波打ち際の考察

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波屋山人

日本国籍からの離脱

2011-01-09 18:17:25 | Weblog
ぼくは人と対立することを苦痛に感じるから、あまり人間関係に波風を立てようとは思わない。
何か言われると恥ずかしくて萎縮するから、周囲から奇異に見られることをしようとも思わない。
だけど、日本社会で当然とされている価値観とは異なった行動パターンを取ることは多い。

寝る時は小中学生の頃から北枕だし、(磁気の流れに沿っているだけだ)
通勤の定期券は利用しないし、(放浪者はルーティーンな生活から逸脱する)
お米がなくても食事に困らないし、(先祖は米が主食じゃなかったかも)
蕎麦はぼく流の食べ方があるし、(いい蕎麦は刺身のように食べる)
麺類を食べるとき音を立てないし、(おつゆを飛ばしたくない)
異常に歩くのが早いし、(最少の労力で最大の結果を出すのは効率的)
周囲の空気なんて読まないし、(ストレスがたまる。理解してほしいことは言ってほしい)
こっち来て、などというジェスチャーは欧米流だし、(あまりしないけど)
お寺で拝まないし、神社で手を合わせないし、(もともとは理にかなっているのかも)
パンツをはかないでジーンズをはいてそのまま外出することもあるし、
海外のビーチで全裸になるときもあるし、(人気のないとき)
お葬式帰りに清めの塩なんてまかないし、(お葬式はケガレなのか?)
結婚指輪もしないし、というか結婚て何だろうって感じだし、
腕時計もしないし、(というか持ってないし)
ティーンエイジャーの頃は共学だけどトータル5分も女性と話をしたことがないし、
両親がいなくても自分は存在しえたのではないかと観想したこともあるし、
もちろん、自分は日本人なのだろうか、日本人じゃなくてもいいのではないだろうかと考えたこともある。

普通の日本人はそんなことしないよ、と言われると「ぼく、日本人じゃないし」
と言うことだってある。

だけど、ほんとうは、ぼくは典型的な日本人でもある。
おそらく先祖は千年以上前から実家のあたりに住んでいた。
和服が似合いそうな外見だと言われ、外国に行くとすぐに日本人だとばれる。
親はベトナムとかフィリピンと言っても通じるかもしれない容姿なのに、
ぼくだけ薄っぺらい顔なのだ。

いくら歩き方やジェスチャーを変えても、ぼくの育った言語や行動パターンによって形成されたぼくの内面や外面は、外国人から見れば日本人に見えてしまうようだ。

ぼくはそんなにひねくれているわけでもないし、日本国政府や日本国民を遠ざけたい気持ちがあるわけでもないので、外国で「何人(なにじん)?」と言われたら日本人だと答える。
日本国籍を持っているし、日本の文化に影響を受けて行動パターンや判断基準を形成されていることは否定できない。

だけど、世の中には「日本人だと言われている」と答える人もいるらしい。
あなたはどこの国籍だと問われれば、通常は国名を答えるだろう。
人種名を問われれば、コーカソイド、ニグロイド、モンドロイドなどと答える。
民族名を問われれば、漢、タイ、ゲルマン、サーミなどと答える。

何人かと問われれば、民族名を答える人もいれば国名を答える人もいる。
ポーランド系ドイツ人もいれば、ドイツ系ルーマニア人、フィリピン系アメリカ人もいる。
日本系フィリピン人、コリア系日本人と言う人だっているだろう。

何人かと問われて「日本人だと言われています」と言うのは答えになっていない。
「まるで人ごとのような言い方だが、ではあなたは自分を何人だと思っているのですか、本当は何人なのですか」と問われてしまうかもしれない。
あるいは、何をこの人は言っているのだろうと不可解に感じて沈黙してしまうかもしれない。

「あなたは何人ですか」という質問は、
「あなたはあなたの所属する社会において何人だと認識されていますか」
という意味にもとらえられるのではないだろうか。
各国の人が集まった場で自己紹介するとき、神経質そうな日本人っぽい男が
「I’m “called” Japanese.(私は日本人だと言われています)」などと言うと、
「面倒なやつだなぁ、やっぱり日本人て変だな」と言われてしまうかもしれない。

在日外国人と異なり、日本では、自分が日本人だとか日本民族だといったことを意識したことのない日本国籍保持者が多い。
国家意識とか民族意識をもつと戦争につながるのではないかと恐れた人が、できるだけ教育の場でそういった意識に触れさせないようにしようとした影響もあるのかもしれない。

だが、海外に出て行けば必然的に自分が何人だと見られているか、何人として行動せざるを得ないか、自覚することになる。
自分の人種や民族、国籍を意識した上で、日本以外の国に好意や共感をいだいた場合は、日本国籍からの離脱も考えればいいのではないかと思う。

