰囲気に乏しい。
ちゃかちゃか動いているけどいっぱいいっぱいという印象。
タメてるように見せても色っぽさはなくゆるい。
体幹にうねるような動きはなくて、表面的な小手先の動き。
忙しい動きには溌剌さや子どもっぽさが見られるけど、
深さや複雑さといった大人っぽさは感じない。

アメリカの流行をまねする必要はないけど、ジャニーズのダンスが独創的だとも思えない。
エイベックスなどにはアメリカの最先端のダンスを取り入れたグループもいくつかあって注目しているけど、なかなかブレイクしていない。韓流にくらべてもわるくないと思うけど、「転校生」みたいなインパクトがないせいかな。

それにしても、アイドルグループ終了の時代だと思っていたのに、いろんなグループが出てきて相乗効果でアイドルグループ市場が活性化している。
万人に受ける権威や偶像やカリスマは存在しにくくなり
細分化された需要に対応したニッチなアイドルが生き延びると思っていたのに、
宣伝によっては、まだまだ人々に価値を共有させることができるということにおどろく。

ただ、テレビや新聞といったマスメディアが影響力を低下させ、ネットの市民メディアや個人発信の情報が影響力を強める傾向は変えられない。
フジテレビも、今のままの会社規模や売り上げを維持することはむずかしいだろう。
すぐれたコンテンツを地道に作ることを放棄し、安易に安いコンテンツを輸入してなんとか自分たちの高給を維持しようとするような姿勢では、コンテンツ提供者として信頼されなくなる。

しかしすでにテレビ局はコンテンツ制作者ではなくなっているのかもしれない。
コンテンツを作るのは制作会社。
テレビ局の存在意義って何なのだろうということが真剣に問われているのかもしれない。

まあ、それを言えば新聞社や出版社の存在意義もゆらいできている。
制作会社や通信社や編集プロダクションがあれば、各種のコンテンツは制作できる。
テレビ局も新聞社も出版社も、組織の維持にこだわるばかりでは、存在意義を失っていくだろう。


コメント (5)
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