波打ち際の考察

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波屋山人

益子にお出かけ

2010-12-24 22:13:02 | Weblog
昨日は冬至だったので、柚子入りのお風呂に入った。
小ぶりの柚子から懐かしい香りが湯気の中に広がる。
実家の裏の畑には大きな柚子の木があり、冬になると大量の柚子がお風呂に投入された。
子どもの頃は、柚子や山椒や紫蘇や青竹や青草や木材やおがくずや草や土などの香りに囲まれていた。
水草も草原も日だまりも香らない東京では、ときどき生まれ育った環境の香りを懐かしく思う。

先週末に訪れた栃木県の益子は、センスの良い雑貨や小物やレストランが多く、芸術が生活に根付いた魅力的な町のように見えた。
山や田んぼも多く、静かな空間が広がっている。
下北沢の人気カフェ「農民カフェ」が益子に広大な土地を求めてオーガニックな野菜を作っているのもわかる気がする。

電車を乗り継いで益子駅から町の中心部に歩いていく途中、箱田侑子さんという手織り作家さんの工房に立ち寄った。
さまざまな色の綿を糸にして布地やマフラーやコースターを織ることを興味深くうかがったあと、帰り際にふと玄関脇の籠の中の柚子に目を向けると、いくつか譲っていただいた。
箱田さんは60歳を超えてらっしゃるそうだけど初々しく、お若く、織りの正確さと繊細さを見るだけでとても丁寧で実直な仕事をされる方なのだろうと感じる。
いつか箱田さんの布地を購入して上質なシャツにでも仕立ててみたい。

益子に行ったのは初めてだった。
陶芸作家が多く住んでいることで知られるこの町の名は知っていたけど、訪れたことはなかった。
土曜日10時すぎの電車に乗って東京から益子へ。13時前にようやく到着。
宿まで2~3キロの道のりを歩いていると次々に興味深いショップが目に入り、彼女は次々に立ち寄っていた。
宿泊する宿「益古時計」に到着した時には3時になっていた。

チェックインしてからすぐスターネットという店に足を運び、手作りの服や食器や台所用品を眺めた。
野菜やハーブなども買いたいものがあったけどがまん。
山の食堂で軽く食事したけど、陶知庵という店で夕食も食べた。
千円のセットはオーガニックな印象だけど小さくまとまってなくて盛りだくさん。
体にいいものばかり食べている印象。

宿に戻って内風呂で一息。広い風呂は熱すぎず、ゆっくり体を温めることができる。

日曜日は7時半に起きて朝風呂。屋外にある露天風呂はさすがに寒い。
10時にチェックアウトしてタクシーでもえぎ本店に向かう。
タクシーが来るまで益古時計併設のギャラリーで各作家の作品を鑑賞。

もえぎ本店は山の中。
彼女は昨日のもえぎ城内坂店でも大山文女さんなどの作品を購入していたけどここでも山野辺綾さんや長谷川風子さんの作品を購入。
山野辺彩さんの作品は軽やかな彩色と繊細で落ち着いた表情が印象的。
陶器に対しての評価については、ぼくと彼女の意見は近い。
彼女が購入しようとする作品はぼくから見ても芸術的価値が高いものが多い。

それにしても、すばらしい陶器が数千円で、しかも飾らない日常生活で使うための食器として売られていることに感動する。
何十年か後には芸術品として1点数万円以上で売り買いされそうな皿やお椀が、数千円なのだ。
益子の新進作家の芸術性の高い作品を購入することはお得な買い物だ。

陶芸家濱田庄司の開設した益子参考館を見学してから午後は益子の隣駅、北山に移動。
しばらく歩いてチイカフェという店に行った。
アジアンテイストだけど、タイやベトナムの一般的な料理を洗練させてオーガニックにした印象。くせがないけど味はしっかりとしており、食べやすくておいしい。

カフェに流れている曲が気になった。
目立たない静かな曲なのだが、ずっと聴いているとその音の扱い方や発声に非常に高度なものを感じるのだ。
弾き語りに近いけど、フォークにありがちなありふれたコード進行ではない。独創性とすぐれたバランス構成力を感じる。
店の人に聞くと、店内で作品を展示している陶芸作家の田村一さんが持ち込んだCDだという。
田村さんによると、CDは七尾旅人の『ひきがたり・ものがたりvol. 1 蜂雀(ハミングバード)』。
これはすごい。
ぼくも彼女も七尾旅人の名前は知っていたけど名前から友部正人を連想したりして聴いていなかった。
いいアルバムを知ることができた。

チイカフェの周辺のショップもいくつか見た後、薄暗くなってきた中10分くらい歩いて外池酒造(とのいけしゅぞう)にも足をのばした。
日本酒を応援する者としては蔵元の様子をチェックしておきたい。
無料で何種類ものお酒を試飲させてくれるのは親切。
食中酒としてわるくないお酒が多い印象。ろ過しすぎず、うまみもしっかり残っている。
にごり酒がさわやかで飲みやすい。日本酒と柚子で作った柚子リキュールはいくらでも飲めそうな爽快さ。
結局にごり酒の一升瓶だけを購入した。1900円という安さ。
生きた酒だから、少しずつ発酵の変化も楽しんで味わって行きたい。

電車を乗り継いで夜中東京に帰宅。
益子には定期的に訪れたいと思う。
今まで足をのばしていなかったことが悔やまれる。

コメント (1)
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