アメリカやフランスや中国やブラジルのように、他民族国家で日本人のような顔の人が多い国もある。
日本人は一度まじめに日本国籍を維持するか、離脱するか、ということを考えることがあってもいいのではないだろうか。
日本列島に生まれたからといってあたりまえのように自分を日本人だと規定する必要はない。自分の意志で、自分の国籍を選ぶことはできる。

ただ、日本政府や日本列島、日本語などに愛着も親近感もない人でも、ほんとうは日本に生まれ育った影響を強く受けている。
ジェスチャー、歩き方、話し方、考え方などの多くに日本人的なパターンが見られる。

おそらく、ぼくがこのブログで書いているような変な内容も、中国や韓国や欧米の人はあまり書かないだろう。
また、日本では、「日本人が周囲の国の人より生まれながらに優秀だということは全然ない」と言っても、「日本に生まれたからと言って生まれながらに日本人と思い込まなくてもいい」と言っても、「人のことを見下した発言をしない天皇陛下のような姿勢はすごい」と言っても、「朝鮮半島南部から九州にかけて分布していた倭族が、北方から来た民族に押し出されて日本列島に追いやられたのかもね」と言っても、発言を抹殺されるようなことはないだろう。
言論の自由度は比較的高いし、社会的に価値の高いものがそれほど絶対視されていないし、繊細な料理は多いし、日本は住むには悪くない国かもしれないと感じる。

ただ、この居心地のよさが、異質な習慣や価値観を持つ人に対する無関心や疎外につながるおそれもある。
自分がなぜ日本人なのかを論理的に考え、外国人とのコミュニケーションに活かせるようにしたい。


もし、在日朝鮮人の人が日本人との飲み会で「私は在日朝鮮人だといわれています」と言うと、「え? 在日朝鮮人ではないんですか?」と聞き返されるかもしれない。その時、「在日朝鮮人って、何ですか?」と言うと同席の人は沈黙してしまうだろう。
「国籍が共和国で日本に住んでたら在日朝鮮人と法的に規定されるのでは。日本国籍を持っていても朝鮮のルーツに親近感が強いのであれば在日朝鮮人とか朝鮮系を名乗ってもいいだろうし。あなたは在日朝鮮人について法的定義を聞いてるの? あるいは民族学的定義? どういう定義を求めてるの? あなただってわかってないんでしょ。だったら自分で調べなさいよ」などと言う人もまれにいるかもしれない。

「このスマートフォンは日本製と言われています」
「このリンゴは日本産と言われています」
などという紹介も聞く人を不安にさせる。

「日本製じゃないの?」
「日本製って、何なのですか?」
「・・・・・・」
というやりとりは不毛だ。

周りを当惑させないために、何かを紹介するときは
「日本人です。まったく日本人て何なのだろうと思ってますけどね」とか
「日本製です。部品はどこで作られたかわかりませんけどね」とか
「日本産です。でも農薬散布量は中国と変わりません」とか
「東京出身です。島嶼部ですけどね」とか
説明を加えたほうがいいのではないだろうか。
そうしないと、原尻英樹教授の周囲の人は困惑するばかりだ。

そんなことをふと思った。


<参考>『「在日」としてのコリアン』(原尻英樹、講談社現代新書、1998年)
p105
「朝鮮人の方です」などと傍らで言われれば、「私は『日本人』の方です」と答えたくなるのが人情だが、筆者は「私は日本人だといわれています」ということにしている。たいていの場合、「日本人じゃないんですか」などと聞き返されるが、そういった時には「日本人って、何ですか?」と聞き返す。次の返答は決まって、「・・・・・・・・・・・・」である。日本人とは日本人とは何か考えていない人々である、といえるのではなかろうか。そのくせ、「日本人のルーツ」や「外国人による日本人論」には並々ならぬ関心が持たれる。つまり、「日本人である」という自明性はカッコに入れて、あるいは「日本人」は昔から現在にいたるまで連綿と「日本人」であり続けたことにして、そのルーツに関心を持ったり、自明な「日本人」について外国人がどのようにみているかに関心を持っているのである。筆者の場合は、そのような自明性に別れを告げ、自分が育った郷里(福岡県の大牟田市)での言語や生活には愛着を持ちつつ(この場合は「日本人」とはまったく別次元の郷里人)、各々の人々とそれぞれ付き合いやすい方法(言語、習慣等)で付き合っているだけである。その際、「日本人」であるとか、ないとかなどはほとんど意味をなさない。

<参考>原尻英樹教授の手法は文化人類学的か
http://blog.goo.ne.jp/ambiguousworld/e/2910aa24d9870f06126e6abd398e4ed7

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